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第7戦 カナダGP

カナダGPプレビュー

Honda Racing F1 Teamは今週、再びヨーロッパを離れカナダへと向かう。モントリオールのジル・ビルヌーブ・サーキット(全長4.361km、全70周)で行われる、第7戦カナダGP。去年まではアメリカGPとの2連戦だったが、今年はこれが北米唯一のグランプリとなる。

サーキットのあるノートルダム島は、1967年に開催された万博の用地として、セント・ローレンス川に作られた人工島である。その後、1976年のオリンピックの際には、ボート競技の舞台にもなった。カナダGPはここで1978年から行われている。

コースは6本の直線をシケインや低速コーナーでつなぐというレイアウト。マシンには、かなり低いダウンフォースが求められる。ターン10のヘアピンから最終シケインまでの直線が最長で1kmほどある。そのためブレーキング直前では、最高速は時速324kmになる。

Hondaがここで初めて勝ったのは1986年。ナイジェル・マンセルによる勝利だった。以来、このGPとHondaのつながりは深く、今年も公式スポンサーを務める。今やGP週末の名物となったクレセントストリートでのフェスティバルを始め、サーキット内外でHonda主催のさまざまなイベントが行われる。

テクニカルチャレンジ

このサーキットには、高速コーナーが1つもない。6本の直線をシケインや低速コーナーでつないだレイアウトのため、セッティングは当然高速重視となる。

ここまで低いダウンフォースのスペックは、今季初めてである。その際に重要となるのは、タイヤとブレーキをいかにいたわるかだ。ここのアスファルト路面は非常にスムーズなため、ブリヂストンは前戦モナコと同じソフトとスーパーソフトの2種類を投入する。しかしモナコよりはるかに速いスピードのために、タイヤはかなりの熱にさらされる。さらにブレーキング時に発生する遠心力によるグレーニング(タイヤのささくれ摩耗)の出やすさも、問題になりそうだ。

ブレーキへの負荷の高さも、全サーキット中、最も厳しい。一周する間に、7速全開から2速へのフルブレーキングを、6回繰り返さなければならない。冷却のためにはブレーキダクトを大きくすることが手っ取り早いが、エンジニアはドラッグ(空気抵抗)が大きくなることを嫌う。またギアボックスの負担も、半端ではない。一周あたりの変速回数は、モナコGPをしのぐ。技術的には全18戦中、最も挑戦しがいのあるグランプリの1つといえるだろう。

 フルスロットル:70%
 ブレーキ:ハード
 ダウンフォースレベル:低、3/10
 タイヤ:ソフト/スーパーソフト
 タイヤの使い方:高
 平均速度:200km/h

チームトーク

ロス・ブロウン|Honda Racing F1 Team チームプリンシパル

―Honda Racing F1 TeamはカナダGPで、どの程度の戦闘力を発揮できそうか?
「前戦モナコGPでのRA108のパフォーマンス、速さは、満足できるものだった。ポイントが獲得できたこともよかったし、何よりルーベンス(バリチェロ)にとっては今季初入賞だった。しかし、今週末のカナダは、モナコとはまったく違う挑戦になる。ダウンフォースは中から下、モナコとは対照的なクルマ作りが求められる。長い直線と低速コーナーの組み合わせは、マシンへの負荷もかなり大きくなる。ここ数戦での進化には、素直に喜んでいる。しかし我々のクルマは依然として、ストレートでの最高速が欠けている。この週末、いかにマシン性能を十分に引き出すかが、カギになるだろう。モナコよりも、厳しいレースになりそうだ」

―低ダウンフォース仕様のために、どのような開発を進めてきたか?
「モナコGP前のポールリカールテストで、最終日にカナダ仕様のRA108を走らせた。残念ながらこの日は悪天候に見舞われ、満足にメニューを消化できなかった。とはいえジェンソン(バトン)の数周のランで、何とか基礎的な空力データの収集はできた。それと過去数年のデータを突き合わせて、この特殊なサーキットのパッケージの準備をした」

ジェンソン・バトン

―カナダGPに期待することは?
「毎年のF1カレンダーの中でも、カナダは特にお気に入りの週末だ。サーキット周辺や町の雰囲気は、いつもすばらしい。サーキット自体も、走っていてすごく楽しい。前戦モナコとは、またがらっと変わる。カナダ用のテストは、悪天候でほとんどまともに走れなかった。だから金曜日に実際に走るまで、RA108がどんなパフォーマンスを発揮するかはわからない」

―2005年には、ポールポジションを獲得しているが、ここを速く走るためのコツは?
「縁石に思いきって乗っていくことが重要で、クルマもそれを無難にこなせるように仕上げないとダメだ。そして狙ったポイントで、正確に縁石に乗る。もしそれに失敗したら、あっという間に壁の餌食になるだろう。ここで一番難しいのは、最終シケインだ。いくらそこまで完ぺきなドライビングで来ていても、最後の縁石で失敗したら、万事休すだ。レースでは、きれいにスタートすることも大事だ。最初の数コーナーは、かなりタイトだから。そこに20台がいっせいになだれ込むから、事故の危険も大きい。でもポジションを上げる、大きなチャンスだ。それ以外では、やはりターン10のヘアピンが、最大の抜きどころになる。ここはいつも、エキサイティングな光景が繰り広げられる」

ルーベンス・バリチェロ

―モナコで今季初ポイントを獲得して、ホッとしたのでは?
「週末を通じてマシンの調子は悪くなかったから、あの結果には満足してる。モナコでいい成績を出すのは、格別だ。これをきっかけに、ぜひ波に乗りたいと思っている。もともとチーム自体には、高い潜在能力がある。だから掲げた目標からブレずに、努力を重ねることが重要だ。今後も最終戦まで、マシンがずっと進化し続けると信じている」

―低ダウンフォース仕様では、マシンの乗り味もかなり変わってしまうのでは?
「超低速のモナコに比べて、全く特性が異なる。カナダでは、シーズンを通じて最もダウンフォースが低い仕様で走る。サーキットの特性に合わせたセットアップを行うために、初日、2日目のフリー走行がすごく貴重なセッションになる」

アレックス・ブルツのコースガイド

モントリオールは、すばらしいGPだね。みんなが行きたがるレースだし、大都市に隣接していて、その雰囲気が抜群というところは、オーストラリアGPにも似ている。僕はここで、1997年にF1デビューを果たした。その意味でもここは忘れられない場所だし、今でもカナダに戻るのは大好きだ。

モナコのあとにいきなりここで走ると、あまりのダウンフォースのなさに奇妙な感じがする。いたるところでマシンは滑るし、最適なバランスを見つけるのがすごく難しいことを、思い知らされる。タイヤのグレーニングも、ここでは厄介な問題だ。

ターン1手前には、6速までギアが上がっている。このサーキットの中では、ここは最もブレーキングを遅らせたくなるコーナーの1つだね。そして左側の縁石も、目一杯使いたい。その上ブレーキングが遅いと、クルマは思いっきり不安定になり、縁石に乗っているときもいい気分とはいえない。ここに続く1速の右コーナーは、初日にはものすごく滑る。でもラバーが載ってくるにつれて、どんどんグリップしていくよ。

ターン3と4は、1つのシケインを形成している。グリップがよくなれば、アグレッシブにそのまますっ飛んでいくことも可能だ。出口では、右側のバリアすれすれまで接近する。そこから左側にマシンをしっかり置いて、緩い右曲がりを全開で行く。

次のシケインは、ブレーキング時のバンプがひどい。でも、できるだけブレーキングを遅らせて、左側の縁石を使う。ここでマシンを、ふらつかせないように。この先は、長いストレートだ。最後に右を抜けながら、全開で立ち上がる必要がある。ブリッジをくぐって、もうひとつのシケイン。ここの進入ポイントは、たった1つしかない。すごくミスしやすいし、実際に毎年、多くのドライバーがまっすぐ行ってしまう。

そしてヘアピンだ。ここは2速か3速。ギアレシオによる。その先に1kmの直線が控えているから、立ち上がりのトラクション性能が非常に重要になる。15秒間の全開区間を経て、最後のシケイン。ここもできるだけ、ブレーキングを遅らせた方がいい。一瞬でミスを犯すので、とにかく注意が必要だ。自分で気付く前に、「チャンピオンの壁」にぶち当たることになる。

抜きどころは、ヘアピンと最後のシケインだ。でもタイヤかすがどんどん蓄積されるから、レース終盤が近づくにつれて、ラインを外して抜くことは難しくなる。

カナダでのHonda

・カナダでは、2007年に17万307台の四輪車を販売し、10.3%のシェアを占める。10年連続で、シビックが乗用車カテゴリーで、国内トップセールスを誇り、モーターサイクル、スクーター、ATVの販売もNo.1となっている。

・カナダは、生産においても、Hondaを支える基幹拠点であり、2007年は39万台以上の四輪車を生産した。カナダでは、2万2000人のHonda従業員が働き、製造、販売、ディーラー業務に携わっている。カナダにある工場では、埋め立て廃棄物の「ゼロ化」の目標を達成した。

・Hondaの環境保全活動の一環として、Hondaがスポンサーを務めたボランティア活動により、120万人に貢献した。そして、従業員とその家族が、7万1000本の木を5年間かけて植えた。

・ジェンソン・バトンとルーベンス・バリチェロは、Hondaがメインスポンサーを務める、モントリオール中心部のクレセントストリートで開催されるフェスティバルに、6月5日(木)12時から参加する予定。

カナダでの「earthdreams」プロジェクト

・チームは、Hondaの現地法人ホンダカナダとともに、6月4日(水)に、チームが推進するearthdreamsプロジェクト活動報告を、プレスに向け発表する予定。

・earthdreamsプロジェクトとホンダカナダは、カナダの環境保全教育慈善団体Clean Air Champions及びそのプログラムと、パートナー契約を結ぶ。Clean Air Championsは、スポーツ界で活躍するアスリートとともに、カナダの人々に対して、自己の健康と環境保全の大切さを促進するための教育活動を行っている。

・ニック・フライとジェンソン・バトンは、ナンシー・ドローレ(女子ホッケーで、6回のワールドチャンピオンを獲得し、オリンピックで銀メダルに輝く)とジェリー・チェンキン(ホンダカナダ副社長)とともに、6月4日(水)11時からのパートナーシップに関する発表会に参加する。