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第8戦 フランスGP

フランスGPプレビュー

Honda Racing F1 Teamは今週末、第8戦フランスGPを戦うべく、フランス中部マニクールへと向かう。ブルゴーニュ地方の外れ、ロワール川に沿った風光明媚なこの村に、全長4.411kmのマニクール・サーキットがある。

豪しゃなモナコ、都会的なカナダという特徴的な2つのGPを経て、F1サーカスは静かな風景の中で行われる。フランスGPは、世界最古のグランプリの1つである。その歴史は1906年までさかのぼり、1950年に世界選手権が発足してからは、同国内7カ所の異なったサーキットで開催されている。マニクールに舞台が移ったのは、1991年のことだ。

このサーキットで最も多く勝利を収めたドライバーは、1994年から2006年までの13年間に8勝を挙げたミハエル・シューマッハである。ルーベンス・バリチェロはこれまで4度表彰台に上がり、ジェンソン・バトンは2005年の4位入賞が最高位である。

テクニカル・チャレンジ

マニクール・サーキットの路面舗装は、非常に滑らかである。しかし、そのアスファルトの特性は非常に特異なもので、多くの技術的なチャレンジを強いられる。たとえば路面温度がほんの少し上下しただけで、グリップレベルが極端に変わってしまう。そのためエンジニアはわずかな変化を見逃さず、すぐにそれに対応したセットアップをマシンに施す必要がある。

さらに、このサーキットは、トラクション・コントロールが禁止された今年はなおさらだが、トラクション性能の優劣がタイムに及ぼす影響が大きい。それは、ここは1、2速で抜けていくコーナーが5つもあるからだ。ドライビングの難易度が高い2つの高速シケインが、ともすれば注目されがちだ。しかし、技術的な面では、ここはさほど難しくはない。もともと高いダウンフォースが要求されるコース特性のため、コーナー進入もコーナリングの最中も、比較的安定した挙動が得られるからである。

タイムを稼ぐために重要なのは、高速右コーナーのターン3であろう。そこから長いストレートが続くため、安定したバランスでスピードを維持することが重要である。その先のアデレイド・ヘアピンは、ここでもっとも抜けるチャンスの高いコーナーである。まだマシンに横への高い荷重がかかっている間に、早めにスロットルを抑えることがドライバーには求められる。

  フルスロットル:60%
  ブレーキ:低
  ダウンフォースレベル:高、8/10
  タイヤ:ミディアム/ソフト
  タイヤの使い方:低
  平均速度:210km/h

チームトーク

ロス・ブロウン|Honda Racing F1 Team チームプリンシパル

―フランスGPでは、どれほどのパフォーマンスが発揮できそうか?
「今週末のマニクールは、中団グループ内でそこそこ走れそうだ。確かに前戦のカナダGPはルーベンス・バリチェロが一時トップを走り、ポイントも獲得できた。しかし、それはあくまでセーフティカーやライバルたちのリタイアに助けられたからというのは、よくわかっている。そのカナダに比べれば、路面がスムーズで、より高いダウンフォースが要求されるマニクール・サーキットは、RA108により合っているといえるだろう。このマシンの本来の能力にふさわしいパフォーマンスを発揮させて、再びポイントを獲得したい」

―先週のバルセロナ・テストから、多くを得ることができたか?
「次回の大きな空力アップデートは、イギリスGPの予定だ。そのため今回のテストは、RA108のハンドリングやセットアップ評価に集中した。このマシンの能力を、いっそう理解するためだ。モントリオールではブレーキング時や、バンピーな路面を乗り越える際の挙動安定性に問題があることは明らかだった。それを直すために、他の利点をある程度犠牲にせざるをえず、ドライバーにとっては運転しにくいクルマになってしまった。バルセロナ・テストではそのあたりをじっくり対策し、メカニカルなセットアップに進化が見られた。さらにエンジンのドライバビリティも見直した。小さなステップではあるけれど、ラップタイムへの好影響を期待できる」

ジェンソン・バトン

―マニクールではいつも、いいパフォーマンスを発揮しているが、速く走るために、何か秘けつはあるのか?
「あのサーキットは本当にすばらしいし、僕はいつも楽しんできた。非常にスムーズな路面、そして高速シケイン。それがマニクールの特徴だと思う。確かに楽しいサーキットだが、いいタイムを出そうと思ったら、すごく難易度が高い。一番のカギは、マシン前部がきびきび動くようにしておくことだ。ターン1と2では、それがタイムに大きく影響する。アンダーステアがひどいと、特にターン2のタイムロスは深刻だ。高速シケインでは、マシンの安定性と同時に、俊敏な操舵性が求められる。レースで重要なのは、やはりスタートだろう。1コーナーでうまくポジション取りができれば、そこからヘアピンまで優位に立てる。ここはこのコースで、ほとんど唯一といっていい抜き場所だ。チャンスは絶対にモノにしないと」

―ここ3戦、入賞から遠ざかっているが、フランスGPでばん回できそうか?
「カナダで低いダウンフォース設定のRA108は、まったくペースを出すことができなかった。でもマニクールではこれまでいい結果を出せている。レースは荒れた展開になるかもしれないが、カナダよりいい週末になるはずだ」

ルーベンス・バリチェロ

―高速シケインと低速コーナーの混ぜ合わさったマニクールで、RA108はどれだけの速さを発揮できそうか?
「いい走りができそうだと思っている。ここはすごく速いか、低速か、どちらかのコーナーしかない特異なサーキットだ。ターン3は5速で200km/hは出るが、ターン6と11の高速シケインは、さらに速い。一方で他のコーナーは、全部が1速か2速の超低速という具合。路面はスムーズなので、車高はかなり下げられる。バンピーな路面に悩まされている我々には、非常に助かる」

―このサーキットで、特に難しいところは?
「マニクールは流れるように走れるから、ドライバーはみんなここが好きだ。特にターン4から5にかけてと、ターン7から8にかけての高速シケインは、すごく難しいと同時に、ワクワクさせられる。最終シケインは縁石が高いけれど、ここにしっかり乗ればかなりタイムが稼げる。いくつかのコーナーは複合していて、マシンが安定していれば、ブレーキングしながらの進入がたやすくできる。追い抜きは簡単じゃないが、ヘアピンとターン15の進入でチャンスがある」

アレックス・ブルツのコースガイド

マニクールで気に入ってるのは、毎日の仕事が終わってから、急いでサーキットを去る必要がないことだ。だってサーキット以外、周りには何も見るものも、訪問する場所もないからね。だからみんな、のんびりパドックでおしゃべりできる。

このコースの一番の魅力は、やっぱり高速シケインだ。でもマシンセットアップは、すごく難しい。ほんのちょっとした温度変化で、簡単に2秒近く速くなったり、遅くなったりする。急に路面が滑りやすくなることもある。

ここでは、いいリズムを保ってドライブできる。スタートして最初の複合左コーナーは、いきなり全開だ。そこからエストリルと呼ばれる、長い右コーナーに突入していく。コーナーへの進入でリアがすごく不安定になるから、注意が必要だ。コーナリング中はアンダーステア、立ち上がりはオーバーステアが出やすい。それから出口では、前が見えない状態でフルスロットルにしないといけない。

長い直線を全開で走り抜けて、アデレイド・ヘアピンに到達する。ここは風向きによって、ブレーキングポイントが変化する。比較的滑りやすい場所だけど、追い抜けるのはほとんどここだけだからね。1速で入っていって、立ち上がりはトラクションがちゃんと掛かっていることを確認しないといけない。そこから1つ目の高速シケインまでは、全開だからだ。6速でシケインに来たら、わずかにスロットルを緩めながら、ブレーキを軽く踏んでマシンを安定させる。

その先の左のコーナーも、なかなか難易度が高い。走行ラインは何本もあるけど、その時のマシンの調子に任せて、無理にインについたりしないことが重要だ。ブレーキングでは、前輪が簡単にロックする。そしてアンダーかオーバーか、どちらかの挙動に陥りやすい。僕は今まで一度も、ここを完ぺきなマシンバランスでクリアしたことがないんだ。

そこを抜けるとすぐに、もう1つの高速シケインが待っている。ここは最初のよりわずかに遅いけど、ライン取りには細心の注意が必要だ。上り坂になっていて、クリッピングのあたりで先が見えないからね。最適なラインが取れたら、自動的に右側の縁石に乗れるはず。でも数cmでも縁石を外したら、スロットルを戻さざるをえない。これでコンマ3秒はロスするね。

そして1速で抜ける右コーナー。ここは進入と立ち上がりの両方で、結構滑る。そして、最終シケイン前にもう1つの右コーナー。ここは2速で。終盤のシケインの縁石はすごく高いが、ぶつける感じで、突っ込んでいくしかない。そこを立ち上がれば、メインストレートに戻るというわけさ。

フランスにおけるHonda

・Hondaは、1964年にフランスでビジネスを開始。

・2007年のHondaの四輪車登録台数は、毎年堅調に推移し、1万5631台にのぼる。特に、シビックとCR-Vの台数が伸びている。

・1986年創設のHonda Europe Power Equipmentはオルレアン近郊のオルム(マニクールの北200kmに位置)にあり、汎用製品の輸入、生産、販売を行う。