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ジェンソン・バトンのイギリスGPプレビュー

第9戦イギリスGPはHonda Racing F1 Teamのジェンソン・バトンにとって、シルバーストーンで戦う9回目のGPレースとなる。これまでで一番の成績は、2004年の4位。それ以外にも3度、入賞圏内で完走している。また2005年には、フロントローからレースをスタートした。

―シルバーストーンでのレースは、期待が大きいと思われるが?
「なんといっても、自国のレースだからね。僕にとってはすごく特別な週末だ。高速で流れるようなコースレイアウトも、大好きだ。幼いころにイギリスGPを観戦していたときを含めて、ここにはすばらしい思い出がたくさん詰まっている」

―地元の声援は、励みになるか?
「ファンのみんなは最高だよ。無数のユニオンジャックがグランドスタンドにひるがえるのを見るのも、たまらない気分だ。でも同時に今の状況を思うと、ストレスを感じることも確かだ。彼らに最高の状態の僕を見てもらいたいのに、それができないからだ。チームのファクトリーは、ここからほんの10kmしか離れていない。だからファクトリーのみんなも、応援に来てくれる。チケットは3日間とも売り切れらしいし、すばらしい雰囲気になるだろう」

―シルバーストーンで好きなコーナーは?
「ベケッツの複合区間は、僕にとって世界一大好きなコーナーだ。7速全開で進入するから、スピード自体もすごい。それに加えて、正確なライン取りが要求される。そしてコーナリング中の瞬時の方向転換は、文字通り心臓が破裂しそうなくらいドキドキする。だからここをうまくクリアできたときは、自分でも満面の笑みが浮かぶのが分かるくらいだ。レースを観るときも、ここは最高の場所だよ」

―イギリスGPで新しいデザインのヘルメットを着用するようだが?
「僕の公式サイトで、シルバーストーンに向けてのヘルメットデザインを公募した。7055通もの応募の中から、イギリス・デンビーシャー州のアリース・ジャンセンスさんのデザインを採用した。木曜日のサーキットで、お披露目するつもりだ。このデザインで好きなのは、すごくイギリスらしくて、そしてすごく僕らしいところだ。僕らしいというのはつまり、イギリスを愛する自分ということ。彼のデザインは、僕のロゴと名前が一体化している。そしてJensonの“o”の中が、ユニオンジャックになっているんだ。すばらしいものを作ってくれて、ありがとう!」

ジェンソン・バトンの2008年シーズン

今季はバトンにとって、9年目のシーズンとなる。これまでウィリアムズ(2000年)、ベネトン(2001-2002年)、B・A・R Honda(2003-2005年)、そしてHonda Racing F1 Team(2006-2008年)でキャリアを重ねてきた。

過去143戦で、優勝1回、2位を4回、3位を10回獲得している。ポールポジションは3回。そしてこれまでのレースで合計124周、トップを走ったことがある。

―現時点で、自分のキャリアの中でどの段階にいるか。
「僕のいるF1カテゴリーは、すべてのレーシングドライバーにとって最終の到達地点だと思う。そしてF1界でキャリアをスタートさせたら、次は、自分がいいチームに所属しているか、タイトル獲得にふさわしい経験を積んでいるかということが重要だ。僕は28歳になり、F1では9シーズン目を迎えた。タイトル獲得に向けて、必要な経験を備えつつある。今は、十分にマシンパフォーマンスを発揮できていないが、必ずそのときが来ると信じている」

―今年のマシンの戦闘力を向上させるために、取り組んでいることは?
「コース上でこのマシンが、どれだけのパフォーマンスを持っているのかを、チームに正確に伝えている。弱い点、強い点、すべてをね。ドライバーズランキング3位だった2004年当時より、今の方がはるかに懸命な作業をしている。それが、上位に返り咲くための、唯一の方法だから。チームに今必要なのは進化することで、それは成し遂げられつつあると思う」

―優勝に絡めないと思うと、モチベーションは下がってしまうか?
「僕は、自分の仕事が大好きだから、モチベーションの問題は全くない。優勝争いができそうもないと分かっていてイギリスGPに臨むのは、もちろん愉快なことじゃない。でもひとたびマシンに乗り込めば、僕はいつでも110%の力を発揮しようとする。それがこれまでずっと、僕のやってきたことだ。このことは、チームを前進させていくため、そして、2009年シーズンを成功させるためにも、必要なことだ」

現在のコンディション

F1マシンのコクピットというのは、あらゆるスポーツの中でも屈指の、過酷な環境といっていいだろう。内部の温度は50℃を超え、減速やコーナリングの際には、体重の5倍もの力がドライバーにかかる。

バトンは肉体、そして精神的な鍛練がもたらすものを、十分に自覚している。それゆえに彼は、現役ドライバー中で最も鍛えられたドライバーの1人という評価を得ている。シーズン開幕前にはいつも、ランザローテ島のラ・サンタ・クラブで何度もトレーニングキャンプを張り、自転車やランニング、水泳、筋力トレーニングを集中的にこなすのである。

今年はさらに、トライアスロンにも新たに挑戦した。初戦のセブンオークス・スプリント・トライアスロンは、400mの水泳、27kmのバイク、8kmのランニングというプログラムで、250人中16位完走を果たしている。さらにウィンザー・トライアスロンでは、オリンピック距離にもチャレンジ。1500mの遠泳、43kmのバイク、10kmのランニングをこなして、1700人中117位という成績を挙げている。

―なぜ、トライアスロンに挑戦したのか?
「苦痛をともないながらも、自分の肉体を限界までプッシュするのが好きだから。それにほかの誰の助けも借りないという点も、好きだね。挑戦するのは、僕1人だけ。もし遅ければ、それはすべて僕自身の責任だ。6月初旬のウィンザー・トライアスロンは、すごく大きなイベントだった。沿道にはたくさんの観客がいて、僕の名前が叫ばれているのがすごく不思議な気がした。というのも普段はヘルメットを被っているから、観客の声は全く聞こえないからね。聞こえるのはただ、エンジンの音だけなんだ」

―3種類の競技のうち、最も得意なのは?
「ウィンザーでは、水泳が一番いい成績だったね。テムズ川を1500m泳いだんだけれど、ゴールしたときには1700人中90位だった。幼いころから水泳には慣れ親しんでいたし、この競技はなによりテクニックがモノをいう。その点が、すごく気に入ってるね。だから僕は何年もかけて、自分のスタイルを確立した。いまだに人からは、水の中でちゃんと進めてないって言われるけどね!」

―トライアスロン参戦は、ドライビングにも好影響を与えてくれそうか?
「一番の好影響は、身体が鍛えられることだね。特に自転車は、乳酸への耐性が高くなる。レース中の激しい振動が、乳酸の形成を促進するんだ。それから水泳は、上半身の鍛練にいい。首も鍛えられる。そしてなにより、F1と同じように、トライアスロンも戦いなんだ。現役ドライバーの中で、僕ほど身体を鍛えているヤツはそういないと思う。この自信はすごくポジティブな気持ちに自分を奮い立たせてくれるんだ」