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第5戦 トルコGP

トルコGPプレビュー

Honda Racing F1 Teamは今週末、第5戦トルコGPに挑むべく、同国のイスタンブールへと向かう。舞台となるイスタンブールパーク・サーキットは、全長5.338km。今季の全18戦中、3つしかない反時計回りのコースの1つである。

同サーキットは、地中海と黒海を隔てるボスポラス海峡のアジア側にある。イスタンブール中心部からは約90kmと、やや遠い。高低差の大きい地形が巧みに生かされたコース設計で、GPサーキットの中でも難易度は屈指。ドライバーにとっては、体力的にもかなりきついコースとなっている。

西ヨーロッパから遠く離れたトルコへは、機材の輸送も簡単ではない。スペインGPを終えた直後の水曜日、Hondaの機材はほかのチームのものと一緒にイタリア・トリエステ港で船積みされ、週明けにイスタンブールに到着した。

テクニカルチャレンジ

この反時計回りのサーキットには合計8つの左コーナーがあるが、マシンセッティングへの直接的な影響はない。とはいえ、他のサーキットと同様にいくつかの見せ場があり、中でも特徴的なのはターン8であろう。

この3連の左コーナーでは、実に7秒間、体重の5倍のコーナリングGがかかり続ける。ドライバーの身体に対する負荷の高さでは、世界屈指といっていいだろう。コーナリングスピードは、最低でも時速250km。しかし、このコーナーが技術的な側面で注目されるのは、その速度からではない。このコーナー中程の路面に凹凸があるために、車高を極端に低く設定することができず、他コーナー走行時のハンドリングが犠牲になってしまうからだ。

このサーキットで好タイムを狙うには、優れたマシンバランスが必要である。ハンドリングのよさが問われるヘアピンコーナーが、いくつもあるからである。そして最終区間には、低速の左・右・左の複合コーナーが控え、そこから長いメインストレートへと続く。ここへの進入で、マシンは時速300kmから時速80kmへと急減速する。ここがこのコースで最高のオーバーテイクポイントだ。

 フルスロットル:62%
 ブレーキ:ミディアム
 ダウンフォースレベル:ミディアム、6/10
 タイヤ:ミディアム/ハード
 タイヤの使い方:ミディアム
 平均速度:220km/h

チームトーク

ロス・ブロウン|Honda Racing F1 Team チームプリンシパル

―次戦トルコGPでは、どこまで戦えると思うか?
「イスタンブールパークのようなサーキットは、ドライバーにとっては本当に攻めがいがある。GP前にテストは行われないが、ここの特性に合わせた細かいチューニングを、空力などに施すことになっている。私は、RA108はバルセロナよりイスタンブールでの方が、よりパフォーマンスを発揮できると思っている。バルセロナのバンピーな路面が、ドライバビリティの点で我々を悩ませたためだ。今回は予選でトップ10に入り、2戦連続のポイント獲得を狙っている」

―バルセロナでのバトンの6位入賞は、チームにとってどれほど重要なことだったか?
「何といっても、今季初ポイント。ここ数カ月のみんなの努力が、ようやく報われたという感じだった。あのレースでは新しい空力パッケージとレース戦略、特にピットストップが完ぺきにうまくいったことにより、好結果を残せたことをはじめ、多くの成果が得られた。もちろんまだまだ足りない部分はあるが、正しい方向に進んでいるという確信がある。チームは、すばらしい潜在能力を秘めている。今回の3ポイント獲得は、今後の飛躍に向けた最初のステップといえる」

ジェンソン・バトン

―イスタンブールパークの印象は?
「トルコGPは僕の大好きなグランプリで、2005年と2006年にはいずれもトップ5内でゴールできた。コースレイアウトは高低差の大きさといい、ドライバーにとっては過酷だけれど、同時に、ドライブしていてすごく楽しいね。追い越しの機会がいくつかあるのも、このサーキットの特徴だ。ターン1と3、そしてうまくいけば、ターン9と12でも可能だ」

―RA108の戦闘力を考えた場合、トルコGPでもいいレースができそうか?
「前戦スペインGPでは、今季最初の大きなバージョンアップを行った。戦闘力は確実に増して、いい結果を出すことができた。こうやって着実に進化していくのはとてもいいことだし、新しいパッケージに対してもしっかり理解できる。トルコの仕様は基本的にはスペインと同じものだが、今回はぜひともQ3に進んで、トップ10グリッドを獲得したい。イスタンブールパークではいつもいい走りができているし、楽しんできたから、この週末も悔いのないレースができたらと思っている」

ルーベンス・バリチェロ

―イスタンブールパーク・サーキットは身体面でどれほどきついのか?
「まず、反時計回りということ、そして高低差が大きいために、身体へ負荷は極めて高い。2005年に初めて走ったときから、すごいサーキットだという印象は変わらない。一周のラップは、リズミカルに流れるようにこなせる。そして何より重要なのは、ここでは前のクルマを抜けるチャンスがあるということだ。だからレースは毎年、手に汗握る白熱したものになる。ドライブする僕らにとっての最難関は、ターン8だ。ものすごく高速な上に、前が見えない。そしてコーナリング中の首への負担がすごいんだ」

―いよいよ今週末、リカルド・パトレーゼの持つ256戦の最多出場記録を破るが、記録達成に向け、レースへの意気込みは?
「最も経験豊富なF1ドライバーになるということは、僕にとってかけがえのないことだ。長いキャリアを経て、すばらしい思い出も山ほどある。でも1993年のデビュー当時から今まで、レースに対する姿勢は何も変わっていない。キャラミでのデビュー戦が、まるで昨日のことのように感じる。これまでずっとサポートを続けてくれた家族や友人に、まずは感謝したい。若いときにF1ドライバーになれて、本当にラッキーだった。僕はレースを愛している。ファンのみなさんが、僕の16年のキャリアに思いをはせてくれる中、僕自身はこのトルコGPを最高のものにするために、ベストを尽くしたい」

アレックス・ブルツのコースガイド

イスタンブールパークは、各コーナーでのスピードとグリップレベルがかなり違う。そのため、マシンセットアップの難易度がかなり高いコースだ。スタートしてすぐに、かなり高速での方向転換がある。ストレートは長く、終盤にはいくつかの低速コーナーも控えている。そのすべてで、ある程度のパフォーマンスを発揮できるセットアップを、作り出さないといけない。路面舗装も、場所によってずいぶん違う。最初の区間はしっかりグリップするが、最終区間はすごく滑りやすい。

ドライバーの多くは、有名なターン8を話題にする。でも、僕に言わせれば、路面に凸凹があって、首への負荷がきついだけのコーナーだ。ターン8の走り方次第でタイムが大幅にアップするかというと、そういうことはない。高速コーナーでタイムに大きく差がでることはありえないんだ。クリップポイントでも、少なくとも時速250kmは出る。あのコーナーを極限まで攻めたら、そのデータを見たエンジニアは大喜びするはずだ。でも攻めすぎると、右のフロントタイヤがすぐにダメになってしまう。長丁場のレースでは、それを考えないといけない。

このサーキットで最もチャレンジングなのは、イスタンブールの街中から、いかに渋滞をかいくぐってサーキットに到着するか……なんて冗談はさておき、なんといっても最終区間だ。最後の3つのコーナーは、すごく低速だ。ほとんどが、だいたい2速80km/h程度。そして、それぞれがすべて連係している。最初のコーナーで、ほんのわずかなミスを犯しても、それが最終コーナー立ち上がりまで尾を引いて、メインストレートの最高速に大きく影響してしまう。ここではつい攻め過ぎてしまうことがあるので、かなり注意しないといけない。

イスタンブールは街自体もすばらしい。これまで何度か訪れて、面白い場所も見つけた。何より名所旧跡が、山ほどある。ボスポラス海峡も、眺めているだけでも飽きない。レースに熱中するだけでなく、歴史に思いをはせてほしい。

トルコでのHonda

・Hondaは、トルコで1992年からビジネスを開始。
・ゲブゼ・セケルピナール工場は1997年から稼動し、生産台数は堅調に推移。現在、生産能力は5万台へと拡大している。
・トルコでのHondaの市場占有率は6.2%。2007年の四輪販売実績は2万2102台。