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●ポール・フレールの「Me and Honda」
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大のお気に入り、CR-X。
 


当時最新のフォーミュラ2に乗るポール・フレール。1917年生まれで、このとき65歳である。
 
 


最初と最後の周を含めて12周してベストラップは2分8秒。前週開催された鈴鹿GP予選最後尾の選手の1秒落ち。
私はクルマのグルメを気取って、一番のお気に入りを最後にとっておいた。ヨーロッパ仕様100HP(DIN)のバラード・スポーツCR-Xだ。まさしく路上の火の玉である。プラス15馬力、軽量、優れた空力特性により、同じギアレシオから最高速は5速で公称190km/hに。2.2mのショートホイールベースで、まるでおもちゃのクルマのように走りまわれる。
ただ、このクルマは驚いたことに、鈴鹿を僅か2〜3周しただけでブレーキが効かなくなってしまい、シケインを2回もやりすごした。しかも2度目はいつもよりかなり余裕をもってブレーキングしたのである。ベンチレーテッドディスク/ドラムの同じブレーキをもつ他のクルマでは問題がなかった。たしかにCR-Xの方がペースは速いが車重は軽いし、速いといっても深刻な問題をひきおこすほどの差ではない。まあこのクルマの場合、ヘアピンとシケイン以外ブレーキは大して重要ではないし、この小さなトラブルもまったく偶然によるものか、パッドの不具合によるものと信じたい。実際試乗車のほとんどは新車、あるいは500kmしか走っていない状態だったのだから。このあと自分が代々のCR-Xを長期テスト用に乗り継ぎ、最後の1台を自分のクルマにするとは夢にも思っていなかった。

シビックの全車種を乗り終えたあとで、シティ(ヨーロッパではジャズという名で売られていた)とシティ・ターボIIを試乗した。シティはそのパワフルな1200ccエンジンによって、パンダというよく似た基本設計思想のクルマと比較しても面白かった。しかし、ターボIIとなるとまったく別格の存在である。それはまさに、ひどい交通渋滞と時代遅れの交通法規に抑圧された欲求不満の日本人を解き放つ変り種だ。日本では飛ぶように売れるかもしれないが、ヨーロッパではどうだろう。しかし少なくとも一般に知れわたってしまうまでは、想像しうる最高のクォリティーカーには違いない。私が鈴鹿で乗った市販車の中では、最も速く、アンダーステアも軽いベスト・ハンドリング・カーであった。
そのために乗り心地の面での大きな譲歩もやむをえないし、動力性能(最高速度170km/h超)はそれを補ってなお余りあるものだ。ターボエンジンのレスポンスも良く、過給は1700rpmという低回転から始まり、フレキシビリティに富む。
この楽しい一日の締めくくりに、とっておきの車がガレージからあらわれた。マーチ・ホンダF2である。その前の週末に開催されたJAF鈴鹿グランプリでジェフ・リースが乗り、優勝したまさにその車で、「なるほど、このためのレーシングスーツだったのか」とその時初めて合点がいったのである。それはえもいわれぬ楽しさだったが、それはまた別の物語として後に譲ろう。 (第6回に続く)
(写真提供 カーグラフィック)


ポール・フレール氏
“世界でもっとも尊敬され、信頼されている自動車ジャーナリスト”。それがポール・フレール氏を語るにふさわしいプロフィールである。それと同時に自動車ジャーナリストの草分け的存在でもある。
フェラーリでル・マン24時間レースに優勝し、F1でも好成績をあげた偉大なるドライバーであったことは有名。その経験にもとづく高いスキルと鋭い洞察力、そして尽きることのない好奇心、素晴らしい人間性をあわせ持つ氏の評論は、わかりやすく奥深い。

木澤博司
世界的なヒット作となった初代シビックの開発責任者を務めた。その後もアコードやプレリュードを手がけるなど、本田技術研究所で新車開発一筋の人生を送った。仕事も趣味もクルマと言い切る。

中村良夫
四輪をつくりはじめたばかりの頃、無謀にもF1参戦を宣言したHondaのチャレンジを支えた人物。当時のチーム監督を務めた。さまざまな難関を乗り越え、1965年の最終戦F1メキシコGPで初優勝。リッチー・ギンサーの傍らで月桂樹を肩にかけ、優しく微笑む表情が胸に残る。
 
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