NSX開発者・RC213V-S開発者が語る Vol.2いま「スーパー」な
スポーツモデルが必要な理由

Hondaがラインアップする四輪スポーツモデルの頂点に位置する、スーパースポーツ「NSX」。そして、二輪ロードレースの最高峰「MotoGP™」参戦車両に最小限のモディファイを加えて、一般公道での走行を可能にしたロードゴーイングレーサー「RC213V-S」。
いわばHondaが送り出す「究極のスポーツモデル」といえる2台は、乗り手に何をもたらすべく生まれてきたのか。この2台から、どんな未来が開けていくのか。二輪・四輪、そのいずれにも精通した、元Hondaワークスライダー・宮城 光氏と、NSX、RC213V-S両車の開発者との語らいから解き明かしていく。

クルマの楽しさを分かち合いたい

宮城 光(以下 宮城)
「Hondaの全てを注ぎ込んだと言っても過言ではない、スーパースポーツとロードゴーイングレーサー。こういった『スーパー』なスポーツモデルをHondaが生み出してくれたことに、私は心からの拍手を送りたいと思っていますが、敢えてお伺いしましょう。いま、こういったモデルを世の中に送り出した理由は?」

NSX開発者 和田範秋(以下 和田)
「80年代後半から2000年頃のアメリカで、あるEUのメーカーが苦境に立たされていたことがあったのですが、彼らが復活を遂げるきっかけのひとつとなったのが、『レース』、そして『スーパースポーツ』だったと言われています。プロトタイプのレーシングカーでアメリカ国内のレースとル・マン24時間レースに参戦すると勝利を重ね、停滞気味のムードを一気に払拭。そんなエネルギッシュなイメージを牽引する存在としてスーパースポーツもデビューさせ、今では若々しいブランドとして、セダンやSUVが人気を博しています」

宮城
「私は現役時代にアメリカを主戦場にしていたことがあったんですが、その頃からもたしかに『ウィン・オン・サンデー セル・オン・マンデー』……日曜にレースで勝つと月曜に売れる、というような言葉もありましたね」

和田
「そうですね。このエピソードからわかるのは、『クルマに乗るなら楽しく乗りたい』『同じ乗るなら若々しさのあるメーカーのクルマ』と考えているのは、何もスポーツカーファンやレースファンだけではない、ということなのだと思います。
NSXの登場によってHonda・ACURAのイメージが良くなってクルマがたくさん売れるようになればもちろんうれしいですが、それよりも、スポーツカー好きの人だけでなく、クルマの楽しさを多くのドライバーの方と、もっと分かち合いたいというのが、NSXを送り出した大きな理由と言えますね」

宮城
「NSXしかり、イタリアやドイツのスーパースポーツもしかり、道を走っているだけでその場の空気を変えてしまう、あるいは支配してしまうようなところがありますからね。宇貫さん、RC213V-Sもまさにそんなバイクですよ」

RC213V-S開発責任者 宇貫泰志(以下 宇貫)
「うれしいですね」

宮城 光
元Hondaワークスライダーで、二輪・四輪に精通する「ドライダー」。現在はMotoGP解説者、ホンダコレクションホールの動態確認テスト、二輪専門誌のスーパーバイザーなど、幅広い分野で活躍中。
NSX 開発者 和田 範秋
様々な車種のサスペンション開発に携わったのち、初代NSXのシャシー開発に参加。その後はS2000やSUVのダイナミック性能開発を手がけ、2代目NSXでは、アメリカで開発するシャシー性能に対して、ダイナミック性能アドバイザーを務めた。

宮城
「バイクでツーリングをしていて、自分の気になるモデルに乗っているライダーがいると、さりげなく近寄って音を聞いたり、動きを確認したりするじゃないですか。RC213V-SをHondaからお借りして何日かあちこちを走り回りましたが、驚くほど誰も寄って来ないですから」

宇貫
「寄って来ないんですか(笑)」

宮城
「高速道路を走っていると、後ろから近づいてきたライダーが、追い越すでも併走するでもなく、スーッと離れていく。峠道でも、パーキングエリアでもなんだか遠巻きに眺められている。とにかくRC213V-Sは、バイク全体から放たれる雰囲気が他のどんなバイクとも徹底的に異なっているからなんだと思います。道を行くライダーが、走りながらこれを感じられる、というのは凄いことですよ」

和田
「ライダーも、全員が全員レースを見ていたり、知っていたりするわけではないですよね。それでも、妥協無く『本物』を追求した末に放たれる存在感というのは、誰にでも伝わるんでしょうね」

宇貫
「和田さんもバイク乗りなのでおわかりかもしれませんが……バイクに乗る方なら、誰もが『Hondaのバイクはあまりにも乗りやすくて面白味に欠ける』というような話題で盛り上がったことがありますよね」

RC213V-S 開発責任者 宇貫 泰志
鈴鹿8時間耐久マシン、CBR1000RRWや、MotoGP「800cc時代」の最終年2011年にトリプルタイトルを獲得したマシン、RC212Vの開発責任者を経て、RC213Vのロードゴーイングバージョン、RC213V-Sの開発責任者を務める。

「アグレッシブに生きたい」人の想いにHondaが応え続けるために

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