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ホールショットのウォードを抑え、トップに立つカーマイケル |
「スタントンはフォンセカのことをプッシュしているよ。僕はただ自分自身をプッシュして優勝を目指すだけさ」
デイトナ・ビーチで行われた2003年AMAスーパークロス第10戦の開始前、ジェフ・スタントンの持つ記録に並ぶことについて尋ねられたリッキー・カーマイケル(チームHonda)はジョークを交えてこう語った。
現在、Hondaモトクロス・チームのコンサルタントを務めているスタントンは、カーマイケルの親友でもあるが、1989年から1992年にかけてデイトナ・スーパークロスで4連勝を飾った伝説のライダーだ。今日まで“デイトナ4連勝、最多勝”という名誉はスタントンひとりだけのものだったが、カーマイケルがデイトナで優勝したことによって、この記録はスタントンとカーマイケルの二人によって共有されることになった。
そのスタントンはレース後、誇らしげにこう語った。
「レース前、僕らはジョークを言い合っていたけど、リッキーが僕の記録に並ぶことを確信していたよ。来年はリッキーが僕の記録を破ることになるだろうね。デイトナで4勝するというのは凄いことなんだ。ここは一番難しいコースだから、優勝するのは大変なんだ」
今年もHondaが後援したデイトナ・スーパークロス。コースはデイトナ・インターナショナル・スピードウエイのインフィールド、ちょうとフロント・ストレートとピットの間に設けられている。ここは全16戦で競われるAMAスーパークロス・シリーズの中でも最もコースが荒れていることで有名な大会だ。
今年も例外ではなかった。特に前日、雨が降ったため、ただでさえ難しいコースはさらに荒れていた。深いわだちと粘つく泥、そして雨水に侵食されたジャンプの表面がレースの結果に影響を及ぼしていた。
そんな荒れたコースでもカーマイケルの圧倒的強さは光っていた。250ccクラスの予選ヒート・レースで2位に35秒という大差をつけて決勝レースに進んだカーマイケルは、決勝レースでも圧勝し、今季7勝目を挙げたのである。
250cc決勝レースでホールショットを決めたのは、今回もCRF450Rに乗るラリー・ウォードだった。しかし、1コーナーの出口でカーマイケルがウォードをかわし、30名のライダーで形成される集団のトップに立った。さらにトップ10の中にはCRF450Rに乗るデーモン・ハフマン、ポール・カーペンター、そしてトラビス・プレストン(アムソイル・チャパラルHonda)がつけていた。
ここのところスタートの良かったアーネスト・フォンセカ(チームHonda)は、今回はついていなかった。1周目の1コーナーでクラッシュに巻き込まれて転倒したフォンセカは、最後尾から再スタートを切ったが、2周目にウープ・セクションでわだちにはまって転倒。再びマシンを起して走り始め、11位でフィニッシュした。
20周の決勝レースでカーマイケルは4位以下のライダー全員を周回遅れとし、さらに12位以下のライダーは2周遅れとした。こうしてカーマイケルは2位に入ったチャド・リード(ヤマハ)に14.501秒差をつけて圧勝し、ポイント・テーブルでもリードとのポイント差を25点と広げて独走を続けている。
Honda勢で2番手に入ったのは、どんどんCRF450Rに乗りなれてきたプレストン(4位)で、プレストンは終盤まで6位以下を走行していたが、ラスト数周で猛ダッシュをかけ、250ccレースでの自身最高結果を記録した。
プレストンの活躍について、Hondaレース・チームのチーフ・エンジニア、クリフ・ホワイトは次のように語っている。
「トラビスの走りには感銘を受けたよ。彼は凄い勢いで進歩している。マシンに乗るたびに学んでいるんだ。ポテンシャルの高いライダーで、毎回どんどん良くなっている。デイトナのコースはインドア、アウトドアを通じて一番難しくて、ライダーに挑みかけるようなコースだ。だからこそ、トラビスの4位という結果は素晴らしい」
デイトナで常に見せ場を作ってくれるマイク・ラロッコ(アムソイル・チャパラルHonda)は、今回も肩の治療のために欠場した。しかし、次戦には復帰することを望んでいる。
記録づくめだったデイトナ・スーパークロスも終わり、Hondaライダーたちは残りの6戦に向けて士気を高めている。次戦は2週間の休みを挟んで3月22日にセントルイスで行われる。
●リッキー・カーマイケル (250cc 優勝)
「今日のコースは本当にタフだった。すごく荒れていたんだ。でも、僕にとってはかえって良かったよ。たくさんのライダーを周回遅れにしたけど、一体何人を周回遅れにしたのか分からなかった。走りながら“まだ周回遅れにしていないのは誰と誰だけだ”って考えていたんだ」
●トラビス・プレストン (250cc 4位)
「今日は他のライダーが遅く感じられた。CRF450Rのアドバンテージは大きかったと思う。特にコーナーでは250ccに乗るライダーたちが苦戦しているのを尻目にパワーで勝負することができた。CRF450Rは僕のライディング・スタイルに合っているようだ。あと、僕はアウトドアのレースが好きなんだ。だから今回のコースは僕に合っていたね」
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