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佐野教授の手紙
8月6日イギリスからその2
7月31日追伸

追伸
 手紙を出すのが遅れてしまったのでその后の状況をお知らせします。火曜は朝からローラへ行きました。インディレースはじめ多くのレースで活躍しているすぐれたレースカーを作っている会社なのでかなり大きいと思っていたところ、あまり小さいので驚きました。全従業員はわづか20人ぐらいです。設計者はエリックさんを含めて、3人です。1人は純粋の英国人、マイケル・スミスといい、もう一人はオーストリア人でジョセフ・カラセックと云い、英語があまり上手ではなく、時々、スミスさんに通じないで聞き返されています。が僕はジョセフさんの英語の方がはるかに良くわかります。彼は自分のノートにはすべてドイツ語を使い、メートル法を好んでいます。
 僕の仕事で一番気が疲れるのはインチをミリに換算する事で、もうかなり馴れましたが、神経がすりへる思いです。インチの小数、インチの分数、ポンド、オンス、フィート、シリング、ペンス、英ガロン等、ほとほとうらめしくなります。ジョセフさんがいつもこの国の度量衡のわづらわしさにぐちをこぼしていますが、全く同感です。
 ローラチームも遅まきながらやっとエンジンがかかり、図面をかきはじめ、東京で作る分の図面が、僕のなわ張りなのですが、木曜一杯でなんとか完成し、金曜にBOACの南廻りで東京に送りました。研究所では月曜には図面を受取れると思います。
 問題は車体の設計ですが、これは僕がエリックさんと協力してやっていますが、例によって多くの問題があり、毎日遅くなってしまいます。従業員がみんな先に帰ってしまったあと、社長一人、僕と残っているのです。どこの国でも小さい会社の社長は従業員より楽ではない様です。
 図面が忙しいので、車を作る方はあまり良く見るひまがありませんが、設計技術については特に新しいすぐれたものは無い様で、他の車の知識が容易に手に入る立地条件と豊富な経験ををもとに、てってい的に軽量化をしているものと考えられます。
 車の強度計算はジョセフさんがもっともらしくやっていますが、たいしたことはありません。荷重条件と車の諸元を与えられれば、僕ならもっとスマートに早くやれます。要するに、僕ならローラの会社に入っても、設計者として十分やれると云うことです。
 但し社長のエリックさんに関しては、さすがに車全般に対するすぐれた見識を持っていて、時々良い事をおしえてくれます。これが氷山の一角である事を期待し、これからのつき合を楽しみにしています。彼は非常におだやかな人物で、小さな声で物をいい、物腰はやわらかく、およそ、レースカーの設計者、社長とは思えない人です。朝は僕は9時に出勤ですが、帰りはいつも9時頃になります。しかし朝は8時まで寝ていられるので楽です。
 食事は自分で作るのですが、めんどうくさいとインスタントラ−メンにしますが、大抵はごはんをたいて、カンズメを開けてたべます。米はスーパーマーケットで買えますが、プッディング用なので高価です? 1kg82円ぐらいです。味は悪くありませんが、水加減がむづかしく、うまくたけた事はありません。昼食はローラから車で3分ぐらいの食堂でたべます。労働者、運転手向けなので安く、ローストビーフ、キャベツ、ジャガイモとティーで200円です。これがここでは最高で、トーストとコーヒーだけの人もたくさんいます。

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