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| ●ヨーロッパ1000kmの旅 NSXで過ごした至福の時間(後篇) By ポール・フレール | |||||
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| ベルギーから戻った数日後、私はNSXに乗り、イタリアをめざした。100年来の猛暑に見舞われた2003年のヨーロッパの夏はすでに始まっていた。目的地はポルシェのターボ・カブリオレの試乗会が行われるグロセットという街の北にある小さなカントリー・ホテルである。 私はこのイタリア旅行を楽しみにしていた。というのは、イタリアは比較的規制がゆるく、高速走行を楽しめるからである。つまりNSXのようなクルマでの旅にはもってこいというわけだ。むろん、そうだといって、無謀な運転をしたり、過剰なスピードで走るというわけではなく、節度ある大人としての高速ツーリングを楽しむという意味である。イタリアの高速道路、アウトストラーダのスピード・リミットは時速130kmで、その点ではフランスのオートルートと同じだが、イタリアではみな130〜150km程度で巡航しているようにみえる。したがって私もそのスピードレンジでNSXとアウトストラーダを楽しんだ。 余談だが、イタリア政府は以前から片側三車線以上ある高速道路ではスピードリミットを時速150kmまでに上げる法改正案を再三にわたって国会に提出しているが、この種の法案が通った試しはない。しかしイタリア国民の多くはそのことを既成の事実であると思い込んでいるという。
このアウトストラーダは決してまっすぐな道とは言いがたいが、それでもイタリア最大の港町ジェノアの周辺をのぞけば、平均走行速度は高い。ジェノアを過ぎると世界的に有名で、絵のように美しいリゾート地、ラパッロ、サンタ・マルゲリータ、そしてポルトフィーノと高速道路は続き、軍港ラ・スペツィア、大理石の採石所として有名なカラーラ(このときはあまりの暑さで山全体が雪に覆われたように靄がかかっていた!)を通過し、最初の目的地リヴォルノに到着した。リヴォルノに到着する直前の100kmはトンネルもなく、道路もすいていたので、爽快なNSXのドライブを楽しんだ。NSXは過酷な条件下でもすこぶる快調。水温計の針はピクリともせずに正常値をさしていた。 リヴォルノを通り抜けて内陸部にクルマを向け、典型的なワインディングの続くトスカーナのマウンテン・ロードに入り、美しい歴史の街ヴォルテッラ、22の塔の街として有名な中世の都市サン・ジミニアーノを通ってトスカーナの宝石と呼ばれるシエナ方面に向かう。 シエナは街の中心に位置する “ピアッツァ・デル・パリオ”(パリオの広場)で毎年行われる中世に始まった勇壮な競馬“パリオ”でも有名である。残念なことに今回はシエナを再訪する余裕がなく、素通りして最終目的地のサン・ロッコへと急いだ。
今回のこのNSXとの旅は実に楽しいものであった。100年来という猛暑に見舞われたヨーロッパだったが、NSXの持つファースト・クラスのハンドリングと動力性能をエンジョイしつつ快適な旅ができたのも、熱波をものともしないNSXの優秀なエアコンのおかげだった。 数年前に乗った3リッター・モデルと比べて、改良されてよかったと感じたのは、大きいサイズのホイールと、高い動力性能に見合った強力なブレーキが与えられたことだ。いうまでもなくエンジンもさらに改良されてパワフルになったし、6速のギアボックスともうまくマッチしている。 今回の最大の驚きはなんといってもNSXの優秀な燃費である。モナコに戻ってガソリンタンクを満タンにしたあとで計算してみると、猛暑の中で常時エアコンをオンにして可能な限り鋭い加速を楽しみながら走り続けたにもかかわらず、平均燃費はなんとリッター当り9.4km!何もいうことがないほど素晴らしい。 数ヵ月後、私は東京モーターショーに出かけ、Hondaブースを訪れた。私の目はたちまち中央のスタンドに展示されたショーカー、HSCに釘付けになった。私にはHSCこそ21世紀のNSX、NSXの正統な後継車に思えた。私は1990年のデビュー当時、並み居るライバルたちよりも数段先進的だったNSXのように、Hondaのエンジニア諸君が近い将来このショーカーを世界のトップ・スポーツカーに仕上げてくれるに違いないと信じてやまない。 (終わり) |
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