|


NSXの開発を担当したHondaの上原 繁。 |
| |


鈴鹿サーキットに集まった約300台のNSX。スポーツカーには楽しむ舞台が必要という観点から、オーナーのためのミーティングも盛んに行われている。 |
| |


2002年3月ツインリンクもてぎロード・コースにて。新型NSX-Rプロトタイプとポール・フレール氏。 |
| |


スポーツカーは走り去る姿が美しいといわれる。ピットを後にコースへと出て行く新型NSX-R。 |
|
|
その後数年間、私は幸運にも様々な機会に何度もNSXをテストするチャンスに恵まれた。当時コンサルタントをしていたヨコハマ・タイヤがデュッセルドルフにテストカーの1台としてNSXを持っていたため、私は個人的にNSXをたっぷりテストすることができた。おもにニュルブルクリンクでテストは行なわれたが、NSXはニュルブルクリンクを走るには最高のクルマであった。
もっとも素晴らしかったのは、サスペンションを含めてノーマル仕様のNSXであるにもかかわらず、正確無比でダイレクトなレスポンスのハンドリングであった。私が今までに経験した中でもベスト・ハンドリング・ロードカーであり、ニュルブルクリンクにおける私個人のベストラップを作ったのもNSXであった。
そして願ってもないチャンスが訪れたのは、1993年にあったニュルブルクリンクでのNSX-Rのプレス向け試乗会のあとだった。オッフェンバッハのHonda
R&Dが私にNSX-Rを3週間ほど自由に使わせてくれたのだ。
それは私のロード・テスターとしての人生で最も幸せな経験として記憶に残っている。NSX-Rはエアコンやラジオ、遮音材の大部分、インテリア装飾の一部、重いマットやエアバッグを剥ぎ取り、カーボンファイバー製スポーツシートを採用することによって徹底した軽量化を図り、車重を1350kgから1230kgにまで落としたスパルタンなモデルである。
その代償としてNSXは見違えるほど研ぎ澄まされた動力性能を得ることになる。軽量化と、よりスポーティにチューニングされたサスペンションは、NSXをまったく違う次元の機敏なクルマにつくりかえたのだ。特にスタンダードのNSXより軽めのフライホイールを採用したとおぼしきエンジンは、8000回転まで一気に駆け上り、いかにもスポーツカーらしいショートストローク・シフトレバーとのマッチングが絶妙で、えもいわれぬスポーツ・ドライビングを提供してくれた。
その後1999年に鈴鹿のNSX fiesta(NSXオーナーの年に一度の祭典)に招待された時に、新たに登場した“ワインディングベスト”のタイプSに乗る機会を得た。数年間乗らない間にNSXは更に進化していて、エンジン排気量が3.2リッターまでアップされパワーとトルクが増していたし、ホイールのサイズも大きくなって超扁平タイヤを履き、6速のギアボックスが備わっていた。
その時すでにデビューしてから10年近く経っていたにもかかわらず、NSXはいくつもの適切な改良を経て、動力性能、ハンドリング、機敏性、乗り心地において絶妙なバランスを備えた、相変わらず我々の心をときめかせてくれる最も望ましいスポーツカーであった。
またNSX fiestaは、私に新鮮な驚きをもたらしてくれた。会場となった鈴鹿サーキットはNSXオーナーたちの熱気で溢れ、数百台ものNSXが集まってきていたように思う。それらすべてのNSXが万全のコンディションにあったのもオーナーの愛情とNSXの優秀性を物語っていた。ポルシェ911がヨーロッパでそうであるように、NSXは完全にカルト・カーになったことを実感した。さらには、このことひとつをとってもHondaのエンジニアには、NSXをさらに進化させるべく開発を続ける大きなモーチベーションになってしかるべきだともその時感じた。 |
|