Hondaは2006年シーズン、単独ワークスチームとなった『Honda Racing F1 Team』として参戦すると同時に、新たに今年から参戦することになった『SUPER AGURI F1 TEAM』に、新型V8エンジンHonda RA806Eを供給した。
今シーズンのF1世界選手権は大きなレギュレーション変更があり、エンジンがV型8気筒、排気量が2400ccに制限され、タイヤ交換が復活し、予選方法がノックアウト方式に変更された。 Honda Racing F1 Teamは、今シーズン新たに加わったルーベンス・バリチェロ(ブラジル)とジェンソン・バトン(英国)をレギュラードライバーに、アンソニー・デビッドソン(英国)をサードドライバーとする3名体制で臨み、新開発エンジンのRA806Eを、ニューマシンRA106に搭載して開幕戦を迎えた。
開幕戦バーレーンでは、バトンが予選3番手から4位入賞、バリチェロは予選6番手からスタートしたもののメカニカルトラブルにより15位となった。第2戦マレーシアでは、バトンが予選2番手から3位表彰台を獲得し、2戦連続の上位入賞と今季初の表彰台を獲得した。 オフシーズンのテストから好調をアピールしていたHonda Racing F1 Teamは、第3戦オーストラリアでバトンが今シーズン初のポールポジションを獲得。しかしながら、予選の結果を決勝レースに結びつけることはできず、10位でのフィニッシュだった。トップチームとの間に差はあるものの、開幕戦から第7戦モナコまで7戦連続で着実にポイントを獲得していった。 その後、第11戦フランスまで入賞が6位1回のみという不本意なレースが続いたが、Honda F1参戦300戦目となる第12戦ドイツでバトンが4位入賞を果たす。
そして迎えた第13戦ハンガリーは、前夜からの雨により、ウエットコンディションのもと決勝が行われた。エンジン交換を行ったため予選14番手からスタートしたバトンは、ウエットからドライに変化する難しい路面コンディションでベストタイムを連発。見事な逆転劇で52周目にトップに立つと、バトン自身とHondaのF1第3期にとって初となる優勝を果たした。チームメイトのバリチェロも予選3番手スタートから4位入賞を果たし、今シーズン2度目のダブル入賞を果たした。 この優勝はHondaにとって通算72勝目(301戦目)、マクラーレンMP4/7・ホンダを駆りゲルハルト・ベルガーが獲得した1992年11月8日の第16戦オーストラリア(アデレード)以来、14年ぶりの快挙達成となった。また、Hondaワークスチームとしての優勝は、1967年9月10日に開催された第9戦イタリア(モンツァ)でジョン・サーティース(英国)が獲得して以来39年ぶりとなった。
続く第14戦トルコ、第15戦イタリア、第16戦中国ではバトンが4位/5位/4位、バリチェロが8位/6位/6位となり、4戦連続ダブル入賞を果たした。第17戦日本ではバトンが4位入賞を果たし、最終戦のブラジルでは、バトンが3位、バリチェロは7位となった。
この結果、1968年以来ワークスチームとしては実に38年ぶりの参戦となったHonda Racing F1 Teamは、ダブル入賞を6回記録し、コンストラクターズランキング4位で今シーズンを終えた。ドライバーズランキングは、バトンが6位、バリチェロが7位だった。
一方、Hondaがエンジンサプライヤーとしてエンジンを供給した新チーム『SUPER AGURI F1 TEAM』は、SA05を投入し、佐藤琢磨(日本)と井出有治(日本)をレギュラードライバーに、フランク・モンタニーを序盤2戦のサードドライバーとする体制で開幕戦に臨んだ。 わずか4カ月という準備期間でのF1グランプリ挑戦だったが、開幕戦バーレーンでは、佐藤が当面の目標であった完走を果たす。第2戦マレーシアも佐藤が完走し、第3戦オーストラリアでは井出とともに2台揃って完走した。
第5戦ヨーロッパより井出からモンタニーにレギュラードライバーが変更となり、第8戦イギリスでは2度目のダブル完走を果たす。第10戦アメリカで佐藤が獲得した予選18番グリッドが今シーズンのベストグリッドとなったが、ライバルチームとの差は着実に縮まっていった。
第12戦ドイツからは、待望のニューマシンSA06を投入する。最大のポイントは、新しい小型で高性能なギアボックスの採用で、エンジン位置が下がり、リアの絞込みを強めることができたことだった。これにより空気の流れを増進し、リア周りの安定した挙動を手に入れることができた。またドライバーは、モンタニーに代わり山本左近がレギュラードライバーとなる。地元での凱旋レースとなった第17戦日本では、佐藤が納得の15位でチェッカーを受け、17位の山本とともに今シーズン3度目のダブル完走を果たした。 そして最終戦ブラジルでは、目標としていたライバルたちを上回る走りを見せて、佐藤が10位、山本が16位完走と今シーズン最高の結果を残し、来シーズンの飛躍を期待させた。
結果はコンストラクターズランキング11位、佐藤がドライバーズランキング23位、山本がランキング27位でシーズンを終えた。
■中本修平 HRDテクニカルディレクター/Honda Racing F1 Teamシニアテクニカルディレクターのコメント 「今シーズン中にもう1勝したかったので、最終戦は勝つつもりでブラジルにやって来ました。表彰台に上がれたのはうれしいですが、そういう意味では残念な最終戦でした。実力で勝つのは来年に持ち越されてしまいましたから。 今シーズンは、中盤に足踏みをしてしまいトップ集団からは置いていかれてしまう状況でしたので、それを考慮すると、最終的にはチャンピオンチームに近づけたという手ごたえはあります。けれども、まだ追いついていないし追い越していません。今年のハンガリーでの優勝は、今F1をやっている半分以上のエンジニアにとって初めての経験でした。彼らが優勝を経験できたことはよかったと思っています。 来シーズンは早いうちに実力で優勝したいですね。そのためにも、チームのメンバーには今以上に、自由な発想でチャレンジングな仕事をして欲しいです。そういう環境をつくるのが私の仕事で、それができれば自然と結果はついてくると信じています。 最後に、今シーズンHonda F1を応援してくださった皆さん、本当にありがとうございました。来年も応援よろしくお願いいたします」 |