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自分でもほしいクルマに仕上がりました!

“軽”を超えるクルマをつくるんだ! だから、妥協は許されない…。 N-ONEのエクステリアライトをつくる現場でも、こだわるデザイナーとエンジニアが奮闘しました。 文 / 生方 聡 (モータージャーナリスト)

エンジニア・トーク マンガ版

“軽”を超える

——N-ONEは、親しみやすい表情のフロントマスクが心にしみるHondaの軽自動車。エクステリア担当のデザイナーとしてこだわったのは、やはりヘッドライトですか?

フロントマスクでは、ヘッドライトとグリルですね。エクステリアデザインでは、この部分が“効かせどころ”。デザインの印象は、フロントマスクでかなり変わりますからね」。

——いままでの軽自動車とは、印象が大きく違いますね!

「N-ONEは、走りでも安全でも、あらゆる点で軽を超えようという気概でつくったクルマです。だから、エクステリアデザインも、軽のイメージを超えることが目標でした。それだけに、エクステリアライトも、これまでの軽の概念にとらわれないくらい、質感が高くて、それでいて親しみが感じられるデザインを目指したんです」。

——ヘッドライトを“丸目”にしたのも、そんな理由から?

「もっと人に近く、親しみのあるクルマをつくりたい。そのために、“丸目”を選びました。逆にテールランプは四角にしました。どちらもわかりやすいモチーフでしょう?」

——確かにわかりやすい! でも、前も後ろも丸のほうがもっとわかりやすかったのでは?

「それだと、男性には可愛すぎる(笑)。N-ONEは男性にも乗ってほしいクルマなので、テールランプは丸ではなく、カドの取れた四角で、張りのあるデザインにしました。イメージは“純粋無垢な宝石”です。

——どうりでしっとりとした、上質な印象を受けるわけですね!

「純粋無垢な宝石のような透明感や光沢感、そして厚みが、うまく表現できたと思うんです」。

——可愛すぎず、でも、尖りすぎないオトナのデザイン…。そのバランスが絶妙ですね。

「しかも、見てもらえばわかるように、ライトそのものが、かなり手の込んだデザインになっています。たとえば、いわゆるマルチリフレクタータイプではなく2灯式プロジェクタータイプを採用したり、ポジションランプを丸く光らせたり。N-ONEのユーザーとしては、ダウンサイザーや年配の方も想定していますので、そんな本物を知っている人にも納得のデザインにしようってね」。

——これなら、私にも似合いそう(笑) ところで、プロジェクターランプの凸レンズのまわりにメッキのリングがありますが、何カ所か穴が開いてますよね。これは?

「HIDタイプ専用のデザインですが、ロービーム/ハイビームを点けると、この窓が光るんです」。

——なかなかニクい演出!

「HIDはお客さまがエクストラを払って手に入れるものです。それだけに、何かしらの付加価値を提案したかった。でも、新たな光源を加えるのではなく、いままで使われていなかった光を利用したのがミソ!」

——座布団1枚、いや2枚(笑)

「しかも、単純に穴を開けているわけではないんですよ。窓の個数とか、窓の位置とか角度とか、いろいろとシミュレーションして、どの位置にすれば一番きれいに光らせられるかを確認して、最終的なデザインを調整していったんです」。

——その苦労が、この美しい輝きへと実を結んだわけですね!

サイズのせめぎあいはコンマ1ミリ単位!?

——ヘッドライトをデザインするうえで、とくにこだわった点は?

「大きさと位置ですね。丸目のヘッドライトは、あまり大きくすると、子供が好むキャラクターみたいに可愛くなってしまいます。なので、ある程度の大きさに抑えたいと考えていました。この大きさで、ハイビーム、ロービーム、ターンランプ、ポジションランプと、すべての要素が入っているヘッドライトは他にないのでは?」

——いわれてみると、そうかもしれませんね。設計するエンジニアは、さぞ大変だったでしょうね?

「はじめてデザインを見たとき、小さすぎる、この大きさでは全部の要素を入れるのは無理!と思いました。これじゃあターンランプは入りきらないし、配光を考えたらもう少し外径を大きくしてほしいとデザイナーに伝えたんです」。

——それで、デザイナーは何と?

「大きくしちゃダメ、といいました(笑) フロントをデザインするにあたっては、原寸大で見られるモニターにデザインを映し出して、1mm、最後はコンマ5mm単位でライトの位置や大きさを決めたんです。フロントグリルの中にヘッドライトを配置するデザインなので、サイズを大きくしたら、そもそもそのコンセプトが成り立たなくなりますからね」。

——そして、いつものようにデザイナーとエンジニアのバトルが始まるわけですね(笑) エンジニアの反撃は?

「ヘッドライトを縦に割った図面に、各部の寸法を書き出して、デザイナーと膝を突きあわせて調整しました。ここはあとコンマ1mm余裕があるとか、この部分はこちらで何とかするとか。その結果、なんとかいまのサイズに収まったのです」。

——それはなによりですね。外から見える部分も小さいですが、奥行きも短いんですね。

「実は、ヘッドライトの裏側にはリレーボックスがあったり、下にはウォッシャータンクがあったりと、設計するうえでの制約がたくさんありました。ヘッドライトにとってはまさに四面楚歌(笑) とくに裏側は、蓋を開けてバルブ交換できないと困ります。バルブを前にずらしてほしかったんですが…」。

——デザイナーは“うん”というはずがない(笑)

「バルブの位置を前に出すと、プロジェクターユニットが前に出すぎて、“出目金”みたいになってしまいます。それじゃあイメージと違ってしまいます。デザイナーとしては譲れないところでした」。

——困ったエンジニアはどうしたんですか?

「デザイナーに何度もスケッチを描き直してもらいましたが、最終的には裏蓋を専用設計にしました。ふつうは他の機種のものを流用するのですが、このクルマは特別だ、デザインを守るんだということでまわりを説得したんです」。

——デザイナーにとっては、なんとも頼もしいエンジニアですね!