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第10戦 ドイツGP

ドイツGPプレビュー

Honda Racing F1 Teamは今週末、第10戦ドイツGPを戦うべく、ホッケンハイムへと向かう。一周4.574kmのこのサーキットは、フランクフルトとシュトゥットガルトの中間、ライン川近くにある。ここでグランプリが開かれるのは、2年ぶりのこととなる。

このコース自体は1939年から存在するが、レースが行われるようになったのは1964年からに過ぎない。鈴鹿サーキットを設計したオランダ人ジョン・フーゲンホルツが、全長6.8kmのレイアウト変更をしてからのことだ。このコースは2001年まで使用され、平均時速は242kmを超えた。そしてここは、2000年にルーベンス・バリチェロが初優勝を遂げた地でもある。

2002年にはヘルマン・ティルケによって、大幅なコース変更が行われた。全長は2km以上短く、よりテクニカルなレイアウトになり、安全性も大きく向上した。長い直線と低速区間の組み合わせは、チームとドライバーにとっては大きなチャレンジとなる。またレースは例年、荒れた展開になることが多い。

テクニカル・チャレンジ

新コースの攻め方は、旧コースとはまったく異なる。かつては森の中をエンジン全開で駆け抜けていたが、今は超近代的なスタジアムの中を走る。ただしコースの高低差やダブルエイペックスの名物コーナーなどは、改修後もしっかり残されている。

マシンセットアップはこの低速区間と長い直線の高速区間を、高いレベルで両立させることがポイントとなる。チームは先週に行った3日間のテストで、メカニカルグリップの向上、そして最高速をできるだけ殺さないダウンフォースセッティングに、注力した。

さらにここでは高速からのフルブレーキングが何度も行われるため、その際の挙動の安定が重要となる。特にターン6のヘアピンは、時速310kmから時速60kmまで急減速する。ここはF1全18戦の中でも最も遅いコーナーの1つで、ホッケンハイムリンクでの大きな抜きどころでもある。

高速コーナー自体は、2つしかない。したがってタイヤの摩耗は、レース中それほど大きな要素とはならない。ただし7月のこの時期は、ときとして路面温度がかなり高くなる。それがグリップに与える影響は、無視できない。

 フルスロットル : 65%
 ブレーキ:ミディアム
 ダウンフォースレベル : ミディアム、7/10
 タイヤ:ハード/ミディアム
 タイヤの使い方 : ミディアム
 平均速度 : 215km/h

チームトーク

ロス・ブロウン|Honda Racing F1 Team チームプリンシパル

―2週間前のイギリスGPでバリチェロが3位表彰台を獲得し、チームにとって、大きな励みとなったのでは?
「雨のレースとなったために、ドライバーの豊富な経験、そしてチーム力にふさわしい結果がもたらされた。我々にとっては大きなチャンスだった不順な天候を、チームは見事に生かしてくれた。そしてルーベンスのすばらしいドライビングと、彼のタイヤに関する技術フィードバックが、大きな手助けともなった。今季初表彰台は、もちろんチーム全員にとってこの上ない喜びだ。しかしこれがドライ路面でも繰り返されるかどうかは、我々にとって現実的とはいえない」

―ドイツGPでは、どんな戦いが期待できそうか?
「ホッケンハイムリンクでのテストをふまえ、次の段階の空力、メカニカル、そしてエンジンの新パッケージを導入する予定だ。今回のテストでは特に、ここ数戦の予選での不振の原因が何だったのか、より理解を深めることができた。レースで好成績を残すべく、予選でいいポジションを狙いたい。この週末は、今までより上位のグリッドが獲得できると期待している。その上、この週末は天候も変わりやすいと予想されるため、面白い週末になりそうだ」

ジェンソン・バトン

―ドイツGPに期待することは?
「いつもと同じように、マシンから最高の性能を引き出す。それが、いい結果につながれば最高だ。でも中団勢の戦いは、信じられないほど拮抗している。だから事前の予想なんて、ほとんど不可能だ。とはいえテストではいい手応えを得られたし、それがレース本番の走りにどうつながるか、今から楽しみだ」

―ホッケンハイムリンクについては、どんな印象を持っているか?
「ここでのレースはいつも楽しいし、04、05年と連続して表彰台に上がったことをはじめ、すばらしい思い出もたくさんある。ここはいくつか抜きどころがあるし、息をのむバトルも繰り広げられる。グランドスタンドを埋める観衆にとって、きっと忘れられないレースになるはずだ。もし気温や湿度が高ければ、レースは非常に過酷なものになるだろう。さらに低中速コーナーの繰り返しは、タイヤへの負担もかなり大きくなるだろう」

ルーベンス・バリチェロ

―シルバーストーンの表彰台に続き、ホッケンハイムリンクではどこまで戦えそうか?
「イギリスGPの翌朝、目覚めたときに改めてトロフィを眺めたときは、最高の気分だった。表彰台は確かに予想外だったけれど、チーム一丸となってレースに注力したことに対する、当然のご褒美だと思う。この結果を得られたことは、何よりもチームのためにうれしい。しかし一方で、RA108の性能向上については、目を離せない。そしてシルバーストーンの結果が、ウエット路面に助けられたということは、十分に自覚している。テストでは若干の性能向上も確認できたし、それが中団グループでの戦いにどう影響するか。この週末が、待ち遠しい」

―現在のコースは、初優勝を遂げた旧コースに比べて、難易度の点でどう思うか?
「2000年のドイツGPが、僕のF1初勝利だった。だからここは僕にとって、いつまでも特別なサーキットだ。レイアウトが変わり、僕が楽しんできたサーキットとは違うものになってしまった。でもここは依然として、すばらしいコースだ。高速からのフルブレーキング、そのあとには追い抜きのチャンスもある。変わりやすい天候が加われば、さらに面白いレースになるだろう」

アレックス・ブルツのコースガイド

ホッケンハイムで最も印象深いのは、やはり終盤のスタジアム区間だ。あの巨大なグランドスタンドが、ほかにはない雰囲気を醸し出すからだ。何万もの観衆が上げる歓声、立てる音が大反響する。ドライバーズパレードでそれを聞くのは、すばらしい体験だった。サーキット自体は、02年の大改修以来、まったく別のものになってしまった。でも依然として攻めがいのあるコースなのは、間違いない。

1コーナーに達したときは、6速、時速270km以上まで速度に乗っている。かなり短い区間で減速し、ギアを1つ落としながらエイペックスへと切り込んでいく。しっかりターンインできないと、出口で大きくふくらんでしまう。そうするとその先の直線で、かなりのタイムロスを喫することになる。

ターン2は、奇妙なコーナーだ。ブレーキングで滑りやすいし、路面がデコボコだ。早めにブレーキを踏めば、立ち上がりの加速も早めにできる。このあとにここで一番長い直線が控えているから、これは絶対に必要な措置だ。加速の際、まだステアリングはまっすぐになってない。だから身体には、かなりの横Gを感じる。ホイールスピンし過ぎないよう、急激なアクセルオンは禁物だ。

直線では、時速310kmに達する。そしてヘアピン手前で、フルブレーキング。ここは1速、時速60kmまで落とす。そしてここが一番の、抜きどころでもある。ランオフエリアは十分に広いから、必要なら思いきった抜き方をしても大丈夫だ。そこからターン7までの短い直線でも、6速までギアを上げる。だから立ち上がりのトラクションは、とても重要になる。ターン7は、簡単に全開でいける。時速280kmまで加速して、ターン8、9に到達する。

この2つの左コーナーを攻めているとき、マシンはかなり滑っている。だからエイペックスではミスしやすい。ターン10に向かって加速し、立ち上がりでは5速までシフトアップ。そしてスタジアム区間にたどり着く。

ターン12は、このコースで最も難易度の高いコーナーだ。進入速度は約270km。バンピーだし、出口に向かって狭くなっている。だからライン取りには、細心の注意が必要になる。タイムを稼ぐには、出口で縁石に乗った方がいい。しかし誤って縁石をはみ出すと、その先は滑りやすく、大きくタイムロスしてしまう。

2速の左13コーナーはバンクがついてるから、かなりの速度でもエイペックスを逃さない。ただしバンクは出口付近でなくなるから、オーバーステアへの準備を怠らないことだ。ターン14、15は、左、右とリズミカルに抜けていく。そして終盤の、2つの右コーナー。ここはむしろ、エイペックスが2つある単一コーナーと考えた方がいい。コーナーに沿って、ステアリングを戻しながら、最終コーナーの立ち上がりでは、十分にスピードに乗せて、フィニッシュラインを通過するんだ。

ドイツにおけるHonda

・Hondaは1961年に、ドイツでの活動を開始し、日本メーカーでは、ヨーロッパ初となるインポーターでもあった。今では、Hondaのヨーロッパでのビジネスにおける中心的な市場に成長している。
・Honda R&D Europeはオッフェンバッハにある。
・イギリスに次いで、ヨーロッパで最も多くの四輪車を販売。2007年の販売台数は、4万2000台を超える。イギリスと同様に最も人気があるモデルはシビックで、1万4000台を販売。シビックハイブリッドは、ドイツにおいて最もリーズナブルなモデルとされ、07年の販売台数は、前年比68%アップを記録した。