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●耐久レースとスポーツカー【後篇】 by ポール・フレール(Paul Frere)

それでも王者Hondaにとっては不本意な結果で、捲土重来を期したHondaは、その翌年の1995年にGT1とGT2の両クラスにNSXで再度エントリーした。GT1クラスのマシンは、前年の経験を踏まえ、1994年型NSXを大幅にモディファイ、重量配分の改善を狙って大胆にもV6エンジンを縦置きに、ギアボックスを横置きにするという奇抜なアイデアに併せ、ドライブシャフトのトラブルを避けるためにパワーユニットをモノコックボディに直止めするリジットマウント方式を採用した。
しかしこれらの離れ業も効を奏さず、GT1クラスでは2台とも無念のリタイアとなった。そんなHondaのプライドを護ったのが、GT2クラスに前年度の改良型マシンで参戦したチーム国光だった。様々なハンデと不運を跳ね返して善戦、見事GT2クラス優勝を果したのである。
モータースポーツにおけるHondaの国際的なイメージは、その多くの華々しく輝かしい記録とともに、スプリント・レースの雄としてつとに有名だ。だが、国内外の耐久レースでも様々なかたちで長年戦ってきており、スプリント・レースに劣らない成績を誇っているという事実は余り知られていない。
たとえば、私は母国ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催される伝統の24時間レースに深く関わっており、関係者の一員として毎年欠かさずレースに足を運んでいるが、毎年、毎年、参加してくる数多くのHonda製レーシング・マシンたちを見るのが私の楽しみのひとつとなっている。
シビックTYPE RやインテグラTYPE Rベースのマシンが圧倒的に多いのだが、その多くはプライベート・エントリーだ。
そばで見ていても彼らは実に熱心で楽しそうだし、たとえ言葉を交わさなくともHonda車の耐久性の高さに全幅の信頼をおいているのがひしひしと伝わってくる。そのことは結果にも現れていて、私が知る限りでも、Hondaチームは「King’s Cup」と呼ばれる、上位入賞を果したグループの健闘を称えて贈られる賞を毎年のように獲得している。
そしてもうひとつ、特筆に価する耐久レースがあるとすれば、ニュルブルクリンク24時間レースという、非常に過酷な耐久レース・イベントであろう。フランクフルトから南西に約1時間半、丘陵地帯にあるニュルブルクリンク・サーキットは、レース史に名を残すサーキットとして、そして世界の名だたる高性能車の開発テストコースとしても、全世界の自動車ファンに知られている。私も開発にかかわったNSXとS2000を始めとして、多くのHonda車の開発に使われたことでも有名だ。
この長い歴史と伝統を持つニュルブルクリンク24時間レースは、現在のF1グランプリで使用されている新サーキットと、旧サーキットを併せた全長約27kmのロングコースで争われる。
コースはアップダウンが激しい上に、ブラインドコーナーの連続で、ドライバーは絶えず緊張を強いられる。クラスが細かく分かれていて参加しやすいこともあって、毎年300台近いクルマがエントリーするこのタフで激しく難しいレースにも、多くのHonda車が出場している。特に2000年に初めてエントリーしたS2000が、2004年まで総合でも常に上位に入賞し、毎年クラス優勝を獲得していることは注目に値する。むろん、S2000にとどまらず、毎年、シビックTYPE R、インテグラTYPE R、アコードTYPE Rやノーマルのシビックまで10台以上ものHonda車が出場し、勇猛果敢に戦い、何度もクラス優勝を飾っている。2004年にはスペシャルなNSX-Rも2台エントリーし、Hondaファンを大いに喜ばせた。
一Hondaファンの私としては、ぜひともHondaにル・マン24時間耐久レースに戻ってきて、耐久レースをもっと面白くしてもらいたいと思っている。GTクラスでもいいし、プロトタイプ(ハイブリッド車での参加という手もある)でもいい。そしてその名だたるスピリットとパワーと技術力を、改めて天下に示してほしいと切に願う。(終り)

Paul Frere (ポール・フレール)
“世界でもっとも尊敬され、信頼されている自動車ジャーナリスト”。それがポール・フレール氏を語るにふさわしいプロフィールである。それと同時に自動車ジャーナリストの草分け的存在でもある。
フェラーリ・テスタロッサを駆りル・マン24時間レースに優勝し、F1でも好成績をあげた偉大なるドライバーであったことは有名。その経験にもとづく高いスキルと鋭い洞察力、そして尽きることのない好奇心、素晴らしい人間性をあわせ持つ氏の評論は、わかりやすく奥深い。Honda CR-X 1.6 SiRを日常の足として使う。Hondaの走りに対する情熱を高く評価している。
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