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06.オメガのストップウオッチ

 先発隊の仕事は、まずレンタカーを借りて空港に行き、送られてくるF1車とスペアエンジン、それに沢山の部品を通関して受け取る事だった。またテストやレースに必要な品物を現地調達して、本隊が到着した時すぐに仕事が始められる様に準備しておく事だった。

 その頃オメガのストップウオッチを日本で買うと大変高かったので、私がアムステルダムで買う事になっていた。
 ホテルで教えてもらった時計屋に行って、オメガのストップウオッチを見せてほしいと頼んだのに「こちらはオメガと全く同じ部品を組み立てたHという会社の新しい製品で、性能は同じで値段はオメガの半分です」と、ブランド名以外の外観はオメガと全く同じストップウオッチを見せられた。 
 まだ経済小国だった日本の客は、安い物しか買わないと思っているようだった。
「いや、オメガを見せて欲しい」と、催促するとどうやらHの方がマージンが高いらしい、しぶしぶオメガを取り出してHに並べた。
 さて困った、どちらにしようかとしげしげ見比べているうちに、鈴鹿でラップタイムを取っていて、何時も疑問に思っていた事を試してみようと思いついた。
 その疑問というのは、「メカ式のストップウオッチをスタートさせてラップタイムを取るのに、止め針だけを止めたり動かしたり繰り返しても時間は狂わないのだろうか」ということだった。ストップウオッチが2つあるからそのテストが出来る絶好のチャンスだ。店員の目の前で両手にそれぞれオメガとHを持ち、2つを同時にスタートさせた。Hの方だけ止め針をガチャガチャ50回止めたり動かしたりを繰り返してみた。するとどうだろう、Hは5秒も遅れてしまった。オメガも同じテストをしてみたがオメガは遅れない。
 やっぱりF1と同じで、時計も部品の精度だけではなく、組み立てや調整が大事なんだという事をオランダに来て偶然発見。ビックリ顔の店員を尻目にオメガを買って帰った。