Hondaのスポーツ・クラシックカーとして絶大な人気を誇るS800は日本に留まらず、欧州でも熱狂的なファンが多数存在している。その中で、S800を駆って雪上ラリーに挑んだフランス人がいた。シャンパーニュ地方に住む56歳のジャン=フランソワ・タバラさんがその人である。
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右がオーナーでドライバーのジャン=フランソワ・タバラさん。左はナビゲーターを務められた方。出走前の記念写真。 |
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イベントの正式名称は「ラリー・ネージュ・エ・グラス」、つまり「雪と氷のラリー」。モンテカルロ・ラリーに次ぐ冬の山岳ラリーとして、フランスでは古くから知られている。第1回目の開催は1953年で、某自動車クラブによって設立されたものの、1974年のオイルショックの影響で、ラリーは一度中止に追い込まれてしまった。それから数年後、グルノーブル地方の自動車団体の熱意によって、それまでのワークス・ドライバーが参戦するスピード競技から、クラシックカー対象のラリーに形を変えて復活したのである。
そして、第32回を迎えた2005年の「雪と氷のラリー」は2月22日〜25日に開催された。1970〜80年代にル・マン24時間レースで4度優勝しているアンリ・ペスカローロなどの高名なドライバーも参加し、このイベントに華を添えている。エントリー数は72台に及び、ヨーロピアンカーが大半を占める中で、日本車はジャン=フランソワさんのHonda
S800クーペ1台だけだった。
「きっと珍しいだろうし、ギャラリーも喜んでくれるだろうと思ってね」
彼の読みは大当たりした。S800をサーキットで走らせる人はいても、雪山を疾駆させるエンスージャストは欧州でも非常に稀である。
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| 参加車のなかで、日本車はこのS800一台のみ。Hondaのスピリットは、欧州の雪の山岳地帯でもひそかながら熱く存在しているのです。 |
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「S800はスペアパーツを探すのが大変なんです。タイヤを見つけるのも至難の業ですからね。でも、その苦労さえ除けば何も言うことはありません。今回S800で雪の上を走るのは初めての経験でしたが、不安は皆無でした。S800は車体が小さいですが、どこでもスイスイ走ってくれますし、まるで大きなカートを操っているような感覚なんです」
現行のラリーはスピードではなく、常に定速で走行するという正確さが求められる競技になっている。しかし、時速40〜50kmのスピードであっても雪と氷という路面の影響でクルマがコースアウトし、破損させてしまう参加者も実際にいるのだ。そんなリスクを承知で、ジャン=フランソワさんがこのラリーに参戦を決意したのは、自身のドライビングの腕とS800との信頼関係があったからこそだった。
(後篇に続く)
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