|
エレクトロニクス時代以前の進んだテクノロジーに興味を持つルークの究極の夢は、本田宗一郎の指揮下で開発されたHonda車をすべてコレクションすること。そして現在捜し求めている最後の1台、芸術ともいえる空冷エンジンを横置きに搭載したHonda
1300を入手したときに彼のコレクションは完成する。Honda 1300はヨーロッパにはついに輸入されずに終わったので、ヨーロッパに存在する台数自体極めて少ないのだ。
 |
|
|
|
| フランスで手に入れたZ600を運んで自宅に戻る途中。 |
|
|
|
ルークの所有するクラシック・ホンダのラインアップは、N360が1台、オートマチック・トランスミッション付きモデルの1台とパーツ取り用の1台を含むN600が3台。特徴ある楕円形状のリア・ウィンドーを指して我々が「ローリングTVスクリーン」という愛称で呼んでいたZ600を2台、そしてS800クーペの合計7台である。この7台のうち、ランニング・コンディションにあるのはN360とS800だけで、あとはすべて現在レストア中ということになっている。
というのも、レストアが大好きなルークは、多くの部分は自分自身で手がけたいため、どうしてもゆっくりのペースとなってしまう。時には仲のいい友人に手伝ってもらうこともあるが、自分でレストアするのが何よりの楽しみなのだから仕方がない。
|
 |
|
|
|
2001年、パーツ取りのために裸にされたZ600。 |
|
|
したがって忙しい仕事の合間での修理作業ではできることも限られる。シートの中身を交換する作業や前述のエンジン・リビルトといったスペシャリストに頼まなければならない部分以外は、こつこつと根気よくこなしながらレストアを心からエンジョイしている。そしてそんなルークの密かな自慢は、膨大なHonda車パーツのストックで、Z600かS800くらいならゼロから1台作り上げられるほどであると豪語する。
 |
|
|
|
| 宝の山。ルーク自慢のパーツ棚。 |
|
|
|
他のレストア中のクルマの中で一番完成に近いのがN600であるが、このN600にはおもしろいエピソードが秘められている。1996年のある日、雑誌に載った中古Honda車の広告を見ていたルークは、ベルギーで1台のN600が売りに出ているのを見つけ、食い入るように眺めはじめた。90年代も後半になって、N600が売りに出ること自体極めて珍しいことなのだ。すぐにそのオーナーに連絡をとって、実車を見に行ったルークは不思議な気持ちにとらわれた。そのクルマに見覚えがあるのだ。たしかにこのクルマの妙なボディー・カラーに見覚えがある。思いついてすぐにエンジンの型番とシャーシ番号を確認した彼の勘は的中した。そう、このクルマこそ1974年に彼が積載車から落ちて壊れたN600の代わりにオランダで買い求めたあのくすんだ黄色のN600そのものだったのである。1976年に手離したあと、20年という時を経て再び彼のもとへと戻ってきたのだった!なんという奇縁か、クルマを積んで帰る彼の心は幸せで満ちていた。
今年で53歳になるルーク・デ・プランスはヒストリック・ホンダに備わった優秀なテクノロジーだけに満足しているにはあまりにも若すぎるようだ。彼は最近になって、もうすぐヨーロッパに上陸してくるHondaのハイブリッド車に代表されるHondaの未来に向けた技術に関心を持ち始めたらしい。どうやらHondaはこのベルギー人Hondaエンスージャストの心を魅了してやまないようである。
(終り)

ルーク・デ・プランス(Luc
de Prince)
筆者ポール・フレール氏の義理の息子。1950年にベルギーの首都、ブリュッセルに生まれ育つ。1988年にポール・フレール氏の娘と結婚。 |
|