MENU

HONDA

検索

勝利の味 佐野教授の「60's Honda F1物語」

イラスト
俺たちはすごいことをやったんだ!
(佐野彰一×高木理恵) 

目の前で、HondaF1がトップでチェッカーを受けた。
それを見た佐野さんは、勝つときって、こんなにあっさりと決まってしまうもんなんだな、と、少し拍子抜けしたという。でも、グランプリで勝つということの意味を、佐野さんはその翌日、実感することになります。

――イタリアでの2勝目のあと、サーキットを離れてから、感動的な出来事があったそうですね!

「ええ、空港で、とてもいいことがありました。そして、イタリア人の素晴らしさも知りましたね」

――それは何でしょう、教えてください!

「レースの翌日、イギリスに戻るために空港に行った。そして、搭乗する時間になったときに、その“事件”は起きました。
もちろん私たちは、普通に搭乗するつもりでした。でも、やってくれたんですね、アリタリア航空の人たちが。
『昨日のグランプリで優勝したHondaの方たちですね? では、一番最初に機内へどうぞ!』と――」


――ワ〜、鳥肌が立っちゃうくらい粋なはからいですね!

「私も、イタリア人っていいなあと思いました。日本だったらどうでしょう、外国のチームが来て優勝したとして、日本の航空会社が、果たして同じような対応をしたかどうか……」

――それは、ちょっとむずかしいかも……。

「そこで私は、世界というものは“大人”なんだなということを、初めて感じた。とてもオープンマインドで、そして勝った人たちにそれなりの敬意を表わすことがちゃんとできる。飛行機の中でも、スチュワーデスさんが『おめでとう』って言ってくれたりね。何かとても温かかったな」

――そこで、勝利の重みをお感じになったんですね?

「まあ私はレースに勝ったというよりも、アリタリアの人たちの気持ちが嬉しかったんですけどね(笑)。
でもレースに勝ったから、そういういい気持ちにもなれたわけで、おかげですばらしい体験ができたと思っています」


――でも、なぜアリタリア航空の人たちは、佐野さんたちがHondaチームだとわかったのでしょうか?

「ウーン、レースの翌日だったし、また当時は日本人の団体というか旅行者も少なかったし……チェックインしてわかったのかもしれないし。
それと、イタリア人にとっては、ジョン・サーティースというのは、フェラーリでチャンピオンを取った大ヒーローです。そのヒーローを、また勝たせてくれたHondaチームということで喜んでくれたのかもしれませんね」


――イタリアのお国柄がよくわかるようなエピソードですね!

「そうです。ただ、優勝チームを最初に搭乗させたということは、べつに彼らにとっては大したことじゃなかったんじゃないかな」

――それがまたニクイですよね!

「そうです。でも、あれは本当に嬉しかった!」

勝利の喜びは、チェッカーの瞬間だけにあるものではない。佐野さんのように、サーキットではあまり興奮しなかったけど、期待していなかったところで祝福され、あらためて「勝ち」の重みを感じたというようなケースもあったんですね。
その空港での意外な喜びは、一瞬だけでなく、いまでも佐野さんの心を温かくしているようでした。
そして私にも、F1という最高峰レースの深さ、気高さ、そして人を魅了してしまうマジックが熱く伝わってきました。

トップページへ戻る 次のページへ
佐野教授の60’s F1物語へ 丸野エンジニアの手記へ 幻のHondaインディ計画へ 佐野教授とコレクションホールを行くへ 佐野教授の手紙へ 時代背景へ