教室に足を踏み入れた子ども達は、赤いブルゾンを着た17人のボランティアスタッフに圧倒されてしまったのか、やや緊張気味の表情でした。この日は、「よろしくお願いします!」と子ども達の礼儀正しい挨拶を皮切りに、プログラムが始まりました。
まずは、工作の前に、紙芝居を見ながら地球環境について学習。私たちが生きていくために必要な「水」は、自然の循環環境によってもたらされています。雲や雨が、山に蓄えられ、やがて川を経由し海にたどりつく。それが絶えず繰り返されていることなどが伝えられました。「だから、自然を大切にしないとダメなんだよ」とスタッフが話しかけると、子ども達は、元気よく「ハイ!」と答えていました。
また、工作では、ノコギリ、トンカチ、やすり、ニッパー、ドリルなどの本格的な工具を使うため、安全に作業ができるよう、工具の取り扱いについての説明もありました。
そして、いよいよ、工作が始まります。子ども達は素材を観察し、何をつくるかをイメージしながら、思い思いに選んでいきます。
自分で選んだ丸太を希望の大きさにするには、ノコギリを使います。ノコギリがけが始まると、教室にはギコギコと大きな音が響き始めます。その音につられたのか、「僕もやりたい!」「僕も!」と、いつの間にかブースは順番待ちに。危険がないよう、ボランティアスタッフが一人ひとりに付き添って、丁寧に指導を行います。
初めて使う子どもが多く、みんな、最初はヘッピリ腰。思うように歯が動きません。しかし、次第にコツをつかんで、リズムに乗って丸太を切っていきます。ノコギリ体験をし終えた興奮さめやらぬ男の子に話を聞くと、「ノコギリは重たくて、すごく木が固くて、切りにくかったです。だけど、もう使えるようになった!」と、得意満面で話してくれました。
工作を楽しんでいるのは、男の子だけではありません。女の子だって、夢中です。
小さな木の実などのパーツを器用に飾り付けたり、赤や黄色のカラフルな毛糸でリボンをつくったり、作品をおしゃれに仕上げていました。
「門松」という作品をつくっていた女の子に話を聞くと「竹を切るところと、飾っていくところがおもしろかったです」と、少し恥ずかしそうに教えてくれました。
この女の子は、素材選びやデザインに迷うことなく、器用に作品作りを進めていました。その一生懸命に取り組む姿を見ていたボランティアスタッフは、感心しきりでした。
ノコギリがけを終えた素材は、竹ひごや、接着剤、やすりなどを使って組み立てる作業に入ります。
その中で、クルマを作ろうとして、車輪になる切株を4つ用意してきた男の子。スタッフが「車体になる素材も持ってきて」と言っています。しかし、その子はキョトン。「え? シャタイって何ですか?」の質問に、思わず苦笑のスタッフ。「あ! クルマのボディーになるところだよ。ボ、ボディーってわかるかな?」。
「子ども目線で話すって、すごく難しいんです。自分では分かりやすく話しているつもりでも、今みたいに子どもから指摘されて気が付くことも多くて(笑)。その気付きもおもしろいですね!」とスタッフ。
今日の子ども達は、いつも以上に目をキラキラさせて取り組んでいました。表情を見ただけでも、みんな満足していることが分かります。
環境授業では、環境破壊が進んでいることを教えてもらい、環境を大切にする気持ちの理解を育ませることができました。また工作では、自然素材を手に、想像力がかきたてられたようです。一つつくり上げると、「またつくりたい!」などと言っている子や、「妹の分もつくって帰りたい!」と言っている子どもいました。
1年生ぐらいだと、普段の授業では途中で集中力が切れてしまうことも多いのですが、今日はそういう子どもが一人もいませんでした! この授業は、楽しみながら自然を学べるところがいいですね。
また、Hondaのボランティアスタッフの皆さんは、一人ひとりの希望を聞き、丁寧にサポートしてくれました。想い描いていたモノが、理想に近い形になって、子どもたちには達成感があったと思います。そして、今日は、多くの大人と接することもでき、みんな良い経験になったと思います。
このプログラムを通じて子ども達に、環境保全の大切さや、スタッフの話しを聞いて理解する力、モノづくりの苦労や楽しさを経験してほしいと思っています。私たちのアドバイスを素直に受け、それを吸収していく子ども達には、いつも大きな可能性を感じています。大人になっても、そういう感性を持ち続けてほしいですね。