モータースポーツ > ダカールラリー > ダカールラリー2014 開幕直前座談会 2年目の飛躍に向けて不可欠な3つのピース > 第2章 ピース3 スタッフの成長
多聞 ここまでうかがった勝利に必要なこととして、選手層の厚さとゼロからマシンを開発すること、仮にあと一つ、勝利のために必要なものを挙げるとするならば、山崎代表はなんだとお考えですか?
山崎 3つ目を挙げるとすれば、いいスタッフですね。
三上 つまりチームワークだね。「優勝しよう」、「ライダーに1位を獲得させよう」という一体感がチームにあることが大切なんだ。
山崎 「今年はどんなコンセプトでチームを作ったのか」と問われれば、私は「勝つためのチーム作りをした」と答えます。コンセプトが明確だからこそ、しっかりした組織となった。組織という入れものがしっかりしているので、絶対勝利というコンセプトを実現するために、どんなスタッフが必要になるかということを考えることができた。例えば「マネージャーは、こういう能力が必要だから、それを備えた人物をチームに加えよう」など、チームを組み立てていくわけです。
多聞 それを山崎代表が組み立てるというわけですね。
山崎 すべてを私がやるわけではありません。私はコンセプトとチームの方向性を示し、その実現のために必要なスタッフ像を考えます。ガイドラインを構築するわけです。
三上 昨年と比べて、スタッフの顔ぶれは変わりましたか?
山崎 割合で言うと、半分ぐらいは新しいメンバー、もう半分がダカールラリー2013を経験したメンバーです。
多聞 チームは全部で何人で編成されているのですか?
山崎 ライダーを含めて33人ぐらいですね。その中には、ライダーのマネージャー的な役割の人や、もちろん(株)本田技術研究所 二輪R&Dセンター(※15)の人間もいますね。
多聞 先ほど山崎代表がおっしゃられた、いいスタッフというのはどういうことですか?
山崎 例えば、私はスタッフたちに「こうすれば上手くいくのでは?」という助言はしますが、直接あれこれ指示を出さないようにしています。スタッフたちの能力を引き出したいからです。ダカールラリーでは、私がいない現場で、各々のスタッフに判断することが求められます。私がいなくても、現場のスタッフがアイデアが出してくれることを期待しているわけです。自立的に、そして創造的に行動していくのがいいスタッフ、そんな人たちが大勢いるのが、いいチームだと考えます。
三上 ちなみにダカールラリー2013ではマシントラブルが多く、スタッフがどんどん疲労していくということがありましたよね。
山崎 ダカールラリー2013では、メカニックが毎日徹夜するほど整備をしなければ追いつかず、その結果、作戦すら立てられないような状況でした。しかし、来年はマシンスペックの向上もあり、作戦をしっかり遂行できると思います。さらに24年ぶりのワークス参戦ということで、スタッフたちもどうすればいいか分からない手探り状態の部分が多かったですが、今年は昨年の経験があります。昨年の体験でスタッフも成長していますし、それが昨年を体験していないスタッフにも、いい影響を与えています。
真剣な眼差しで山崎代表から話を聞き出そうとする多聞さん。ダカールラリーについての知識がないと言いつつも、ときに鋭い質問をぶつけていた
ダカールラリー2014の前哨戦となった、モロッコラリー2013にて。TEAM HRCのライダーとスタッフたち
チームやスタッフに関して語る山崎代表。「勝利のためになにをすべきか」を熱く語っていた
モロッコラリー2013の公式車両検査のため、集まったチームスタッフたち
(※15)二輪製品全般(競技車両含む)の開発を行うHondaの研究所。「走る喜びをかたちにする」という創業以来の思想を守りながら、お客さまに喜ばれ、魅力あふれる新しいモーターサイクルを創り出していくため、高度なテクノロジーや最新の設備を駆使して信頼性の高い製品を研究開発している。