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●誕生日に家族から贈られたS800から始まった「S」のレストアガレージライフ(後篇)
誕生日に家族から贈られたS800から始まった「S」のレストアガレージライフ(後篇)
現在フランスには3700台ほどのS600やS800が存在しているらしい。だが、多くのオーナーの願いに反して、実際にエンジンを轟かせて疾駆可能な「S」はその半数以下だという。問題はパーツ類の入手がフランスでは非常に困難ということだ。
「部品を入手することは年々厳しくなっているよ。まず、フランスのHondaの販売店に注文して、それから欧州各地に発注が行くんだ。殆どのパーツはベルギーから来る。時にドイツやイタリアなどからも来るけど、時間も掛かるし、それが最大の悩みなんだ。同時代のフェラーリやマセラティと比較すると、値段は10分の1だけど、レストアやメンテナンスするのは10倍も大変だよ」
そう言ってベルナールさんは大笑い。それがかえって、「S」への思い入れの強さを際立たせていた。
 

入手が難しい「S」のパーツストック。フランス国内にある「S」を扱うガレージへは、ベルナールさんのガレージから発送されている。
「S800を手に入れてから10年経っても未だにガレージに入ったままのクルマもあるけれど、僕のお得意さんの中にはS800を日常の足として毎日走らせている人が3〜4人もいるんだ。この赤いS800は販売するための1台だけど、真夏なんかは毎日少し走らせてあげた方が良いんだよ」
そこで、ガレージの周囲をオープントップのS800で同乗走行させてもらうことにした。ヴァカンス・シーズンのため、普段より人口もクルマも3分の1に激減しているパリ近郊を、軽快にエンジンを轟かせながら、ベルナールさんが日課にしているというS800との散歩を一緒に楽しませてもらった。
 
ベルナールさんは誕生日プレゼントで貰ったS800の他に、もう1台のクーペと黄色のオープンを所有している。その他、ガレージの前に悠々と威厳を放つNSXが駐車していたが、これもベルナールさんの愛車とのことだ。さらに、貴重なN600や初代シビック、アコードなど計8台のクルマを所有しているらしく、いずれもHonda車ばかりだ。

オープントップの真っ赤なS800でパリ近郊をドライブ。軽快なエンジン音が、人もクルマも少ないパリの町で気持ちよく響いた。
そんな、ベルナールさんのコレクションと同様に、エボリューション・オートではHonda車全般を扱っている。店を手掛けるのはベルナールさん1人だけではなく、息子のローランさんも右腕として働いている。ローランさんに握手を求めると、習慣なのだろう、父親と同じように手の甲を差し出した。
 
父親への誕生日プレゼントの話について聞いてみると、
「何か特別な贈り物をしたくてね。予算とも折り合いがついて、それでS800にしたんだ。クルマは相当痛んでいたけれど、どうせ彼は自分でレストアできるしね(笑)」
世の父親なら誰しもが羨ましがるような、微笑ましくも父の仕事への尊敬を感じるエピソードだ。さらにローランさんは続けた。

白いクーペと黄色が鮮やかなオープントップのS800もベルナールさんの大切なコレクションのひとつ。
「S800というクルマは確かに素晴らしいけど、僕の世代のクルマではないよ。だから、僕としてはやっぱりTYPE R やNSXといった新世代のモデルが好きなんだ。けれど、日々触っていて分かることは、スポーツカーに限っていうと、S800のエスプリ(精神)はすべてのHondaスポーツカーに引き継がれていると思う。具体例を1つ挙げれば、『小さい排気量で大きなパワーがある』ということだね」
 
ベルナールさんにはもう1人息子さんがいて、彼は経理を担当している。ローランさんは、家族で働くことに抵抗があるどころか、父の跡を継ぎたいと断言する。
「S800をプレゼントした時、まさか父がガレージまで開くとは夢にも思わなかったけれど、子供の頃から将来はメカニックとして家族と一緒に働きたかったから、願ったり、叶ったりだね(笑)」
S800のエスプリが現代のHondaスポーツカーに息づくように、エボリューション・オートのエスプリも世代を超えて受け継がれていくようだ。

(終わり)

ガレージ前にS800とともにたたずむNSX。このNSXをはじめ、HondaのスポーツカーにはS800のエスプリがしっかりと息づいている。
息子のローランさん。幼い頃からの夢が叶い、家族とともにメカニックとして毎日をHondaのクルマとともに過ごしている。
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