ガムシ

産卵しているところ
学 名
Hydrophilus acuminatus
分 類
コウチュウ目ガムシ科
ガムシ属
名前の由来
成虫の胸部下に後方に向かって、1つの尖った突起があり、これをケモノのキバ(牙)に例えて「牙虫」と呼ぶようになった説と、幼虫期に特徴的な大アゴ(牙)を持った姿に由来するという説がある。
似たような種類
ガムシより一回り小さなコガタガムシ、さらに一回り小さなコガムシ、そしてもう一回り小さなヒメガムシなどが知られている。
見つかる場所は?
水田、池、沼、水田脇など。夜間に灯火に飛来することもある。
分布
日本全国。
大きさ
成虫は体長33~40mm。
見られる時期
秋から春にかけては水のある溜め池や沼地にいる。春には、泥深い水溜まりに多数いることがある。
生活史
春に越冬から目覚めた成虫は、水田や溜め池で5~7月に交尾を行なう。卵は写真のような水面に展開した水草の下などに、泡状の 卵のう(卵鞘) を作り、その中に30~40個の卵を産む。1、2週間で幼虫が孵化し、3回の脱皮を経て土中で蛹(サナギ)になる。蛹はおよそ3週間後に成虫になる。野外での寿命はほぼ1年だと考えられている。
エサ
雑食性。植物や植物の枯死体、動物の死体などをかじって食べる。幼虫期には大アゴを持ち、このアゴの先から消化液を注入し、エサの肉を溶かして吸収する。野外では小さな昆虫や動物の死体にかみついている姿をよく見かける。
特徴
ゲンゴロウ類は呼吸のため、おしりの先から空気を取り込んで翅(はね)と腹部の間に空気を溜める。それに対してガムシ類は、触角から空気を取り込んで胸部の下部にある細かい毛が生えている部分に空気を溜める。オスの成虫の前脚の先端は吸盤状になっていて、交尾の際にメスの背中にくっつけて離れないようにする機能を持つ。
その他
最近は新しく使われるようになった農薬により、個体数が激減しているとの報告がある。今後も減っていく可能性が高い。数年前にたくさん採れていた場所でも見かけなくなっている。

監修者

大庭 伸也(おおば しんや)

大庭 伸也(おおば しんや)

2007年岡山大学大学院自然科学研究科博士課程修了、博士(学術)現在の所属は、長崎大学教育学部准教授。水辺環境に棲む水生昆虫類を対象に、生態学的な視点から食性、繁殖行動、生物種間の相互作用について研究しています。平成22年度日本環境動物昆虫学会奨励賞受賞

監修:大庭伸也
写真提供:稲谷吉則、岡田賢祐、加賀田秀樹、川野敬介、後藤直人、
世古智一、中西康介、橋本洸哉、政所名積、渡部 宏(50音順)