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第11戦 ハンガリーGP

ハンガリーGPプレビュー

Honda Racing F1 Teamは今週末、第11戦ハンガリーGPを戦うべく、同国ブダペストへと向かう。70周でのレースが展開され、曲がりくねったコーナーの連続する一周4.381kmのハンガロリンクは、難易度の高さ、体力的な厳しさで、全GP中屈指のコースである。

ここでは1986年以来、GPが開催されている。20万人の観衆が詰めかけた第1回ハンガリーGPでは、ウィリアムズ Hondaを駆るネルソン・ピケが勝利を飾った。以来、HondaはこのGPを、6回制している。最近の勝利は2006年のジェンソン・バトンによるもので、同GPの20年以上もの歴史において、唯一のウエットレースだった。またルーベンス・バリチェロもフェラーリ時代の2002年、ここで優勝している。

チームは前週、スペイン・ヘレスでの4日間のテストで、空力や足回りなどの新たなアップデート、そして2009年導入のブリヂストン製スリックタイヤの評価などを行い、大きな手応えを得ている。

テクニカル・チャレンジ

ハンガロリンクでは、コースの路面温度がマシンセットアップに大きな影響を及ぼす。2006年がそうであったが、もし比較的涼しい場合はアンダーステア傾向になりやすい。逆に暑ければ、オーバーステアになる。この22年の歴史を見ると、圧倒的に暑いコンディションが多かった。そのため、エンジニアは例年、オーバーステアを予想してサーキット入りする。70周のレース中、いかにリアタイヤの性能低下を防ぐかに重点を置く。

また、気温が30℃を超えた場合、直線が短く平均速度が低いという特性上、冷却にも問題が出てくる。とはいえ、前週のヘレスも類似したコースレイアウト、そしてかなりの酷暑の下で行われており、レース本番に向けての有益なデータが収集できた。

コース中盤のターン4からターン11にかけては、マシン性能を最も把握できる区間である。低速コーナーの組み合わせに始まり、終盤にさしかかる非常に高速な右コーナーに抜けるあたりまでで、最適なマシンバランスを得ることは至難といえる。ここを速く走れるマシンは、序盤、終盤区間も問題なく仕上がっているはずだ。

 フルスロットル:56%
 ブレーキ:高
 ダウンフォースレベル:高、9/10
 タイヤ:スーパーソフト/ソフト
 タイヤの使い方:ミディアム
 平均速度::197km/h

チームトーク

ロス・ブロウン|Honda Racing F1 Team チームプリンシパル

―先週のヘレステストでは、予定した目標を達成できたか?
「今季の新パーツから来季用マシンの開発を見据えたテストまで、かなり盛りだくさんのプログラムだったが、チームは4日間の日程を非常に効率よくこなすことができた。空力パッケージとしては、今回がイギリスGP前から行ったアップデートの最終段階だった。そしてそれ以外にも、新しいサスペンションやブレーキ、エンジンの改良、2009年用スリックタイヤの評価などを行った。実に暑いコンディションだったにもかかわらず、テストはきわめて順調で、ほぼすべてのメニューを消化でき、満足できるテストになった。今回収集したデータは、今季終盤のレースに向けて、そして来季用マシンの開発の方向性という点でも、有益な結果をもたらすはずだ」

―ハンガロリンクは、難しいコースという定評があるが?
「ハンガロリンクは低速コース、かつ高いダウンフォースが求められるという点で、モナコに似ている。レイアウトやコーナリング速度は、同じとはいえないが。さらに、ここは数少ない例外を除けば、毎年非常に暑いレースとなる。それに加えて平均速度が時速197kmと低いため、エンジンやブレーキの冷却も厄介だ。ブリヂストンはここで、最も柔らかいコンパウンドのスーパーソフトを投入する。グレーニング(めくれ摩耗)と加熱を防ぐためにも、レース中のバランスの維持が重要だ。路面のグリップは、走るたびによくなっていく。レース中でさえ、その状態は続くほどだ。そのあたりの挙動、コンディション変化を見据えたセットアップをすることが、ここでのカギとなるだろう」

ジェンソン・バトン

―ハンガロリンクで、初優勝を遂げたが、今年もここに戻ってきたことに、喜びを感じているか?
「僕のF1初優勝の地だけに、ここは永遠に特別な場所だ。もちろん今年も、再び優勝にチャレンジできるように、パフォーマンスを発揮できることを期待したい。先週のヘレスで試した新パーツは、若干の進化が確認できた。今週末のレースで、僕らが中団グループのどのあたりで戦えるか、それを実際に見るのが楽しみだ。ハンガロリンクのコース自体も、低速と高速コーナーがうまく配分されていて、いいリズムを保って走ることができる。しかし1周する間、一瞬も気を抜くことができない。ステアリングは、ずっと強く握りっぱなしだ。ブダペストの町自体も、大好きだ。GP開催都市の中で、最もワクワクする場所の1つだ。開催中の週末は、街もサーキットもものすごく盛り上がる。すばらしい雰囲気だ」

ルーベンス・バリチェロ

―ハンガロリンクの特徴と難しさは?
「このコースは曲がりくねっていて、バンピーな路面の低速コーナーが連続するから、体力的にすごくキツイ。オーバーテイクはほとんど不可能だから、できるだけ前のグリッドからレースをスタートすることが必要だ。予選の重要性は、通常のグランプリよりはるかに大きいだろう。ここ数年は特に暑いレースが続いているし、ドライバーには本当に過酷だ。70周を集中してちゃんと走りきろうと思ったら、事前の入念なトレーニングが必要だ。先週のヘレステストはまさにそういうコンディションだったし、ドライバーにもマシンにもいい予行演習になった。僕は2002年にここで勝っているし、それ以降も何度か表彰台にも上がってる。だから今年もブダペストに行くのが、本当に楽しみだ」

アレックス・ブルツのコースガイド

ハンガリーGPは、すごく楽しい。ブダペストの町並みは美しいし、ハンガロリンクも実に攻めがいのあるコースだ。まともなストレートはないに等しいが、各コーナーは密接に関連し合っている。だから、どれか1つでミスしたら、3つあとのコーナーでもタイムロスの影響を被るような、そんな感じなんだ。

コースは路面にラバーが載るにつれ、グリップがどんどんついてくる。初日のフリー走行と比較したら、レース中のラップタイムは5秒は速くなっている。そこへあの暑さが加わるんだから、ドライバーには本当に過酷だ。それから、周回ごとにグリップが変わるために、マシンセットアップは本当に難しい。

時速290kmでターン1に到達し、進入で2速に落とす。立ち上がりで加速するが、すぐにターン2が迫ってくる。この長い左コーナーはギアレシオによるが、2速か3速で抜けていく。進入の路面がちょっとバンピーだから、ロックさせないよう気をつけないといけない。そして立ち上がりは、最大限のトラクションを発揮するように。次のターン3は全開でクリアして、できるだけスピードを乗せて短い直線を駆け抜けていく。

左のターン4は、5速の高速コーナーだ。なのに進入はブラインドで、立ち上がりはすごく狭くなっている。すごくミスを犯しやすいポイントだ。でもリズミカルな走りができていれば、ここでスピードに乗って、タイムを稼げる。普通高速コーナーでは、大幅なタイムアップは期待できないものだけれど、ここではそれが可能だ。マシンとドライバーが、一体になっていればね。

ターン5は、個人的には大好きなコーナーだ。ここではまるで、ゴーカートのような攻め方ができるから。ブレーキを踏み、クルマを放り投げる感じでコーナーに飛び込んでいく。四輪をドリフトさせながら、バンピーな路面に必死で逆らいながら、駆け抜けていくんだ。次はターン6と7のシケイン。右手の縁石には、ぶつかるように乗る。でも左側には、触れちゃダメだ。立ち上がりのときに、後輪が不安定になるから。

短い直線のあとに、ターン8と9が控えている。もしマシン前部が安定していれば、4速左コーナーのターン8でかなりタイムを稼ぐことができる。立ち上がりでは、左側のラインを外れないようにする。そうすればそのまま理想的な形で、ターン9に突っ込める。ここはすごく滑りやすい右コーナーだ。もし進入でスロットルを戻すのが早すぎると、突然のオーバーステア状態に陥る。逆に戻し方が優し過ぎると、ひどいアンダーになる。罠にはまりやすいコーナーだ。

ターン10は全開の左コーナーで、すぐにターン11に突っ込んでいく。6速でこの高速右コーナーに達したら、5速にシフトダウン。フロントタイヤがしっかり路面をつかんでくれることを祈りながら、思いきって右にステアリングをきる。ここから丘を駆け下り、フルブレーキングで2速にシフトダウン。右のターン12に達する。立ち上がりの縁石に乗ると、タイムロスしてしまう。

最終コーナー1つ前のターン13は、進入がすごくバンピーだ。同時にブレーキングは、遅れ気味になることもある。3速で進入し、クリップから全開。マシンのリアは、スロットル操作でコントロールする。短い加速のあと、最終コーナーに突入する。ここもやはり進入がバンピー、そしてすごく滑る。ところがコーナーの真ん中でアスファルト舗装が突然変わって、グリップが増す。その瞬間に、スロットル全開だ。この時点では立ち上がりは完全にブラインドだけれど、すぐに見えてくる。そしてスタート・フィニッシュラインを、通過していくんだ。

ハンガリーにおけるHonda

・Hondaの現地法人Honda Hungaryは1994年以来、主に二輪、四輪ビジネスを展開。
・国内には、31の四輪販売網に加え、29の二輪ディーラーがある。
・ハンガリーでは、2007年に4900台の四輪車を販売。全体市場が前年比6%縮小の中、Hondaの販売は18%増加。一方、二輪車は、2007年に2903台を販売した。
・また、二輪車の安全運転普及を目的としたスクールをスタート、1500名の受講生を見込んでいる。