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ポール・フレールご自慢の愛車、Honda CR-X SiR。 |
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VTECエンジンは従来のエンジンに比べて明らかにパワフルになっていた。理想的な“イタリア式テストコース”、アレッサンドリアの近くにあるアウトストラーダ(イタリアの高速道路)の往復で私が体感した第一級の速さは、そのことを如実に物語っているといえよう。
それ以前の130馬力ツインカム・エンジンより低中速域で若干のトルク不足を感じたが、160km/hを超えてからの加速性能に優れていて、4速のままで180km/hに27.5秒、5速に入れる直前にスタートからちょうど1kmに28.9秒で到達した。この数値は長期テストCR-Xの走行距離が3000km時点で計測されたものであり、本来なら10000kmくらい走ってちゃんとエンジンがこなれてきた時に計測を行うべきで、そういう状態であればもっと良い数値が得られたであろう。
それでもCR-Xは先代モデルよりはるかに良くなっていた。ショートストロークVTECエンジンの、高回転時におけるスムーズさ(それは事実得もいわれぬほどスムーズである)は秀逸そのものである。アウトバーン(ドイツの高速道路)で6500回転を保ちながら走行する時でも何ら気遣いは要らず、スピードが190km/hほど出ていても先代モデルより1段低いギアであった。ハンドリングは、ステアリング・ホイールのリムが6センチほどワイドになったこともあって、より正確になった。個人的にはパワー・ステアリングを選ばなかったことは正解で、マニュアル・ステアリング・ホイールであってもパーキング時を除けば操作も非常に軽く、感触も良く、実に正確であった。
しかし何と言っても受け取ったその日から今日まで、私にドライブする喜びと楽しみを与え続けてくれているのは、やはりこの類稀なるエンジンだ。特にフルスロットルでレヴ・カウンターの針が5500回転を超え、VTECシステムがスポーツ・モードへと切り替わり、エンジンが雄叫びを上げつつ、まるで「フェラーリであろうがポルシェであろうが、すべてのクルマを蹴散らすようにスイスイと追い抜いていく」、かのような桃源郷へと導いてくれるからだ。(第7回に続く)
(写真提供 カーグラフィック)
ポール・フレール氏
“世界でもっとも尊敬され、信頼されている自動車ジャーナリスト”。それがポール・フレール氏を語るにふさわしいプロフィールである。それと同時に自動車ジャーナリストの草分け的存在でもある。
フェラーリでル・マン24時間レースに優勝し、F1でも好成績をあげた偉大なるドライバーであったことは有名。その経験にもとづく高いスキルと鋭い洞察力、そして尽きることのない好奇心、素晴らしい人間性をあわせ持つ氏の評論は、わかりやすく奥深い。
木澤博司
世界的なヒット作となった初代シビックの開発責任者を務めた。その後もアコードやプレリュードを手がけるなど、本田技術研究所で新車開発一筋の人生を送った。仕事も趣味もクルマと言い切る。
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