スタイリッシュなスポーツクーペだって、環境に優しいクルマになれる。
これは言うまでもなく、IMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)ハイブリッドシステムを備えたCR-Zを通してHondaが発信しているメッセージだ。
この新型クーペは潜在的に高い動力性能の持ち主であることを強調するため、Hondaはチューニングカー・コミュニティの中心地、ラスベガスのSEMAショーにずばりと切り込んできた。
ここが、ホットロッドから始まりスーパーカーやチューンドカーにいたるまで、ありとあらゆるパワフルなクルマのメッカになってもう何十年も経つ。ラスベガス・コンベンション・センターのホールをいくつも使った、何万という人が訪れる非常に大きなショーである。アメリカの50州に加えて、海外からも多くの出展者が集まる。代表的なブランドを見逃さないように注意しながら、ブースが軒を連ねる広い通路を歩くだけで一苦労だ。
そのSEMAショーを長らく支えてきたHondaが、CR-Zを大挙引き連れて今年カムバックした。内訳はHonda自身の展示車が4台、外部のグループが手を入れたクルマが8台。ここでは特に興味深い9台を紹介しよう。
もっともクールだったのは、ホンダノースアメリカ傘下のホンダ・パフォーマンス・デベロプメントが展示した2台。CR-ZハイブリッドRコンセプトとCR-Zレーサーと名づけられた両車は、同じドライブトレインを共用する。エンジンはターボチャージャーで過給され、IMAハイブリッドシステムもグレードアップされて200hp/175lb-ft(約237Nm)のパワー・トルクを発揮。あわせて強化クラッチとLSDが備わる。当然ながら、向上した動力性能に見合うように、ブレーキ径は大きくなり、サスペンションは固められて車高が低くなっている。なお、ホンダ・パフォーマンス・デベロプメントはこの2台のドライブトレインに使われたパーツを市販する予定だが、排ガス規制との兼ね合いからレース車両専用となる。
このドライブトレインはすでに2台のレーシング仕様CR-Zに装着されており、毎年12月、北カリフォルニアのサンダーヒル・サーキットで催される、過酷なことで有名なサンダーヒル25時間耐久レースに参戦する予定だ。写真からもわかるように、レース仕様車は内装をすっかり取り除かれて軽量化されるとともに、レース用セーフティパーツが組み込まれている。
その外観からも2台が共用する部分がわかる。
どちらもホイールに食い込むように低く構えている。そのホイールはリアウィングともどもまったく同一だ。CR-Zレーサーがレースカーらしいシンプルな成り立ちなのに対して、CR-ZハイブリッドRコンセプトは、見る人が「ワオッ!」と叫ぶようなスパイスが加わっている。専用ダッシュボード、ボンネット上のエアスクープ、ダクトをビルトインしたサイドシル、ツインエグゾーストのリアなど、とても魅力的だ。しかし残念なことにボディキットを市販する予定は今のところない。
アフターマーケット組のなかでは、ビジモート・エンジニアリングがCR-Zのエンジンに狙いを定め、同じ1.5Lから実に533hpを引き出している。ヘッドをモディファイし、オリジナルのバルブトレイン、コンロッド、カムを組み入れた。とりわけ特製のピストンとバルブまで製作し、さらにターボネティックスのビレット・ターボとインタークーラーを追加した。ビジモートによれば、「ドライバビリティ、信頼性、エコフレンドリーなキャラクターはオリジナルエンジンのまま」だという。このクルマ、あなたもぜひ自分で運転して、それが本当なのか知りたいでしょう?
サスペンションはプログレスの車高調整式、18インチホイールに225/40-18のファルケンを履く。もちろんブレーキは大径化されているが、それでも足りない場合に備えてテールにパラシュートが備わる。
車内には6点支持のロールケージと、レース用シートおよびベルトが備わる。すべてビジモートによるパッケージで、ボディ表面はラミネート加工が施されている。
DSOアイウェアは、もともとアクティブスポーツの愛好家向けのサングラスで有名になったメーカーだ。ヴィクセン、ノーティー、フラートといった商品名のサングラスは、ビキニ姿のモデルがかけて登場することが多い。
DSOのオーナー、クリス・マンガムは速いクルマ、ボート、トラックにも関心のある人物、その彼が作ったCR-Zがとても趣味よく仕上がっているのは興味深い。2トーン塗装には、ブラックとカーボンファイバーのアクセントが入る。HKSのアジャスタブル・サスペンションにより車高が低められたボディを支えるのは、アクシスの美しいエヴォルヴ・ホイールとコンチネンタルタイア。メッシュグリルはT-REX、通風ベントがふたつ開いたCFRP製ボンネットはセイボンの製品だ。
インテリアはカツキィンのミッドナイト・タスカニー・レザーで張り替えてある。超高出力のロックフォード・フォスゲート・サウンド/ナビシステムは、CR-Zのウィンドーガラスを粉々にしてしまいそうだ。
ドライブトレインは基本的にオリジナルのままで、HKSのレーシング・サクション・リローデド・インテークと、ステンレス製エグゾーストに換えた程度。ただし万一に備えて、エスコートのパスポート・レーダー&レーザー探知システムを備えている。アメリカのほとんどの州で、これはいまだに合法なのだ。
『私たちの惑星を救うことがこんなに楽しいなんて、だれが知っていただろう?』――CR-Zをベースにアイバッハ・スプリングが掲げたテーマだ。往復で160kmある毎日の通勤に使えて、しかも月に2、3回サーキットを走れるスピードと頑丈な造りを持ったクルマ、これがターゲットだった。どうやらアイバッハのスタッフも、ショーが終わったらこのCR-Zをそういうふうに使うつもりらしい。
当然ながら彼らが最初に求めたのはサスペンションチューニング。アイバッハのプロ・ストリート-S車高調整ユニットを採用し、カスタムメードのアンチロールバーを追加した。エンジンはK&Nのインテークと、マグナフローの排気系に換えた程度のライトチューンだ。フロントスポイラー、リアディフューザー、サイドスカートなどボディの後付けパーツはC-ウェスト製、リアスポイラーは無限を使っている。ホイールはワークのエモーション、これにトーヨーのタイアを組み合わせる。車内にはスパルコのバケットシート、ベルト、ステアリングホイールが備わる。
ニール・ジンがモディファイしたクルマは、フォードとシボレーのブースを始めとして会場のいたるところに展示されていた。そのジンはウォーレン・シム-キューが主宰するフォーチュン・モータースポーツと手を組み、フォーチュン・サムライ・ゴールドCR-Zを製作した。
このクルマもエンジンは軽くチューンしただけだが、エア・リフトのフルデジタル・エア・サスペンションを備えている。さらにADV.1のホイールとファルケン・タイアの組み合わせで滑らかな走りを実現した。ボディのペイントはデュポンのサムライ・ゴールドを使う一方、ボンネットとルーフはラップティーヴォのフィルムでコーティングしている。ジール・ファンクションのバケットシートはオレンジの布張り、ジーン・ジンのクロスステッチがアクセントになっている。リアに回ると、追加のクロスメンバーと、イメージ・ダイナミクスのサウンドシステム用サブウーファーがよく見える。
ケーニッヒ・ホイールは、自作したCR-Zのエコフレンドリーなキャラクターを前面に出したいと考え、ボディカラーをグリーンにした。ウェポン-Rが供給したパーツでエンジンに軽く手を入れてある。もちろんホイールはケーニッヒ、ニュートンのタイアと組み合わされる。エコなライフスタイルを提唱するクルマなので、スーリーのルーフキャリアにはBMXとサーフボードが載せられている。ああ、それからテールにあるのはパラシュートではなく、キッカーのオーディオ用スピーカーである。
ラップティーヴォ・タイプ-Fのペイントワーク、これはクールでしょう? ただし塗装ではなく、マットブラックとカーボンパターンのフィルムを張ったもので、一部をグロスブラックに塗ってアクセントにしている。作ったのはカーケア製品で有名なマグアイアーズ。つや消しブラックのボディとオレンジのボルクレーシングG2ホイールのコントラストが鮮やかだ。ボディの追加パーツはHondaとランドー/トレーシー・スポーツ製、赤のスポーツバケットシートはレカロ。
エンジンは、HKSが試作したスーパーチャージャーでチューンされている。テインの車高調整式サスペンションで車高を低め、ブレーキはブレンボに換装した。
展示されたCR-Zのなかでもっとも実用的なのは、『Honda・チューング・マガジン』が出展した1台だろう。JDPエンジニアリングがCFRPパーツを供給し、サスペンションはテインのモノフレックス車高調整式を採用する。シートはARKデザイン製。
SEMAショーの展示車が証明してくれた。CR-Zは、買い手によっては白いキャンバスなのだ。創造性を発揮する恰好の素材であり、「ワオッ!」なクルマなのである。
以前、CR-Zがハイブリッドでしか提供されず、若いドライバーがモディファイを加えて楽しめないのではないかという私の疑問に対し、Hondaの経営陣が「SEMAショーをお待ちください」と答えた意味を確認できた取材だった。
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