ニュースリリース

2009年10月02日ニュースリリース

エレクトロニクス材料の新たな可能性を広げる金属型カーボンナノチューブの高純度合成に成功

<ご参考>
 Hondaの研究開発子会社であるHonda Research Institute USA, Inc.(以下、HRI-US 本社:米国カリフォルニア州、社長:坂上 義秋〔サカガミ ヨシアキ〕)は、米国のパデュー大学(インディアナ州ウェストラファイエット)、ルイビル大学(ケンタッキー州ルイビル)との共同研究により、金属型カーボンナノチューブの高純度合成に成功した。この成果は、「カーボンナノチューブ構造の体系的な制御」が可能であることを示した最初の研究報告として、10月2日発行の米国サイエンス誌に掲載された。

 一般にカーボンナノチューブは、炭素原子がハニカム状に結合したシートを丸めた、ヒトの毛髪の10万分の1ほどの細さのチューブ状の物質で、触媒ナノ粒子の表面で成長する。炭素原子シートの巻き方によって、金属型や半導体型の性質を示すものが生成されるが、金属型カーボンナノチューブは理論上、銅より高い導電性、鉄より格段に優れた強度、ダイヤモンド並みの熱伝導性を有する一方で、綿毛のように軽いことが特徴。従来の合成手法では、この金属型カーボンナノチューブが占める割合は25%〜50%程度であったが、この度、91%まで高めることに成功した。

 今回の画期的な「金属型カーボンナノチューブの高純度合成」は、導電性を決めるチューブの構造が触媒ナノ粒子の大きさだけでなく、形状や結晶構造に大きく依存していることを発見し、その制御方法を確立したことによって成し遂げられた。

 本研究でHRI-USが確立した技術によって、高い導電性を持つ金属型カーボンナノチューブの応用の幅が広がり、コンピューター集積回路やエレクトロニクス部品を始め、バッテリー、スーパーキャパシターなどのエネルギー貯蔵材料、太陽電池、燃料電池、送電線、自動車や飛行機用複合材料など、様々な分野における高性能化、高効率化、小型化への新たな可能性が期待される。将来の実用化に向けて、ナノチューブの構造を完全に制御するという究極の目標に向かって、研究を続けていくことになる。

 今回の先進的研究成果は、HRI-US主導の下、パデュー大学、ルイビル大学の研究者達との共同研究に基づき実現したものである。パデュー大学は、カーボンナノチューブの形成過程を観察するために最新鋭の透過型電子顕微鏡を使用し、雰囲気ガスの違いにより、触媒ナノ粒子の形状が、鋭く角張った形状から、完全に角の取れた形状に変わるという事実を明らかにした。また、ルイビル大学は、HRI-USが見出した合成条件の下でカーボンナノチューブを多量に合成し、個々のカーボンナノチューブの導電性測定に必要なサンプル製作を担当。測定技術の確立とデータ信頼性の向上に貢献した。

 Hondaは、二輪・四輪・汎用技術の研究開発に加え、二足歩行ロボットや歩行アシスト、HondaJetといった先進のモビリティ技術、さらに地球環境問題やエネルギー問題などの解決に向けて、燃料電池や太陽電池技術、イネゲノムなど様々な領域において、常に時代をリードする技術開発や研究を行ってきた。21世紀の新素材として脚光を浴び、実用化に向けて期待が寄せられるカーボンナノチューブについても、過去10年にわたり合成研究に取り組んできたが、将来の幅広い分野での実用化に向けて今後も研究を進めていく。

ご参考:米国での基礎研究活動について

1975年

Honda R&D Americas, Inc.を設立し、商品の研究開発を開始。

1999年

HRI-USの前身となる米国基礎研究部門をHonda R&D Americas内に発足。

2003年

将来技術の研究のために、日本と欧州のHRIと並んで、HRI-USを設立。拠点は3ヵ所。

<カリフォルニア州マウンテンビュー拠点・マサチューセッツ州ケンブリッジ拠点>

  • 知能化技術に焦点を当てたコンピューター科学の研究および将来Hondaとの技術的相乗効果が期待されるベンチャー技術の発掘。

<オハイオ州コロンバス拠点>

  • 革新的なナノ機能材料に焦点を当てた材料科学の研究。

URL: http://www.honda-ri.com