|
本田のオジさんはドリームやカブを作つていることはわかるが、家の親爺は何をしているかさつぱりわからない。毎日銀行へ行つて金を作つたりしているが贋金作りではあるまいか等と私の1年生の子供は思つているらしい。お蔭で毎日忙しく暮して歳をとること等は忘れている。
閑話休題……
カブ号は本年6月発売以来実に2万3千台(11月5日現在)を需要家のお手許にお渡しすることができました。2・3年前には月に200台ですから全く隔世の感があります。
アメリカの自動車は論外として、欧州では自転車の台数の半分はオートバイ(補助エンジン付自転車)となつた。この実績より一度この種のエンジンをつけた車を利用された方は再び元の姿には戻らないでしよう。
弊社ではドリーム号と普通自転車に取付けたカブ号の耐久試験をするために、新入社で免許証をとつたばかりの者に東京――浜松間を走らせております。これは技術者ですと事前に注意して故障を起さないから、初めて乗られる需要家の方と同程度の腕前の者を乗せて、然も絶対不良箇所のないようにとのネライです。
あらゆる条件の下で試す必要があるので雨の日、風の日でも出発致します。東海道の箱根、宇津ノ谷峠、日坂と山を越えて毎日300粁(片道)を走り、もう1万5千粁に達しました。技術的な問題は何れこの月報で御報告を致します。
この試験中横浜で横倒しとなり頭に裂傷を負い5針程縫つたがそのまま浜松へ急行、同夜宿泊し翌朝浜松を出発し帰京した者、篠つく雨を突き抜けて雨滴を顔に打ちつけ60粁のスピードを少しも落とさぬ者、朝5時浜松を出発、正午工場に到着するやそのまま仕事を続ける者等これ等は一例であるが全従業員の働く姿をお見せしたいものです。
何が若者にこの情熱を持たせたか、何が本田技研を今日迄発展させたか。真理と理論は最高の尊ぶべきもの、それ故にこれが探究に全身全霊を打込んだ結果以外の何ものでもないと存じます。これ等の若者達を社員としたことは如何ばかりの誇か、私は心から尊敬と感謝を捧げています。
これが又販売店や愛乗者の皆様にも奉仕することになるのがと思うと嬉しくてなりません。
吾が社はまだ若い、夢を抱いた若者が着々と夢を実現して行く姿、これこそホンダの偽らざる姿であります。皆様の御支援を期待して止みません。
(27・12 月報16号)
|