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悪天候が大波乱を呼んだブラジルGP
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クラッシュの続出でセイフティカーが絶え間なく出動し、最後は赤旗中断のままレース終了となった大波乱のブラジルGP。完走扱いのマシンは僅か10台という中、Lucky Strike B・A・R Hondaのジャック・ビルヌーブは、サバイバルレースを完走し6位入賞。今季初の3ポイントを獲得した。ジェンソン・バトンは32周目にリタイアとなった。
インテルラゴス・サーキットは決勝日午前中、豪雨に見舞われた。コースは濁流が流れる川に変貌し、晴天だった前日予選の様子は見る影もない。雨は昼前には一旦止んだものの、スタート前に再び降り出した。雨脚はマレーシアのスコールよりも激しく、午後2時のレース開始時点には小降りになったものの、コース上はほとんど洪水状態だった。
今年のレギュレーションでは、土曜日の予選以降は殆どマシンに触れられないことになっている。しかし、今回は特例として車高を上げることと前後のウィングの調整が認められた。但し、タイヤは依然として浅溝の1種類のみ。これで川のようになったコースを走るのは、いくらF1ドライバーと言えども、かなり困難な使命となる。
午後2時のスタート時間直前に、主催者はスタートの延期を決める。その後雨はほとんど止み、15分遅れでペースカーの先導でスタート。コース上の水は捌け始めてはいるが、まだレースが出来る状態ではなく、ペースカーの先導はその後数周にわたって続いた。
7周目にペースカーがピットに入り、レース開始。ポールポジションのR・バリチェロ(フェラーリ)が次々と後続に抜かれ、トップはK・ライコネン(マクラーレン)。10周目の時点で、Honda勢はジェンソン・バトンが8番手。ジャック・ビルヌーブが10番手まで上がっている。
18周目。ストレートを全開走行中のR・ファーマン(ジョーダン)のマシンのフロントサスペンションが突然破損し、前を行くO・パニス(トヨタ)を巻き込むクラッシュとなる。幸い両者にケガはなかったものの、路面に破片が散乱し、再びセイフティカーが登場。この間にB・A・R Hondaの2台を含む多くのマシンがタイヤ交換、給油のためにピットインした。
23周目にレース再開。この時点でバトンは9番手。ビルヌーブは13番手に付けている。そして25周目。M・シューマッハ(フェラーリ)が、高速左コーナーの水溜りでスピンしコースアウト。バリヤに衝突しリタイアとなる。これで3度目のセイフティカーの登場。全71周のレースは、折り返し点までまだ10周近くを残した時点で、既にコース上には13台しか残っていない。この時点でバトンは5番手までポジションを上げた。
しかし32周目。M・シューマッハがクラッシュしたのと同じコーナーで、バトンもコースアウト。マシンはバリヤに衝突しリタイアとなった。これで4度目のセイフティカー先導となる。この場所ではその前にJP・モントーヤ(ウィリアムズ)、A・ピッツォニア(ジャガー)らも犠牲になっており、まさに魔のコーナーとなった。この時点でコース上に残っているのは、僅かに11台。ビルヌーブは9番手に付けている。
46周目。悲願の地元優勝に向けてトップを快走していたR・バリチェロ(フェラーリ)が、コース脇にストップし、そのままリタイア。これでビルヌーブは、入賞圏内の8番手に。そして48周目にはR・シューマッハ(ウィリアムズ)、さらに53周目にはJ・トゥルーリ(ルノー)がピットに入って、6番手まで上がる。
54周目。G・フィジケラ(ジョーダン)がK・ライコネンを抜き去りトップに踊り出るが、その後最終コーナーでM・ウェバー(ジャガー)が激しくクラッシュ。更に直後に通過したF・アロンソ(ルノー)が、路面に散乱していたタイヤに激突してクラッシュし、レースは赤旗中断。そのままレース終了となり、ジャック・ビルヌーブは6位入賞。53周目が最終周となり、その時点でトップを走っていたK・ライコネン(マクラーレン)が、マレーシアGPに続く連勝を果たした。
※4月11日、国際自動車連盟(FIA)の裁定により決勝の結果が変更になりました。正式な結果はこちらをご覧ください。
●中本修平 エンジニアリング・ディレクター
Honda Racing Development
「まず、ようやくジャックがポイントを獲得する事が出来て嬉しいですね。とても困難な状況の中、よく頑張ったと思います。ジェンソンもスピンする前までは素晴らしい走りを見せてくれました。我々が選んだレース戦略も、今日は当たっていたと思います。シーズン始めの3戦はとてもタフでした。2週間後のヨーロッパ戦が待ち遠しいですね。最後に、今日鈴鹿で開催されたMotoGPでのアクシデントで怪我をした、加藤大治郎選手の回復を心より祈っています」
●ジャック・ビルヌーブ(6位)
「とても難しいレースだった。今日は大変なコースコンディションだったから運転が大変だったけれども、気をつけて走れば大丈夫だった。本当はそれほど水浸しだったわけじゃないんだ。こういった状況の時は、いつもよりも更に気をつけて走らなければいけないのに、クレイジーなドライビングをしていたドライバーが何人かいたよね。アロンソがレース半ばでイエローフラッグにも関わらず抜いていったのを見たけれど、他にも同じようなドライバーがいたね。ああいった行為は大事故に繋がると思う。ピットストップの際も同様に、何人かのドライバーがコースに全速で飛び出していって、ストレートを半分行ったところでスピードが出すぎてしまって、コースアウトを防ぐためにアクセルを戻していた。コースコンディションだけでなく、こういったドライビングが危険な状況を作り出すと思うんだ。6位という結果には満足しているよ。今日はチーム全員にとってとても大変な状況だったけれど、皆素晴らしい仕事をしてくれたと思う。チームに3ポイントをもたらせることが出来て嬉しいよ」
●ジェンソン・バトン(32周リタイア)
「『もし、あのままフィニッシュしていたら・・・』って言うのは簡単だよね。コースアウトした時はライコネンの前にいたし、最後まで走りきるだけの燃料も積んでいたからね。だから、あんなミスを犯さなかったらどうなっていたか。でも、他のドライバー達も同じ事を言っているだろうね。マシンは調子良く、タイヤの選択も良かったし、作戦は正しかったよ。あのコーナーは、コースの外側の土手から水が川のように流れ出ていて、いつコースアウトしてもおかしくない状態だったんだ。丁度水がたまっていたところを横切ってしまったんだよね。押さえようとしたんだけれど、タイヤバリアに真っ直ぐ行ってしまった。激しくぶつかった際に、背中を少し痛めたけれど、後で見たらもっと大変なことになっていたかも知れなかった。残念な結果だけど、次は頑張るよ」
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