エンジンは一度スタートさせると、メインスイッチをOFFにするまで、ずっとガソリンを使い続けます。つまり、信号待ちなどで停車しているときには、無駄なガソリンを使うことになってしまうのです。

アイドリングストップシステムは、信号待ちなどで停車しているときに自動的にエンジンを止め、ガソリンのムダをなくすためのものです。

アイドリングストップシステムをONにしておけば、停車したときには、あなたに代わってエンジンを止め、走り出すときには、あなたに代わってエンジンをスタート。アイドリングストップシステムを使用しないときに比べてガソリンを約7%も節約できます。(ECE R40モード 社内テスト値)

※スイングバックについてはこちらをご覧ください。

「ECE R40モード」とは?

世界中で広く燃費の測定に使われている走行パターンです。 決められた時間で決められた速度まで加速、減速し、停車するというパターンを数回繰り返し、使ったガソリンの量を測定します。(国内仕様のカタログに掲載されている数値は「60km/h定地走行」です)

アイドリングストップシステムは、アイドリングストップモード切換えスイッチを”IDLING STOP”にしておくだけで信号待ちなどで停車するたびにエンジンを自動的に停止。 ※走り出すときは、スロットルグリップを回すだけで瞬時にエンジンがかかります。

※ エンジンの水温が60℃以上のときに作動します。

頻繁にエンジンをかけたり、止めたりすることになる街中でも快適に使っていただくために、Hondaは125ccクラス初※の「ACGスターター式アイドリングストップシステム」を開発し、「PCX」に搭載しました。

※Honda調べ

ACG(AC Generator:交流発電機)スターター式アイドリングストップシステムは、走行に必要な電気をつくる「ACG」を使ってエンジンを始動させます。従来のセルモーター式アイドリングストップシステムの一例のような減速ギアを持たないため、ギアがかみ合うときの音が発生しません。

コンパクトなACGスターターで、PCXのような125ccクラスのエンジンをかけられるようにするために、Hondaはエンジンにさまざまな工夫をほどこしています。

デコンプ

エンジンをかけるためには、シリンダーの中の混合気を「圧縮」しなくてはいけません。これにはとても大きな力が必要なので、排気バルブを少しの間開いて、「圧縮」に必要な力を減らすようにしています。

※デコンプ機構が作動するのはエンジン始動時のみで、エンジン運転中は作動しません。

スイングバック

エンジンをかける前に、少しだけ「逆回転」をさせています。これによってピストンが「助走」できるので、小さな力でもエンジンがかかりやすくなります。

バイクは環境負荷の少ない乗り物ですが、Hondaはその環境性能をもっと高めていくためにさまざまな取り組みを行っています。

植物から生成されるアルコール燃料を使えるようにする
植物を原料とするアルコール燃料は、燃焼させても大気中のCO2を増加させないと考えられています。このアルコール燃料の利用が進んでいるブラジルに向けて、 ガソリンでも、アルコール燃料でも走ることのできる「ミックスフューエルインジェクションシステム」を開発しました。

ガソリンではなく電気で走るバイクをつくる
電動バイク「EV-neo」は、走行時にCO2を一切排出しない「クリーン」で「静か」な優れた環境性能をもっています。今後の電動バイクの普及に向けて商品化を行いました。

これらの取り組みに加えて、既存のガソリンエンジンにも改良を加え、より少ないガソリンで、より多くの仕事ができるようにすることをめざしています。


  • 4ストローク化

    燃費が良く、排気ガスもクリーンな4ストロークエンジンを、50ccクラスも含め全車に搭載しています。

  • PGM-FI

    より効率的にガソリンを使えるPGM-FIを、原付から大型バイクまでに採用しています。

  • 低フリクション化

    エンジンが動くときに生じる「摩擦」をできるだけ少なくする技術を開発しています。

  • アイドリングストップ
    システム

    停車中に出る排気ガスを0にします。

編集後記(2011年1月)

Hondaは約10年前にACGスターターシステムと それによるアイドリングストップシステムを開発し、量産車に投入しました。

当時は50ccエンジン用のみでしたが今回はそれを進化させ、125ccまで搭載可能なシステムとして開発し、PCXに搭載しました。ACGスターターは、減速ギヤがないので静かなエンジン始動が可能であり、アイドリングストップに最適な技術です。

しかし、125ccエンジンを始動するためには50ccエンジンに比べて大きな力が必要です。そのままでは非常に大きなACGスターターを使わなくてはいけません。

減速機構を設ければACGスターターのサイズを小さくすることは可能ですが、シンプル、廉価かつ、静かで高品位な始動フィーリングのアイドリングストップシステムとするために、あえて減速機構を持たない構造で開発を進めました。

様々な工夫によりサイズを最小限に抑え、通常のエンジンサイズに収まるシンプルでコンパクトなACGスターターを開発することができました。減速機構がない分、コンベンショナルな始動システムよりもエンジン幅を短縮でき、また重量もスターターモーターが無いぶん、軽くすることが出来ました。

PCXの、静かで高品位なエンジン始動フィーリングを、ぜひ皆さんに実感して頂きたいと思っております。

テクノロジーアイドリングストップシステム