活動レポート「森の夢工房:自然素材でカブトムシやロケットを創作」2015年1月22日(木) 三重県鈴鹿市立長太小学校/「環境わごん」は、ステップワゴンに山や川にある自然の素材を積み込んで、HondaのOB・OGのボランティアスタッフが小学校に出向き、環境保全の大切さやモノづくりの楽しさを伝える“環境学習プログラム”です。今回は、1月22日(木)に三重県鈴鹿市の市立長太小学校に通う1年生29人を対象に実施した「森の夢工房」についてレポートします。

工作の前に、地球環境について学んで自然を理解

大きい素材は、好みの大きさに切って使います。大きめのノコギリは主に木を伐り、小さめのノコギリでは竹を切ります。

教室に足を踏み入れた子ども達は、赤いブルゾンを着た17人のボランティアスタッフに圧倒されてしまったのか、やや緊張気味の表情でした。この日は、「よろしくお願いします!」と子ども達の礼儀正しい挨拶を皮切りに、プログラムが始まりました。

まずは、工作の前に、紙芝居を見ながら地球環境について学習。私たちが生きていくために必要な「水」は、自然の循環環境によってもたらされています。雲や雨が、山に蓄えられ、やがて川を経由し海にたどりつく。それが絶えず繰り返されていることなどが伝えられました。「だから、自然を大切にしないとダメなんだよ」とスタッフが話しかけると、子ども達は、元気よく「ハイ!」と答えていました。

また、工作では、ノコギリ、トンカチ、やすり、ニッパー、ドリルなどの本格的な工具を使うため、安全に作業ができるよう、工具の取り扱いについての説明もありました。

ノコギリがけは男の子にとって至福の時間?

そして、いよいよ、工作が始まります。子ども達は素材を観察し、何をつくるかをイメージしながら、思い思いに選んでいきます。

木の枝、丸太、丸太の輪切り、まつぼっくり、どんぐりなど、さまざまな自然の素材が用意されていました。

自分で選んだ丸太を希望の大きさにするには、ノコギリを使います。ノコギリがけが始まると、教室にはギコギコと大きな音が響き始めます。その音につられたのか、「僕もやりたい!」「僕も!」と、いつの間にかブースは順番待ちに。危険がないよう、ボランティアスタッフが一人ひとりに付き添って、丁寧に指導を行います。

初めて使う子どもが多く、みんな、最初はヘッピリ腰。思うように歯が動きません。しかし、次第にコツをつかんで、リズムに乗って丸太を切っていきます。ノコギリ体験をし終えた興奮さめやらぬ男の子に話を聞くと、「ノコギリは重たくて、すごく木が固くて、切りにくかったです。だけど、もう使えるようになった!」と、得意満面で話してくれました。

ノコギリで切るのは楽しい!丸太にやすりをかけて表面をツルツルにする作業に没頭する男の子も。真剣!

女の子らしいカラフルな飾り付けも登場

難しいところはボランティアスタッフに相談をして作業を進めます。仲良しの2人は、一緒にろうそくをつくりました。

工作を楽しんでいるのは、男の子だけではありません。女の子だって、夢中です。

小さな木の実などのパーツを器用に飾り付けたり、赤や黄色のカラフルな毛糸でリボンをつくったり、作品をおしゃれに仕上げていました。

「門松」という作品をつくっていた女の子に話を聞くと「竹を切るところと、飾っていくところがおもしろかったです」と、少し恥ずかしそうに教えてくれました。

この女の子は、素材選びやデザインに迷うことなく、器用に作品作りを進めていました。その一生懸命に取り組む姿を見ていたボランティアスタッフは、感心しきりでした。

素早く作品を仕上げました!
作品名「門松」。門松をイメージして鉛筆立てをつくりました。中にある鉛筆は、木の枝から作っています。
女性のボランティアスタッフは、特に低学年に人気。「女性だと母親のようで安心するみたいですね。ここでは、工具を使うため危険が伴います。だから注意すべき時は、“鬼”になってますよ(笑)何よりも安全第一ですから」電気ドリルで穴をあける作業は、スタッフが代行。
自分でつくったクルマがコロコロと走るとすごく楽しい!子ども達のイマジネーションはフル回転!次から次へと楽しいアイディアが浮かんできます。

「え? シャタイって何ですか?」

ノコギリがけを終えた素材は、竹ひごや、接着剤、やすりなどを使って組み立てる作業に入ります。

その中で、クルマを作ろうとして、車輪になる切株を4つ用意してきた男の子。スタッフが「車体になる素材も持ってきて」と言っています。しかし、その子はキョトン。「え? シャタイって何ですか?」の質問に、思わず苦笑のスタッフ。「あ! クルマのボディーになるところだよ。ボ、ボディーってわかるかな?」。

「子ども目線で話すって、すごく難しいんです。自分では分かりやすく話しているつもりでも、今みたいに子どもから指摘されて気が付くことも多くて(笑)。その気付きもおもしろいですね!」とスタッフ。

作品名「とんぼ」。「葉っぱをジーっと見ていたら、とんぼの羽に似ていたので、この作品をつくりました。」作品名「かぶとむし」。木の枝をカブトムシのツノに見立て、力強い作品に仕上がりました。
作品名「高級車」。「ただの車じゃなくて、高級車です。のこぎりで丸太を切ったところが難しくて、丸太の表面をやすりできれいにしたところが楽しかったです。家に帰ったら玄関に飾りたいです。」よく見ると、どんぐりに目玉を付けたドライバーがクルマに乗っています。細部にこだわった作品。

子ども達の想像力が光る作品発表会

作品名「空飛ぶロケット」。「木の皮をやすりでけずるところが大変だったけど、おもしろかったです。」
プログラムの最後は、それぞれの作品を発表する時間です。「自分の作品の発表をしたい人!」というスタッフの呼びかけに、大勢の子どもが積極的に手を上げていました。

担任の先生の声

杉本眞美先生 「普段なかなかできない自然素材を使ったモノづくりを体験させることができました!」

今日の子ども達は、いつも以上に目をキラキラさせて取り組んでいました。表情を見ただけでも、みんな満足していることが分かります。
環境授業では、環境破壊が進んでいることを教えてもらい、環境を大切にする気持ちの理解を育ませることができました。また工作では、自然素材を手に、想像力がかきたてられたようです。一つつくり上げると、「またつくりたい!」などと言っている子や、「妹の分もつくって帰りたい!」と言っている子どもいました。
1年生ぐらいだと、普段の授業では途中で集中力が切れてしまうことも多いのですが、今日はそういう子どもが一人もいませんでした! この授業は、楽しみながら自然を学べるところがいいですね。
また、Hondaのボランティアスタッフの皆さんは、一人ひとりの希望を聞き、丁寧にサポートしてくれました。想い描いていたモノが、理想に近い形になって、子どもたちには達成感があったと思います。そして、今日は、多くの大人と接することもでき、みんな良い経験になったと思います。

ボランティアスタッフの声

ボランテイアとして参加したHondaのOB、松森さん

このプログラムを通じて子ども達に、環境保全の大切さや、スタッフの話しを聞いて理解する力、モノづくりの苦労や楽しさを経験してほしいと思っています。私たちのアドバイスを素直に受け、それを吸収していく子ども達には、いつも大きな可能性を感じています。大人になっても、そういう感性を持ち続けてほしいですね。

環境わごんは、2014年4月から12月までに、全国で約8,000人の子ども達が参加し、延べ205人のボランティアスタッフがサポートしました。