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※ 2004年の記事です

小排気量二輪車用PGM-FI(電子制御燃料噴射装置)モジュール化のポイント

Fuel Injection System for Small Engines

小排気量二輪車電子制御燃料噴射システム用
ECU統合型スロットルボディシステムモジュールの開発

概要

Hondaには2005年までに、新車のHC(炭化水素)総排出量を約1/3に削減し、さらに平均燃費を約30%向上(ともに1995年比)という目標がある。その実現に向け、世界を走る小排気量二輪車のより一層のクリーン化と燃費向上を図るべきであると考えた朝霞研究所では、125cc以下、さらに空冷といった条件にも対応する小排気量二輪車用PGM-FIの開発に取り組んだ。
排出ガスのクリーン化と燃費を向上させるためには、緻密な燃料供給による燃焼コントロールが必要不可欠になってくる。これまでの二輪車に搭載されているFI(電子制御燃料噴射装置)システムには、サイズとコストという課題があった為、そのほとんどが多気筒エンジンを搭載した大型二輪車に採用されていた。新開発のPGM-FIは、小型機種に搭載するため、従来の大型機種で蓄積したFI技術を最大限活用しながら、Hondaの小型化技術を駆使することでこの課題をクリア。小型PGM-FIを搭載する事で環境負荷の低減や走行性能及び経済性の向上など、新たな価値を提供する。

※PGM-FI(ピージーエム・エフアイ)は、本田技研工業株式会社の登録商標です。

小型PGM-FIは、究極のモジュール化によって実現

排気ガスのクリーン化と燃費向上という課題に応えるためには、空燃比を高精度に制御できる電子制御燃料噴射装置の採用が求められている。朝霞研究所の開発チームは、この要求に対し、究極のモジュール化によって、従来のキャブレター並みの大きさに機能を集約。小排気量エンジン用の電子制御システムに用いるECU統合型スロットルボディシステムを開発した。

開発のポイント

このシステムの特徴は、数種類のボアサイズをシリーズに持つスロットルボディモジュールと、一つの筐体にECU、センサー及びアイドルエアコントロールデバイスを集約したECUモジュールの2つのモジュールを組み合わせて構成していることである。このシステムにより、複雑な配線、配管をなくして小型化を達成。排気量50ccから250ccまでの単気筒エンジンに対応できるコンパクトで汎用性のあるシステムが実現した。

地球環境保全のために

92年、Hondaは全世界に向け「Honda環境宣言」を発表し、この中で「人の健康維持と地球環境の保全に積極的に関与し、その行動において先進性を維持すること」と宣言している。そして、より多くの人々にご使用いただき、より大きく地球環境の保全に寄与する・・・という考えの基に、ヨーロッパにおいて最も多く使われている125ccクラスへ、初のPGM-FI搭載機種として「パンテオン」を投入。 続いて、オートバイ需要の大きいアジアの市場へとこの技術を投入すべく、まずタイ向けにPGM-FIを搭載した「Wave125i」を発表した。

小型PGM-FI搭載モデル

PGM-FIを搭載した水冷125/150ccエンジンのスクーター「パンテオン/パンテオン150」(欧州向)
空冷・4ストローク・単気筒125ccエンジンを搭載したスタイリッシュなカブタイプの「Wave125」に、PGM-FI(電子制御燃料噴射装置)を搭載した「Wave125i」(タイ向)

Honda二輪車用PGM-FIの開発ヒストリー

Hondaは、電子制御技術を用いて、常にエンジンに求められる最適の燃料と空気を供給するFIシステムに、20年以上も前から着目。以来、環境性能の向上と走行性能の向上を高次元で調和させる技術として、二輪車への搭載を積極的に推進している。

1982年、Hondaは量産バイクでは世界初となるFI搭載車CX500TURBOを発売、CB900Fを上回る加速性能とベースとなったCX500を上回る燃費とを同時に達成。1998年には、環境性能を高めたスポーツツアラーVFR800FIを発売。PGM-FIと、新たに開発された3元触媒を搭載したこのモデルは、1999年発効の欧州排ガス法規であるEURO1に対しCO 1/30、HC+NOx 1/10を達成している。そして現在、MotoGPにおいてRC211Vが圧倒的な勝利を続けている。RC211Vは、PGM-FIによってその圧倒的なパワーをコントロールし、レーシングマシンとしての性能をいかんなく発揮。Hondaは、常に頂点領域においてFIを研究し続けている。

二輪初の電子制御FI搭載車 CX500ターボ

1970年代後半の本田技術研究所には「1980年代を迎えるにあたって、これからの新技術の先がけとなり核ともなる技術」をものにしようと、高揚した気分がみなぎっていた。その核技術とは何であるかを議論していくなかで「ターボ過給」技術が取りあげられ、適用機種としてCX500が選ばれた。Hondaが考える「ターボ過給」の使命とは、大排気量エンジンに装着していたずらに余裕馬力を増やすのではなく、小排気量エンジンで比出力を上げ、出力あたりの摩擦損失を低減して熱効率を上げること、つまり出力の向上と省エネルギーの両立をはかろうとするものであった。開発で最も力点がおかれたのは、ターボおよび燃料噴射系の制御技術である。CX500ターボは、「CB900F」以上の加速性能、およびベースモデルの「CX500」以上の燃料経済性を発揮し、1980年代に向けての革新の第一歩を踏みだすこととなる。

コンピューター制御燃料噴射

このCX500ターボの特徴のひとつが、コンピューター制御による燃料噴射の実用化である。コンピューター制御燃料噴射は、空気流量計測に当時広く使われていたエアフローメーターを使わず、基本噴射量をエンジン回転数とブースト圧で定めるブースト域とエンジン回転数とスロットル開度で定めるスロットル域の2つに分け、2つの制御用マップを使い分けて算出していた。実噴射量は、吸気圧や吸気温度による吸気密度補正に加速増量、暖機増量、始動増量、バッテリー電圧補正等を加味して決められた。またコンピューター制御燃料噴射システムには、何らかの異常が生じた場合には警告灯が異常個所を知らせる自己診断システムと、エンジンの作動を維持するためのバックアップシステムが組みこまれていた。

21世紀のレーシングマシン RC211V

ロードレース世界選手権は、最高峰クラスに位置していた500ccクラスのマシン・レギュレーションが大変革を受け、2002年に「MotoGP」へと名前を変えた。2ストローク500ccから4ストローク最大排気量が990ccマシンへ。その名も「MotoGPクラス」となった。その新レギュレーションを受けて誕生したのが、ホンダRC211Vである。ホンダはV型5気筒というこれまでとまったく違ったレイアウトのエンジンを開発。デビューイヤーの2002年は独走状態で優勝し、2003年も圧倒的な勝利を重ねている。

卓越したドライバビリティを達成したFI制御

MotoGPマシンは、たとえばF1に比較して、スロットルの全閉、並びにスロットル中間開度(パーシャル域)の使用頻度が圧倒的に高く、全開を多用するF1に比べると最大出力そのものよりも、出力のコントロール性が重要になってくる。そこで、HondaはRC211VのPGM-FIに優れたドライバビリティを与えるために、新たなテクノロジーを投入した。

ツインインジェクター

偏向マルチホール微粒化インジェクターを、スロットルバルブの下流と上流に二本配し、それぞれに低負荷域(下流)と高負荷域(上流)を分担させる事で、ドライバビリティと高出力を両立。

可変燃料圧力機構

ECUによって燃料圧力を連続的にコントロールする事で、燃料供給量の精度向上と、スロットルコントロール性向上を実現。

付着燃料制御

スロットル開閉時(全開・全閉・パーシャルキープ時以外)に、インレットポート内に付着・残留し、次の爆発サイクルで燃焼室に流入する[付着燃料量]を予測制御し、最適なA/Fを実現する事で、ドライバビリティと燃費を向上。

Honda PGM-FI搭載モデル一覧

PGM-FIは、排出ガス・クリーン化と燃費向上という目標を達成するための基幹となる技術の一つである。そして目標達成のためには、より多くのユーザーに応える幅広いカテゴリーのモデルへと、この革新的な技術を広めていくことが不可欠となってくる。Hondaは、大型ツアラーから、スーパースポーツ、そして新開発の小型PGM-FIによって、より多くの人々が乗るモデルへと、PGM-FI搭載モデルを拡大している。

ECU統合型スロットルボディシステムモジュールの開発

小排気量二輪車への搭載を可能とするために、従来のFIシステムに対し大幅なシンプル化と小型化を成し遂げることが求められた。開発チームは、スロットルボディと各種センサー類、エンジン・コントロ-ル・ユニット(ECU)を一体のモジュールにすることにより、従来のキャブレター並みの大きさに機能を集約。キャブレターモデルへの換装を実現化する、コンパクトでシンプルなシステムを完成させた。

スロットルボディとECUの一体モジュール化の狙い

従来の二輪車用FIシステムでは、一般的にECUが車体にマウントされている。また、制御情報の検知に必要なセンサー類は各々のユニットとして単独でエンジンや車体のさまざまな場所に配置されていた。そのため各種センサー類とECUを配線するために多くのワイヤーハーネスを必要としている。その結果システムが複雑となり、従来のシステムのままでは50cc~125cc単気筒などの小排気量二輪車への適用が困難であった。そこで、キャブレターシステムに替わる小型PGM-FIの実用化をめざして、吸入空気量を制御するスロットルボディと、エンジン運転状態を制御するECUモジュールを一体化。ワイヤーハーネスを不要とし、モジュ-ルの大きさは、キャブレターと同等のサイズにまで小型化することができた。

従来の二輪車用FIシステム例
小排気量二輪車用FI カットモデル

システムの概要

新開発の小型PGM-FIシステムは、スロットルボディとECUモジュ-ルを2分割の構成としている。その結果、各排気量に適したボアサイズを持つスロットルボディに取り替えることができ、汎用性、自由度が高いFIシステムを実現している。これらスロットルボディと、各種センサ-を内蔵したECUモジュ-ルは、4本のビスで結合されている。その結合面にはアイドルエアを通すための溝があり、Oリングにてシールすることでアイドルエアの通路を形成し、一体化とコンパクト化に貢献している。またECUモジュ-ル本体は、樹脂製の筐体(デバイスボディ)、ECU基盤、カバ-で構成されている。デバイスボディには各種のセンサーが内蔵され、ECU基盤はセンサの入出力端子に直接つながっている。その上からカバ-をセットし、内部を固定&防水する為にポッディング樹脂剤を充填している。

センサー類の配置

スロットルボディシステムモジュ―ルは、デバイスボディ内に3つのセンサーを配置している。

  1. 吸入空気温(Ta)センサー:吸入空気の温度を測定できるように、センサーの先端にあるセンシング部を、スロットルバルブ上流の吸気管通路内面から突き出して配置。センサー端子部はECU基盤に直接取り付けることでコンパクト化を図っている。
  2. スロットルポジションセンサー(TPS):スロットルシャフト端部に位置し、スロットル開度を直接検出している。スロットルシャフトとセンサー回転子は、作動ヒステリシスをなくすためにスプリングを介して結合されている。このTPSはデバイスボディに直接はめこまれ、外部との気密はポッティングにより確保されている。
  3. 吸入負圧(Pb)センサー:ECU基盤上にセンサー素子が直接取り付けられており、スロットルボディのスロットルバルブ下流に設けられた連通孔と繋がっている。
ECU module component
ECU基盤

小排気量二輪車用PGM-FIシステムに採用されているECU基盤は、単気筒エンジン専用に設計されている。インジェクター駆動ドライバー回路と点火系回路を各々1気筒分としたことで、小型化することができ、スロットルボディ側面への配置を可能としている。制御に使用しているCPUは、16bitCPUを採用。また電源コンデンサなどの大きな素子は、デバイスボディ内の各種センサー類が配置された隙間にレイアウト。全体の幅を従来のキャブレターと同等の寸法に押さえることに寄与している。またECU基盤は4層構造とし、各素子回路の面積縮小を図った。更に従来のECUでは大きなサイズを占めていたハーネス結合用カプラは、端子間ピッチ2.6mm・32ピンとし、従来の約1/2サイズと小型化。端子間ピッチの縮小は、カプラの防水構造を粘着ジェルのシートとすることで可能となった。将来、イモビライザーなどの機能が追加された場合でも対応可能とするために、端子数は32ピンの設定としている。

アイドルエアコントロールデバイス

小排気量二輪車用エンジンでは、大型モ-タ-サイクルに対し、より少量の吸入空気量をコントロ-ルする必要がある。また厳しい排ガス規制に対応するためには、細かな制御能力も必要である。同時に、小排気量二輪車のFIシステムに採用するには、小型化が重要である。小排気量二輪車用PGM-FIシステムは、これらの要求に対して、ステッピングモ-ター駆動によるスライドバルブ式のエアコントロ-ルバルブ(SACV)を採用。従来の直動式では、吸入負圧に対する作動トルクを確保するためφ20mmサイズのステッピングモ-ターが必要であった。このシステムではバルブをスライド構造としたことで、ステッピングモ-ターのサイズをφ14mmまで小さくすることができた。

Comparison of idle-air control valve
FIシステム制御

小排気量二輪車用PGM-FIシステムは、ECUモジュール内に配置したスロットルポジションセンサー(TPS)と吸入負圧(Pb)センサー、回転角を検出するクランクポジションセンサーの信号を元に燃料噴射量と噴射タイミング及び点火時期の制御を行っている。さらに燃料噴射量と噴射タイミング及び点火時期は、エンジン温度、吸気温度及び大気圧による補正を行い、環境条件の変化に対して最適になるよう制御している。

燃料噴射制御

燃料噴射量の制御は2種類の噴射量マップを持ち、スロットル開度とエンジン回転数により使用するマップを切り替えて制御する方法を採用している。

  1. 低負荷時には、スロットル開度の微少な変化をエンジン吸入負圧で検出し、エンジン吸入負圧とエンジン回転数により決定されるエンジン吸入負圧噴射量マップを使用する。
  2. 高負荷時には、スロットル開度とエンジン回転数により決定されるスロットル噴射量マップを使用する。
点火時期制御

点火時期は、スロットル開度とエンジン回転数により決定されるマップ制御を行い、最適な点火時期に制御している。

O2フィードバック制御

エキゾーストマフラー内に取り付けられた3元触媒の性能を効率よく利用するために、O2センサーを用いたフィードバックシステムを採用し、混合気を理論空燃比に近づくように制御している。

アイドルエアコントロールデバイス制御

アイドルエアコントロ-ルバルブは、始動、暖機、アイドルの各運転条件に合わせて吸入空気量の制御を行っている。始動時には、エンジン温度に応じてアイドルエアコントロールバルブの開度を開くことで吸入空気量を増加させ、始動性を向上させている。そしてエンジン温度の上昇に合わせてエアコントロールバルブの開度を調整し、吸入空気量を最適値に制御している。エンジン温度が設定値に達した後は、回転数フィードバック制御により、アイドル回転数を一定にするように吸入空気量を制御している。このフィードバック制御を行う事で、従来は調整が必要であったアイドル回転数について、経年変化に対するメンテナンスを不要としている。

新開発小型PGM-FIのメリット

92年、Hondaは全世界に向け「Honda環境宣言」を発表し、この中で「人の健康維持と地球環境の保全に積極的に関与し、その行動において先進性を維持すること」と宣言。PGM-FI技術は、地球環境に対する負荷低減に寄与すると共に、実走行燃費の向上、走行性能の向上などの課題を高次元で調和させることを目指している。

排出ガスのクリーン化と燃費向上の2005年目標

1999年、Hondaは新たに「排出ガス・クリーン化と燃費向上の2005年目標」を発表。この宣言の中で、Hondaは次の2点を目標として定めた。

  • 2005年までに新車のHC総排出量を95年比1/3にすること。
  • 2005年までに平均燃費を95年比30%向上すること。

HCに関しては既に2001年末に95年比24%としており目標を達成し、平均燃費は同じく2001年末に18%の向上となっており、さらに目標達成に向け取り組みを続けている。小型二輪車用PGM-FIは、排出ガス・クリーン化と燃費向上において、地球規模での環境保全に貢献する技術と言える。

排出ガス・クリーン化メリット

濃いグリーンのグラフ、はキャブレターを搭載した従来の「Wave125」(タイ向け)、明るいグリーンのグラフは、PGM-FIを搭載した「Wave125i」(タイ向け)を示している。また背景の薄いブルーのグラフは、タイマーケットにおいての2003年までの4次排出ガス規制値、濃いブルーは2004年に施行される予定の5次排出ガスの規制値を示している。PGM-FIを搭載した「Wave125i」は、COは4次規制値の約1/3、HC+NOxは1/4というクリーンなレベルを達成し、この値は2004年実施予定の5次規制と比較しても、なおその半分以下という卓越した値となっている。

燃費向上メリット

「Wave125i」は、Wave110に対して大幅な燃費の向上を果たしたWave125と、ECE40モードで同等レベルの燃費を確保。さらに実用回転域できめ細かな燃料噴射量のコントロールを行うことにより燃料の消費を抑え、タイ国内における実走行テストでは現行のWave125に対し約6%の燃費向上を果たしている。

4ストローク 50ccスクーター用PGM-FI

たくさんの人々が乗る車種にこそ、積極的に環境技術を取り入れていきたい。そうすることで、少しでも地球環境の向上に役立ちたい。燃費や排出ガスのクリーン化など、環境テクノロジーに対するHondaの基本姿勢がここにある。朝霞研究所は、125ccなど小排気量エンジンのために開発したPGM-FIの技術を進化させ、現在Hondaがクリーン4として4ストローク化をすすめている50ccスクーターへの搭載を可能とした、新たな電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)を開発した。

量産4ストローク50ccエンジン用としては世界初

燃費の向上と排出ガスのクリーン化に加え、始動性に優れた電子制御燃料噴射装置 (PGM-FI)を、量産車として世界で初めて、4ストローク50ccエンジン用に開発した。この技術により、国内で最も販売量の多い50ccクラスにおいて、さらなる低燃費化と排出ガスのクリーン化を促進していく。

技術的特徴

最大の特徴として、32bitという高速CPUを搭載することで、ACGスターター制御とPGM-FI制御を一つのECUに統合したことが上げられる。そのほか、新型インジェクターや超小型燃料ポンプ、キック始動のための新たな回路システムなど、50ccスクーターへの搭載をめざして新技術を開発。各機能部品の統合化やセンシング機能の集約化、燃料ポンプをはじめとする主要部品の新設計など、大型機種用PGM-FIに比べ、15部品から8部品へと大幅に部品点数削減。低コストで小型・軽量な電子制御燃料噴射システムを実現した。

機能統合ECU

32bit高速CPUを採用し、ACGスターター制御ECUに、PGM-FI制御ECUを統合することで、機能の集約化を図り低コスト化を実現している。従来の16bitCPUに対し、処理速度を3.5倍、記憶容量は2倍とすることで、FI制御とACGスターター制御を一つのECUに統合した。また、従来の50ccスクーター用ECUと比較し、21%の小型化も実現している。

32bit新型ECU
32bitCPUの能力
小型燃料ポンプ

50ccスクーターのフラットフロアを維持するために、フロア下に配置された扁平ガソリンタンク内に収まる超小型燃料ポンプモジュールを新開発。世界最密の10μm1次フィルターを採用することで部品点数を大幅に削減し、小型、軽量化を実現した。さらに消費電流1Aの省電力高効率化をも達成している。

新型インジェクター

50ccなどの小排気量エンジンは、その小さな排気量ゆえに燃焼のために必要となるガソリンの量が極めて少なく、さらに少量のガソリンをできるだけ効率良く燃焼させなければならない。そのための燃料噴射用インジェクターには、微少な噴射量と噴霧の微粒化の両立が求められる。従来、微粒化の為には噴射ノズルの多孔化が一般的であったが、今回開発した50CC用インジェクターは、その噴射量を当社125ccスクーターに対し1/3にするため2孔でありながら、内部流路形状を最適化することで世界最高水準の微粒化も達成した。

2孔インジェクター
最小噴射量比較
世界最高レベルの微粒化性能
アイドルエアコントロールバルブ

アイドリング時などの最小制御空気量も、当社125ccスクーターと比べ1/3にする必要がある。今回開発した50cc用エアバルブは、超小型ステップモーターで高精度のバルブを30μm単位で精密に作動させることにより、始動・暖機・アイドリング等エンジンの運転状態に応じた最適な空気量を制御することが可能となった。その結果、始動性とアイドリング性能の大幅な向上と経年変化に対するメンテナンスを不要としている。

キック始動制御

従来のキャブレター方式のエンジン始動は、セルモーターまたはキックによってピストンが動き、その負圧とメカニカルなスロットルの動作によって、燃料が吸い出されていた。しかし、電子制御燃料噴射システムではエンジンを始動する際、燃料を噴射するために電力が必要となる。そして50ccスクーターなどの小型二輪車においては、長期放置等でバッテリーが完全放電した場合でも、キックで始動できることが求められる。新開発の50ccスクーター用PGM-FIでは、従来のFIシステムにおいては困難であったキック時のわずかな電力によるエンジン始動を実現。キック時の0.2秒間に発電されるわずかな電力を、始動に必要な回路にのみ重点供給するシステムと、省電力燃料ポンプの開発により、バッテリーが上がった場合でもキックで確実なエンジン始動が可能となった。

キックによってACGが発電。その時に発生したわずかな電力を、バッテリーや灯火類への回路を遮断して、点火と燃料噴射のための回路を優先して供給する。そのための有効時間は、約0.2秒、吸入/圧縮/爆発/排気の約1行程、キックによるクランク回転の2.5回転分に相当する。

50ccスクーター用PGM-FIのメリット

新開発の50cc用PGM-FIを搭載したエンジンは、排出ガスのクリーン化に貢献し、燃料消費率を大きく向上させた。開発時のデータでは、排出ガスについてはCOとHCが国内規制の1/2レベルを達成し、燃費は定地燃費で7%、実走行モード燃費*で10%の向上を実現した。さらに、高い動力性能と、安定した始動性・アイドリング性能も実現した。
*実際の使用状況を想定した社内テストモード

朝霞研究所の開発チームは、1999年に発表した“Hondaは、2005年までに50ccスクーターのFI化”という目標に向かって開発を進め、当初の目標よりも1年以上も早く、その夢を実現させることができた。さらにこの技術は、Hondaが全世界で発売するすべての2輪車にPGM-FIを搭載することを可能とするものである。そしてHondaは、「2007年度までに、国内で発売するすべてのスクーターにPGM-FIを採用」、「2010年末全世界で大半の機種にPGM-FIを搭載」という新たに目標を設定。世界中で大勢の人々に愛されているHondaのモーターサイクル。Hondaは、環境技術を磨くことで、地球規模の環境向上に役立っていきたいと考えている。