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第9戦 イギリスGP

イギリスGPプレビュー

第9戦イギリスGPは、Honda Racing F1 Teamが拠点とするブラックリーからわずか10kmほどのシルバーストーン・サーキットで、今週末に開催される。全長5.141kmの同コースは、全18戦中、最も高速かつ知名度の高いサーキットの1つ。ドライバー、エンジニア、そしてファンたちにも、長く愛されてきた。

1950年5月にF1世界選手権の開幕戦が行われたのも、ここであった。そしてその2年前には、ノンタイトルレースも開催されている。今年はその60周年を祝うイベントも開かれることになっている。第二次大戦中は飛行場だった同サーキットは、当初は滑走路わきの道路がコースとして使われた。そしてその後、数々の改修工事、レイアウト変更を経て、今日に至っている。現在使われているコースは、1994年6月以来のもの。アビー・シケインは、イモラでの事故を受けて、改修された。

Hondaのレースドライバー、ジェンソン・バトンとルーベンス・バリチェロは、ジュニアフォーミュラ時代からここで数多くのレースを戦ってきた。F1でも毎年のように好成績を挙げ、特に2003年にキミ・ライコネンとのバトルを制したバリチェロの勝利は、これまで9回の優勝の中でも、ベストレースといえるものだ。

テクニカル・チャレンジ

シルバーストーン・サーキットは全般的には、非常に高速である。周回の序盤からいきなり高速コーナーが連続し、ドライバーには思いきってスロットルを踏んでいける自信が必要だ。そのため彼らはコプスやベケッツ、ストウコーナーなどに合わせたセットアップをしがちだ。

しかし、ほかの多くのサーキット同様、ラップタイムを稼いだりロスするのは、実は低速コーナーなのである。そこでエンジニアとしては、クラブやアビーシケイン、そして最終区間の複合コーナーなどでトラクションが最大限に発揮されるよう、注意を払う必要がある。そう考えると、マニクールよりやや大きめのダウンフォースを付けるのが、ここでは妥当だろう。

いくつかのコーナーでは、トラクションコントロールなしのマシンに対して、ドライバーが戸惑うこともありそうだ。特にクラブの立ち上がりでは、2速から5速への加速を、横向きの荷重を受けながら行わなければならない。さらに終盤の複合区間の入り口、プライオリーとブルックランズの連続した左コーナーでの走行も、重要なカギとなるだろう。

路面舗装は非常にスムーズだが、途中何カ所かバンピーなところもある。特にヴェイルのブレーキング地点は、凹凸がひどい。そのため、初日などは、安定した状態で減速できるベストなポイントを見つけるまでに、ドライバーはスピンしてしまうかもしれない。

 フルスロットル:62%
 ブレーキ:軽
 ダウンフォースレベル:高、8/10
 タイヤ:ミディアム/ハード
 タイヤの使い方:ミディアム
 平均速度:230km/h

チームトーク

ロス・ブロウン|Honda Racing F1 Team チームプリンシパル

―イギリスGPでは、どの程度のパフォーマンスが発揮できそうか?
「我々にとって今週末のレースは、非常に重要なものだ。特にシルバーストーンは、本拠地ブラックリーのすぐ近くにあるから。基本的には前戦フランスGPよりも、戦闘力の向上は期待できる。今回は車体、空力、エンジンに改良を施しており、中団グループの直接のライバルたちと互角に戦えるはずだ。2人のドライバーもこのコースが大好きで、週末のレースに大きな期待を持っている。ルーベンスはこれまでここで、すばらしい走りを披露してきた。そしてジェンソンも自国GPでの活躍を期して、やる気満々だ」

―先週のテストではさまざまな新パーツを試したが、これらはGP本番に投入されるのか?
「シルバーストーン・テストは、非常にうまくいった。先週テストしたものは、すべて期待した通りの性能を発揮してくれた。今はファクトリーにそのデータを持ち帰り、性能や信頼性評価を行っているところだ。その結果を受けて、イギリスGPに投入する最終パッケージを決めることになっている。今回のテストではマシンセットアップと、2種類のブリヂストンタイヤの評価が十分にできた。そのおかげでGP本番では、初日からパフォーマンスを向上させる作業に専念できるだろう」

ジェンソン・バトン

―母国GPに期待するところは?
「言うまでもなくイギリスGPは僕にとって、すごく特別なレースだ。自国のファンたちの前で走るのは、いつもワクワクする。ポジションやマシン性能が今ひとつのときでも、彼らはいつも温かい声援を送ってくれてきた。大観衆で埋まったグランドスタンドの雰囲気は、本当に特別。シルバーストーンは大好きなコースで、特に気に入っているのがベケッツの前後だ。瞬時に方向を変えながらコーナーを駆け抜けていく、あの気持ちよさ。GPサーキットの中で最もすばらしいコーナーの1つだし、観戦ポイントとしても絶対におすすめだ」

ルーベンス・バリチェロ

―2003年に優勝したイギリスGPは、本当にすばらしいレースだったが、ここを速く走るために、重要なことは?
「僕はずっと前からここで、数えきれないほどのテストとレースを重ねてきた。だからこのサーキットは、僕にとってほとんどホームコースといっていいくらいだ。それに2003年を筆頭に、すばらしい思い出が詰まっている。シルバーストーンで速く走るには、何よりも空力性能に優れたマシンが必要だ。ここはF1に残された、数少ない高速コースだから。特にベケッツの進入は、時速290kmで突っ込んでいく。ここで一番速いコーナーだよ。そこからの複合区間も、すごく難易度が高いしね。追い抜きも可能だ。低速のヴェイルとアビーが、一番可能性が高いかな。でも、ほかでもチャンスはあるし、何しろ超高速バトルになるから、すごく見ごたえがある。僕らにとってはホームGPの1つだから、期待は大きい。テスト直後のレースでもあるから、いいレースが見せられそうだ」

アレックス・ブルツのコースガイド

イギリス人と結婚した僕は、もはや一部はイギリス人と言っていいかもしれない。だからシルバーストーンは自国GPみたいなものだし、他の国が何と言おうと、イギリスはやっぱりモータースポーツ発祥の地だと思う。

シルバーストーンは特に前半の高速区間が、すばらしいね。ターン1には、7速全開で到達する。そしてそのまま、踏みっぱなし、少しもブレーキに触れることなく駆け抜けていく。ここはたとえばスパのオールージュと比べても、とてつもなく攻めがいのあるコーナーだ。

次のベケッツも、すごい。進入はバンピーで、最初の右コーナーに向けて、非常に正確にマシン位置を決める必要がある。ここまでは、ずっと全開だ。そして左へと素早い方向転換。依然として、ブレーキは踏まない。ギアをひとつ落とし、四輪をドリフトさせることでやや減速する。最高に面白い。次の右コーナーで、さらにもう1速落とす。でも、ブレーキは踏まない。ここはアンダーステアになりやすいけれど、スロットルを踏みっぱなしにしたまま立ち上がって、ハンガーストレートに向かう。

ストウの進入で初めて、ブレーキを踏む。それまで使っていないから、ブレーキが冷えきっていることを忘れないように。当然ディスクの感触が、いつもとは違ってる。減速と同時に、コーナーに突っ込む。ここでブレーキを遅らせて誰かを抜くのは、相当難しいだろうね。進入では、オーバーステアにもなりやすい。

短いストレートを抜けて、クラブに到達する。初めてのフルブレーキングだ。左コーナーへの進入では縁石に強くぶつかるように乗って、続けて右に方向転換する。進入時に2速に落とし、立ち上がりでは5速まで上げる。トラクションコントロールのない今季は、特に厳しいコーナーになるね。

次のアビーでのブレーキングは、いつもながら非常に滑りやすい。あえてそれに逆らわず、攻め過ぎないこと。出口はバンピーで、去年ならトラクションコントロールを効かせて全開でいけたけれど、今年はそういうわけにはいかない。差の出やすい、面白いコーナーになりそうだ。ブリッジの下りは、6速全開。ここはそんなに、難しくない。でも続くプライオリーへの左は、注意が必要だ。その周はグリップが効いて完ぺきなコーナリングができても、次の周にはがらっとフィーリングが変わってしまったりするからね。

そしてブルックランズ。週末は走るにつれてグリップがよくなっていくから、縁石のカットの仕方もどんどん深くなる。2速の長い左ターンのラフィールドでは、思いきったブレーキングで、ニュートラルな状態で進入する。でも途中から舗装状態が変わっているから、セットアップがどうであれ、コーナリング中はアンダーステアになってしまう。スロットル操作でそれをできるだけ消して、メインストレートに向かって全開で立ち上がっていくんだ。

イギリスにおけるHonda

・イギリスでは昨年10万6018台のHonda車を販売するなど、ヨーロッパでも最も大きなマーケットとなっている。中でもシビック、ジャズ、CR-Vの販売が顕著である。

・スウィンドンにあるHondaの四輪工場では、2007年に23万7783台を生産。スウィンドン工場製シビック累計生産100万台を2007年11月に、またスウィンドン工場累計生産200万台を2008年2月21日にCR-Vで達成した。