MENU

HONDA

検索

語り継ぎたいこと 〜チャレンジの50年〜

  1. 語り継ぎたいことトップ>
  2. 限りない夢、あふれる情熱>
  3. カブF型の販売店開拓DM戦略 / 1952

独創で『無から有を生じる』。
カブF型の販売店開拓DM戦略 / 1952

独創で『無から有を生じる』。 カブF型の販売店開拓DM戦略 / 1952

そこへ出現したのが、カブF型だった。自転車用補助エンジンの最新作である。"白いタンクに赤いエンジン"のデザインもフレッシュな、藤澤待望の大衆向け商品だった。
できるところはすべてダイキャスト化した軽量小型の2ストローク50ccエンジンのカブF型は、見るからにスマートでかわいらしく、だれにでも親しめる雰囲気を持っていた。

「藤澤さんが、いつ、この途方もない新戦略を考え付かれたのか、それは分かりません。1952年3月に試作が完成して、6月発売までの間に、じっくりアイデアを練られたんだと思います」(川島)。

未開拓の流通網は目の前にあった。見過ごしていただけである。藤澤以外のだれも、これをネットワークという目で見ることができなかった。それは『日本中どこにでもある自転車店』だったのだ。営業スタッフは、その着眼点の新鮮さに驚かされた。

「それからいよいよ、全国5万軒の自転車店にダイレクトメール(以降、DM)を送るという戦略を実行したわけです。あのDMの文章は、藤澤さんが書かれたんですが、名文でしたね。しかも非常に用意周到。第1弾、第2弾と、受け取る相手の心理を読み切った、巧みなDMでした。
『あなた方のご先祖は、日露戦争の後、勇気をもって輸入自転車を売る決心をされた。それが今日のあなたのご商売です。ところが今、お客さまはエンジンの付いたものを求めている。そのエンジンをHondaがつくりました。興味がおありなら、ご返事ください』
と、第1弾目がこんな内容です。すると3万軒以上から『関心あり!』の返事が来たのです」(川島)。

すかさず、第2弾目がいく。
『ご興味があって大変うれしい。ついては1軒1台ずつ申し込み順にお送りします。小売価格は2万5000円ですが、卸価格を1万9000円にします。代金は郵便為替でも、三菱銀行京橋支店へ振り込んでいただいても結構です』
と書かれていた。

「さらにそれと別に、銀行からも支店長名の手紙がいきました。『当行の取引先・Hondaへのご送金は三菱銀行京橋支店にお振り込みください』という。藤澤さんが、三菱銀行京橋支店に協力をお願いして、この最後の決め手を打った。さあどうなるか、期待と不安いっぱいでした」(川島)。

1口に5万軒というが、47年前は今のようなDM流通システムはなかった。宛て名ひとつにしても、すべて手書きである。筆耕屋に外注したが、それでも時間が足りず、従業員全員総掛かりで書きに書いた。何と、三菱銀行京橋支店からも、行員の方々が宛て名書きの手伝いに来てくれたという。