MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2004年4月号
opinion
大慈彌(おおじみ)雅弘
株式会社日本交通事故鑑識研究所 代表

1948年、大分県生まれ。71年、日本大学生産工学部機械科卒業後、財団法人日本自動車研究所入所。86年、同研究所を退所し、87年に日本交通事故鑑識研究所を設営。現在、交通事故に関する鑑定、実験、事故工学の教育等を行なっている。裁判所、検察庁よりの嘱託鑑定は350件以上


ドライブレコーダー「Witness」
交通事故の原因分析だけでなく、事故抑止効果になるドライブレコーダー

従来の見方を変える事故の再現映像
縦5cm、横15cm、重さ120g。タバコの箱の1.5倍の大きさで広角レンズの付いたカメラと言えばいいでしょうか。交通事故鑑定などを行っている(株)日本交通事故鑑識研究所と練馬タクシーが共同開発したドライブレコーダーです。「Witness(目撃者)」と名づけられた、自動車版フライトレコーダーはフロントガラスの内側に装着し、夜間や逆光時、雨天などでも鮮明な画像を記録できます。衝突や接触などの事故時だけでなく、急ブレーキや急ハンドルなど荒っぽい運転をした時にセンサーが働いて、警告音が鳴り、その前の12秒間と後の6秒間の計18秒間にわたり、カラー画像と速度、衝撃の大きさを自動的に記録します。
発案者であり、開発の中心となった同研究所代表の大慈彌雅弘さんは、長く交通事故鑑識に関わり延べ4000件を超える事故鑑定を手がけてきました。「亡くなったり、重傷を負って証言ができない被害者が、あいまいな目撃者の証言や、自己保身から自分に都合のよい嘘をつく運転者の言い分などによって、加害者に仕立てられてしまう、いわば二重の不幸にあうのはどう考えてもおかしいと思いました。それを防ぐには客観的なデータが必要なのですが、今の実況検分による事故調査の手法では限界があります。5年ほど前から飛行機のフライトレコーダーのような事故時とその前後を映像で記録したものが、クルマでも必要だと考えていました」。
ドライブレコーダーは共同開発した練馬タクシーを中心に昨年11月からこれまでに1600台のタクシーなどに装着されています。このレコーダーを付けることで、事故やヒヤリハットの原因を客観的なデータをもとに分析できることに加えて、自分の運転が再現されてしまうことで運転手が事故状況を正直に申告するようになったこと、安全運転に心がけるようになり、装着したタクシー会社では30%ほど事故が減るというケースもあったそうです。大慈彌さんは交通事故防止への効果も期待していると言います。

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