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幻のHondaインディ計画/第一章
社内報抜粋『社長とホンダマンの座談会-未来を自分でつくれ!』

  <出席者>

浜製・生管・検査課
青島晃司
工機・実習中 新開三千秋
埼製・一工・車体組立課 鈴木国生
鈴製・一工・組立課 田原靖司
技研・強度試験室 萩原彰
司会/埼・管理・労務課 鴨宮久年

明日への道に安易な期待を持ち、足踏みしていたのでは進歩はない。
まだまだ尽きぬ未来がある。
常に新たなものを目指す意欲と、創造の苦しみ、楽しみを持ち続けるべきだ。
本田技研に働く一人でなく、本田技研を動かす一人であるという自覚を持ち、ここでもう一度考えてみよう。
我々自身について—


司会
今日はわが社の若い人を代表して、集まっていただいたんです。新入社員の人は、人生観をお聞きしたい、なんてはりきっていますよ(笑)

社長
むずかしいこと言うとわからないぜ(笑)

悪い条件があってこそ進歩がある
萩原
では、まず、アメリカからお帰りになったところで。フォーミュラレースに大変関心を持っているんですけど、ご覧になってきたインデアナポリスのレースはいかがでしたか。

社長
昔、自分もレースに出て目のところを怪我したりして、身をもって体験しているけど、インデアナポリスのレースでもすごい事故があった。七台お釈迦になった。ドライバーの二名は焼け死んだ。これは一台がスピンしてインコーナーにぶつかり、それがはじき返ってアウトコーナーの壁に飛び込んで火を噴いた。そこに七台ぶつかったんだから。イタリーのモンツアのレースでも観客の中に突込んで十四人が死亡。フランスのルマンのレースでも七十人が死んでいるという。にもかかわらずだよ、毎年レースをやっているということ。死んでもいいというのではない。事故をなくすのが我々の問題なんだが、事故を恐れていたんでは進歩がないんだ。飛行機のマッハ3、アメリカから日本まで三、四時間で飛んでくるという。これだって尊い犠牲の上に立ってできたんだ。いかにアイデアを使ってするかということなんですよ。そういう意味でショックを受けた。同時に、日本だったら、もしスズカ・サーキットあたりでこれをやったらどうなるか、すぐ議会でとりあげられる。責任を問われたり、世論の圧力で、サーキットやホンダはつぶれちゃうだろう。日本人は事故が起こった場合、それをのり越えてよくしていこうということをしないで、何か犠牲があるとやめてしまうような国民性を持っていると思う。そういう点、アメリカや先進国は度胸を持っていると思ったね。悪い条件がある。これを体験し、克服してこそ、よりいい車が造れる。企業にもそれは言えるよ。悪い条件や犠牲にへこたれてはいけないんだな。これは非常に感じたね。

鈴木
機体はどうでしたか。

社長
タイヤが非常に進んで、タイヤの交換は出場車の二、三台だけでほとんどなかった。現代の科学の粋を集めて走ったということになるだろう。それからね。フォードが本腰を入れて出場したんだ。しかし、何台か出場させて、事故を起こしたのもフォードだし、惨敗だった。勝つものと思っていたんだろうね、一生懸命、全米に宣伝したんだ。副社長が強調していたが、結果から見て、営業にレースを使ったと言うことは非常に失敗だと、私も同感に思った。

他力本願と自力の差
青島
評判のニューヨーク世界博には行かれましたか。

社長
うん。日本のはなっておらん。一人よがりなんだな。目的は日本の紹介、日本の水準を示すことなんだ。よそはみんなきれいで、でっかい。その建物の中で、日本は穴蔵だ。それで金はかかっている。ディズニーの館はチョコチョコとビニールの板が張ってあって、天井なんかなんにもはっていない。日本館はただなのに、入る人は少くない。ディズニーは90セントとるのに入る人が多い。金を出しても入るようなものを作らなければならないんだな。百何十人という女の子をつれて行ったって、小説なんか読んでいるんだもの、ぜんぜんなっておらんね。向こうの人に売ろうという時には、日本から連れて行ったってだめなんだ。アメホン(アメリカ・ホンダ)なんか日本人は五人だけだろ、それで現地人を何百人も使っている。アメリカから金をとるんだから、アメリカ人を使わなければだめなんだ。それに、女の子が寝間着にへこ帯みたいのにサンダルつっかけているのには困ったよ。

鈴木
すばらしかったのは、どんなものでした。

社長
ゼネラルモーターが一番すばらしかった。フォードはディズニーに頼んで、恐竜時代からはじまって、進化して、手押車から自動車にという、人類の歴史の中に自動車を入れているんだ。見ている分にはいいんだけど、フォードは一貫した思想に欠けているように思った。そこにいくと、ゼネラルモーターは自分のところでやった。現在からレースの宇宙都市、海底都市等技術的に掘り下げているんだな、現在の技術で可能であろうと想像つくようにね。実に興味深く見た。やっぱり頼んだのと自分たちで作ったものは違うね。これは大事なことだよ。自分の商売を頼んでやってもらうのと、自分で知恵を出してやったものとの差を、まざまざと見せつけられる思いがしたね。

外国に行くばかりが能でない
新開
ホンダは二輪で世界一になった。我々新入社員は四輪でも世界一になりたいと入社しましたけど、現状だと、我々には海外で勉強してくるという機会が少ないように思うんです。

社長
世界を見てくれば、世界一になると思ったら大間違いだ、なんのために通信がこれだけ発達したのか考えてみろ、海外に行ったら、なんとかなるという中途半端な考え方をする奴が多いと、ホンダはつぶれるね。なあ、そうだろう(笑)。我々は未知の世界までいかねばならない。外国へ行きたきゃ、自分の腕で行ってこい。ホンダの宣伝をかねて、旅行したいから車を貸せ、というレターが山ほどくるが、世の中には人をあてにした人間が多過ぎるな。

生やさしい考えは恐しい
青島
海外での四輪の反響はどんなものでしたか。

社長
ものがよければ、出るんだよ。だいたい造るということには秩序というものがある。今はいいものを造っていると誤認しているのではないかな。それではだめだ。現状の機械と工場、そして図面があれば、もっと安くできるはずだ。それをもっと考えてもらいたいね。

萩原
しかし、四輪でも早く世界一になりたいですね。

社長
イギリスなどでは、ホンダのフォーミュラが五年で一位になったらたいしたものだと言っている。イギリスなど何十年という歴史をかけているんだ。たしかにそういう意味から言って、我々にとって五年という時間は大きいし、惜しい。早く短縮させねばと思う。しかし、現状の四輪に関してはまだ無理だ君たちは新しい人達だから、よく知らないだろう。ホンダの歴史を調べてみろ。五万円の借金もできなかったところから現在までやってきた。君たちは二輪が世界一になって入社したから、簡単に世界一という言葉が出るんだ。先輩のことを考える必要がある。世界一というものは造って、すぐ出るものではない。他メーカーの歴史を見てもそうだ。ホンダが四輪を造ったからすぐ輸出だ、世界一にと言ったら大間違いだ。今のホンダの連中は甘えすぎていると思う。あまり功績もないのに本田技研という記章をぶらさげて、えばってはいけない。こんなことじゃ、本田技研はつぶれないという保証はない。社長の俺が保証しないんだから間違いないよ。新しい連中の生やさしい考え方がこわいよ。世界の自動車というものは、かつての二輪以上にしのぎをけずっている。そして、強豪として残ったメーカー中に太刀打ちして、我々の製品を入れなければならないことを考えなさい。人の犠牲の上に立った世界一という言葉を出すな。出すんだったら、自分がほんとうに苦労した暁に出しなさい。風向きが悪いぞ、きょうは(笑)。これは新しい奴らばかりに言っているんじゃない。ホンダの今日あるも先輩の努力、これが一番のけじめだと思うんですよ。

(後略)

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