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第3戦 バーレーンGP

バーレーンGPプレビュー

Honda Racing F1 Teamは今週末、シーズン中唯一、中東での開催となるバーレーンGPに挑む。57周のレースの舞台となるバーレーン・インターナショナル・サーキットは、首都マナマから20kmほど南下した、砂漠のまっただ中にある。ここを含めて、ドイツ人デザイナーのヘルマン・ティルケのデザインしたコースは、今季のGPサーキット中8つを占める。

03年に約150億円をかけて建設された同サーキットでは、翌04年からバーレーンGPが行われている。5つの異なったレイアウトを取れるように設計され、GPでは、最長の5.412kmのコースが使用される。

一周の平均速度は時速210km。ピット前ストレートでの最高速は、時速314kmに達する。各コーナーのアスファルト製ランオフエリアはかなり広く、それもあってドライバーたちは果敢にオーバーテイクを試みる。抜きつ抜かれつのシーンの多さは、シーズンの中でも屈指といえる。

テクニカルチャレンジ

このコースには6本の直線が配され、それぞれ最高スピードが出るようなレイアウトになっている。そのためダウンフォース・レベルは、序盤のメルボルン、セパンより低くする必要がある。そしてダウンフォースを減らせば、コーナリング中のマシンはふらつきやすくなる。つまりハンドリングは、オーバーステア傾向に陥る。

レイアウト自体は、セパンといくつか共通点がある。とはいえバーレーンの舗装はよりスムーズで、グリップは低い。そのためブリヂストンはここに、ソフトタイヤを持ち込むことになっている。

また砂漠地帯に位置するため、日中の気温は軽く30℃を超す。非常に乾燥しており、異例の高温となったメルボルンに近い経験を再びすることになるだろう。とはいえそれ自体は、マシンの信頼性に深刻な影響は与えないはずだ。ただし周囲の砂漠からひっきりなしに飛んでくる微細な砂粒が、マシンの内部に入り込むことは完全には防げない。いつも以上の、念入りな清掃が必要だ。

このサーキットの要所は、1コーナー。最高速から1速に落としてのブレーキングが、毎周繰り返される。そして最終コーナーも1コーナー同様、先行車を抜く重要なポイントである。

 フルスロットル:68%
 ブレーキ:ハード
 ダウンフォースレベル:ミディアム、7/10
 タイヤ:ソフトミディアム
 タイヤの使い方:ミディアム
 平均速度:210km/h

チームトーク

ロス・ブロウン|Honda Racing F1 Team チームプリンシパル

―マレーシアGPを終えた印象は?
「マレーシアで発揮された戦闘力を見る限り、チームは着実に進化していると思う。2台が完走したことで信頼性も確認できたし、現時点でのマシン性能は最大限使いきっている印象だ。レース結果は、ライバルたちとの比較で、RA108のポジションをかなり的確に反映している。ここで得られた多くのデータは、ヨーロッパラウンド以降の進化に大きく貢献してくれるはずだ」

―バーレーンGPで、チームはどこまで戦えるか?
「序盤2戦での我々は、中団グループで互角に戦い、予選トップ10圏内に限りなく近い位置にいることがわかった。とはいえ実力でポイントを獲得するには、まだ十分な力はない。ヨーロッパラウンドで予定されているアップデートまでは、過度な期待は禁物だ。とはいえ序盤2戦で大きな手応えを得たこともあって、スタッフの士気は非常に高い。今後も継続的に力をつけていくことを確信している」

ジェンソン・バトン

―バーレーンGPに期待することは?
「今季のこれまでのパフォーマンスには満足しているし、前戦マレーシアでレース距離をきっちり走れたことは、とても価値あることだ。中団グループでの位置づけは、勇気づけられるものといえる。ただこれからコンスタントにポイントを取ろうとすると、もう一段階の飛躍が必要だろう。開幕以来、全くテストができてない状況の中、バーレーンで最大限の力を発揮するために、同じように暑かったメルボルン、セパンでのデータを駆使することになる。今週末は再び、予選でトップ10入りに挑戦できればと思っている」

―04年のバーレーンでは、表彰台に上がっているが、ここでいいタイムを出す秘訣は?
「バーレーンは国自体も大好きだし、サーキットもすごく気に入ってる。流れるような高速区間があって、限界まで攻めることができるからだ。マシンを100%信頼して、ブレーキングする。それが速く走るコツ。マシンの持つ戦闘力を信じて、きっちり止まれると信じる。ここは何カ所か抜けるポイントもある。特に1コーナー。長いストレートのあとのフルブレーキングだから、ライバルたちは慎重になって、かなり早めに減速し始める。だから一気にポジションを上げる絶好のチャンスだ。そして一番難易度が高いコーナーは、ターン14。進入時はすごくスピードに乗ってるし、ブレーキを踏みながらステアリングをきる。だから内輪がロックしやすい。コース上では、ひっきりなしに細かい砂が舞い上がっている。だからグリップの急激な変化にも、いつも対応しなければならない」

ルーベンス・バリチェロ

―マレーシアでのRA108のパフォーマンスには、満足していますか?
「序盤2戦での走りには、とても勇気づけられた。特に僕の場合、非常に難しいコンディションの中で両レースを完走できたことに、大いに満足している。マレーシアの土曜日は、トラブルでフリー走行をほとんど走れず、レース用のセッティングが満足にできなかった。でもRA108は全体的に、戦闘力があることを証明している」

―バーレーンGPに向けて、どんな準備をしているのか?
「序盤3戦のアウェーレースはいずれも気温が30℃を超え、肉体的な負担が大きい。でも僕は例年、開幕時に最高の体調になるよう、オフのトレーニングで調整してきている。そのため、序盤2戦の過酷な状況でも問題がなかった。今度のバーレーンでも、マシンや身体に何らかの問題が起こるとは思えない」

アレックス・ブルツのコースガイド

F1関係者はみんな、バーレーンに来るのを楽しみにしてる。マナマの町は、食事をはじめ、いろんな楽しみがある。

ここは午後になると、強風が吹きやすい。その結果、コース上にたくさんの砂が運ばれる。だから予選では、路面が少しでもきれいになった状態でアタックしようと、みんなできるだけコースインのタイミングを遅らせる。だから渋滞に邪魔されずに、アタックラップをまとめる必要がある。

ティルケが設計したコースの中では、ここはかなり低速のサーキットだ。とはいえ、面白いことに変わりはない。ここで重要なポイントは、ブレーキングとトラクション性能だ。特に時速300kmから1速まで急減速する1コーナーは、このサーキットで最大の抜きどころだ。

次の左ターン2は、すごく滑りやすい。だからトラクションコントロールなしでは、かなり難しいコーナーになると思う。立ち上がりのオーバーステアで挙動を乱すクルマが結構出てくるだろう。ターン3は問題なく駆け抜けることができ、次のターン4は3速まで落とす。ここはオフキャンバーになっているから、同じようにトラクションコントロールなしでは、立ち上がりが難しそうだ。

次は左右と連続する、高速シケイン。ここは本来楽しいはずだけど、クルマはほかの区間に合わせて足回りが柔らかめになってる。だから方向転換がビシッと決まらなくて、ちょっと欲求不満になる可能性がある。

次のヘアピンも、簡単じゃない。週末を通じて、グリップレベルはどんどん上がるはずだ。立ち上がりは上りで、長い左コーナーへと向かう。この複合コーナーは、2つ目のクリップポイントがかなり奥に取ってある。ここもちょっとオフキャンバーだから、みんな内輪をロックしやすい。そこから裏ストレートに続くから、立ち上がりのトラクションは本当に重要だ。ここで6速まで上げて、すぐに3速の左コーナーに突入する。僕はここでの空力バランスは、このコーナーに合わせている。

ここを抜ければ、次の上りのターン12はほとんど全開。そして右のターン13は、1コーナーと並ぶもうひとつの抜きどころだ。もし先行車のタイヤが垂れていたら、ここが大きなチャンスになる。そして長いストレートを過ぎれば、最終コーナーが待っている。ここでブレーキングを遅らせると、立ち上がりで大きくタイムロスして、メインストレートでスピードが乗らなくなる。最後まで手ごわいサーキットだ。

バーレーンでのHonda

・Hondaのバーレーンでの四輪車市場は好調な経済を背景に急拡大を続け、日系メーカーが四輪車市場の約75%を占める。Hondaの販売主力車種はアコード、シビック、CR-Vであり、この3車種で販売の約9割を占める。
・二輪車市場では、Hondaのシェアは48%に達し、依然として安定的シェアを保持。08年3月から、フルモデルチェンジしたCBR1000RRを販売開始。
・汎用製品でも、全般的にHondaが市場を独占。2007年は、特に発電機とウォーターポンプの需要が伸びた。