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第2戦 マレーシアGP

マレーシアGPプレビュー

Honda Racing F1 Teamは第2戦マレーシアGPを戦うべく、同国のクアラルンプールへ向かった。シーズン開幕戦オーストラリアGPに続く2連戦は、セパン・インターナショナル・サーキットに舞台を移して、56周にわたる熱戦が繰り広げられる。

今年で10回目を数えるマレーシアGPは、初回からずっと同サーキットを舞台としている。ここはドイツ人デザイナーのヘルマン・ティルケが手がけた最初のコースでもある。総面積260ヘクタールの敷地内に作られたコースは、長いストレートと高速コーナーを特徴とする。近年は路面の凹凸もひどくなり、マシンやドライバーへの負担はいっそう増している。

マシンは、平均時速210kmのスピードで一周5.543kmのトラックを駆け抜ける一方で、うだるような気温と湿度により、ドライバーやマシンへの負担も大きい。

テクニカルチャレンジ

前週オーストラリアGPでの予想外の猛暑は、チームにとっては結果的にマレーシアGPに向けてのいい予行演習となった。なぜなら、ここでのレースは全18戦の中でも屈指の高温高湿度の下で行われるからだ。当然、冷却対策は重要だが、アルバートパークほどの気温上昇にはならないはずだ。

セパン・サーキットの基本的なハンドリング特性は、オーバーステアである。さらに路面がバンピーであるために、問題はいっそう複雑になる。ここでは高速と低速両区間のバランスを、いかに取るかが重要になる。さらに今季はあらゆるサーキットに共通することだが、トラクションコントロールがなくなった状態で、できるだけのメカニカルグリップを確保することも必要となる。

ドライバーにとっては、マシンがしっかり仕上がっていないと、ターン5、6の高速レーンチェンジで思いきり攻められない。一方で純粋にラップタイムを稼ぐ場合は、もっと重視すべきコーナーがある。最終コーナーのひとつ手前、ここは複合クリッピングポイントを有し、バランスのいいクルマでないと大きくタイムロスしてしまう。

ここで速いマシンは、ほかのサーキットでもおおむね戦闘力を発揮するといっていいだろう。

 フルスロットル:60%
 ブレーキ:ミディアムハード
 ダウンフォースレベル:高、8/10
 タイヤ:ミディアムハード
 タイヤの使い方:難
 平均速度:210km/h

チームトーク

ロス・ブロウン|Honda Racing F1 Team チームプリンシパル

―開幕戦を終えて、現状の総括は?
「結果自体は残念だったが、肯定的な部分も少なくない。予選では中団グループの一角に位置していることが確認できたし、バリチェロがすばらしい走りを見せてくれたレースからは、ポイント争いのできる戦闘力があることもわかった。ヘレス以降の空力アップデートが、期待通りだったこともうれしいことだ。序盤のアウェイ3戦を戦うには、十分なベース車両といえる。そしてヨーロッパラウンド初戦のスペインGPには、さらに改良した仕様を投入する予定だ」

―マレーシアでは、どこまで戦えそうか?
「おおむねメルボルンと同じような位置になるのではないだろうか。ポイント獲得は不可能ではないし、2人のドライバーのモチベーションはさらに高まっている」

ジェンソン・バトン

―マレーシアGPは、期待できそうか?
「オーストラリアGPでは、1コーナーの事故に巻き込まれて完走できなかった。でも、ここマレーシアでのレースは、すごく楽しみにしてる。先週末だけでもマシンは大きく進化したし、今回も同じぐらい伸びると思っている。確かに、中団グループの戦いはし烈だ。だから毎戦、マシン性能を最大限引き出すことが必要だ。それができれば、自然に結果が出るはずだ」

―気温35℃、湿度70%というコンディションでレースをするのは、どれほど大変なのか?
「暑いのは確かにきついが、問題は湿気だ。あれだけ空気が湿っていると、呼吸するのも大変なんだ。それだけに日頃から鍛えていることが必要だが、僕はもちろんその準備は万全だ」

ルーベンス・バリチェロ

―開幕戦でのRA108の戦闘力には、満足している?
「ヘレスでの最終テストで、マシンが進化していたことはわかっていた。ただあのときは単独テストだったために、ライバルたちとの相対的な差までは知ることができなかった。そして実際に戦ってみて、大いに勇気づけられた。日本とイギリス、両方の開発陣の仕事ぶりには、本当に感謝してる。特にここ数週間のがんばりは、すごかった。いいシーズンが送れそうな予感がする」

―セパンで速さを見せるポイントは?
「最も重要なことは、開幕に向けて改良を施してきた空力バランスだ。マレーシアでその進化はさらに期待できるだろう」

アレックス・ブルツのコースガイド

高温多湿のセパンは、ブレーキ、エンジン、そしてドライバーにとって、とても過酷なレースになる。サーキット自体の難易度も、非常に高い。そのため、僕らはこの週末、全力で仕事をこなさないといけないだろう。

1コーナーへのアプローチの時点で、マシンは7速310km/hに達している。路面のグリップはかなりいいから、3速でのブレーキングはギリギリまで遅らせることが可能だ。ただしその瞬間、リアが不安定になるから気をつけないといけない。次の左のターン2は、このサーキットで一番低速のコーナーだ。ギア比によるが、1速か2速。コーナリング中にキャンバーが変わるから、デフセッティングはけっこう厄介だ。

そこからは、長い右コーナーになる。ここはたとえウエット路面でも、全開で走れる。そしてターン4でブレーキング。ここは路面がひどくバンピーで、バランスを崩しやすい。そしてその先に、このサーキットで一番楽しい区間が待っている。

ターン5、6は、5速230km/h。ターン5は、ほとんど全開でいける。クリップをなるべく奥に取ることを忘れないように。そしてすぐに、ステアリングを切る。このとき身体には、体重の4〜5倍ものGがかかる。ターン6の進入は、ほんの少し減速してマシンを安定させる。ここは信じられないくらい路面の凹凸がひどいから、リアが暴れまくる。この時点でもまだ、マシンは時速220〜230kmのスピードを維持している。そしてランオフエリアは、ほとんどない。スリル満点だ。

その先の右右と回り込むコーナーは、オーバースピードで突っ込みやすい。そして1速か2速のヘアピンに進入する。ここの立ち上がりでスピードに乗せられるかどうかが、ラップタイムに大きく影響する。

そこから再び、高速区間に入る。最終コーナーのひとつ前も、すごく難易度が高い。時速300km以上から、一気に2速に落とす。ターンインしながらだから、マシンは簡単にスピンモードに陥りやすい。最終コーナーのヘアピンも、できるだけブレーキングを遅らせる。同じく時速300kmから2速へのフルブレーキングだ。

マレーシアでのHonda

・Hondaの現地法人、ホンダマレーシアは2000年に設立し、2007年の四輪車販売実績は2万8479台となり、全体市場におけるシェアは5.8%。
・工場では、4モデルを生産し、Hondaの基幹部品をイギリス、中国をはじめとする世界各国へ輸出している。
・ホンダマレーシアは環境保全活動の一環として、WWFと協賛し、5年のプロジェクトで、絶滅の危機に瀕しているスマトラサイの救済活動を展開している。
・また、国連開発プログラムの一貫として、20名の恵まれない子どもたちに奨学金の全額支給を行っている。