ニュースリリース

2005年07月20日ニュースリリース

2005年 年央記者会見 福井社長スピーチ骨子

この春から新しい3ヵ年計画、第9次中期計画がスタートした。
先の8次中期では、存在を期待される企業となるという2010年ビジョンに向けて、2,000万人のお客様の喜びを実現し、企業としての自主自立を貫くことを目指した。
先期は、二輪・四輪・汎用合計で約2,000万台を販売。9次中期では、先進性や創造性を一段と強化してお客様の共感と信頼を得るブランドとなるべく、就任以来取り組んでいる源流強化、すなわち志、技、質を高め、“お客様の喜び”の創造で世界一を目指す取り組みをさらに推し進めていく。

パワートレインの革新への取り組み

昨年は、研究開発、製造現場、営業現場、日本のマザー機能、という4つの源流強化に取り組むという方向性をお話した。
中でも、研究開発領域は、Hondaらしさの原点である独自の新技術や商品を生み出す源泉である。特に、エンジン、トランスミッション、モーターなどのパワートレインは、走る楽しみ、自由に移動する喜びの原動力であると同時に、エミッション、CO2など地球環境への負荷を低減し世界中でモビリティを提供し続けていくための基盤技術である。二輪、四輪、汎用、次世代モビリティ全てにわたり、競争力の源泉であるパワートレインの革新にチャレンジしていく。

環境認識 二輪・四輪・汎用

環境問題認識

環境問題には大気汚染対策として排出ガスのクリーン化と、温暖化対策となる燃費向上によるCO2削減や、将来の石油エネルギー枯渇問題へ対応する代替エネルギーという三つの大きな流れがある。
これらの問題にHondaはかねてより規制に先駆けた取り組みを積極的に進めてきた。1972年にHondaのCVCCエンジンがマスキー法に世界で初めて適合。同時に、このCVCCを搭載したシビックは当時4年連続でアメリカでの燃費NO1を獲得した。現在でもアメリカの企業平均燃費でHondaはトップレベルにあり、国内でも平成22年度燃費基準を全重量カテゴリーで既に達成済み。
排出ガスのレベルはこの40年で実に1,000分の1に達している。アメリカでSULEV認定を受けているアコードを例にとると、場所によっては吸い込む大気より、排出ガス中の炭化水素濃度の方が低くなることもあり、排出ガスのクリーン化の技術は既に確立されてきたと言える。今後は地球環境保全の観点から、今まで以上にCO2排出量の削減による地球温暖化防止への取り組みを今後さらに加速させていく。
未来のパワーソースである燃料電池が本格的普及に至るまで、乗用車のパワートレインの主流はこれからも少なくとも20年以上は引き続きガソリン、ディーゼル、ハイブリッド、天然ガスなどによる内燃機関であり続ける。人が自由に移動するためのモビリティのほとんどを駆動している内燃機関において、エネルギー効率をさらに高め、CO2排出量をミニマイズしていくことこそが、地球環境に今出来る、最も効果的な手段と考える。
燃料の持つエネルギーは、摩擦や、熱損失、ポンピングロスなどで失われる部分があり、その全部を走行に利用できてはいない。このロスをミニマイズし、エネルギー効率を最大化するための様々な技術開発に取り組んでいる。
そのうちのひとつのハイブリッドシステムは、本来ブレーキが熱として放出している減速エネルギーを電気的に回生し、加速時に再利用するシステムだが、組み合わされるエンジンの効率を高めることで、ハイブリッドシステム全体のエネルギー効率もさらに向上が図れる。

  • たとえば、アコード ハイブリッドは通常のアコードV6に対する燃費向上のうち、市街地モードでは60%がハイブリッドによる燃費向上だが、高速モードでは可変シリンダーシステムが57%分の寄与をすることになり、寄与度が逆転する。つまり、多様な走行環境下でエネルギー効率を向上させるには、様々な技術で、より効率を高めたエンジンと組み合わされてこそ、ハイブリッドシステムの環境への貢献度が増すということ。以上のような考え方に基づき、Hondaの2輪・4輪・汎用のエンジンの効率向上の方針について述べる。

二輪

二輪車の燃費向上の取り組みと計画

4スト化、FI化などの取り組みをスクーター、小型モーターサイクル、大型モーターサイクルの各々の分野で進めてきた。これらにより2005年の燃費は95年比で約34%の向上。9中では、これらに加えてさらに新しいエンジン技術を投入する。

超低フリクションエンジン

具体的には、世界的に台数の多い100~125ccクラスのエンジンに、2プラグ化などで燃焼効率を向上させると共に、フリクションを徹底的に低減した、世界最高レベルの低フリクションエンジンを開発中。世界でもっとも台数の多いこのクラスにおいて、05年比で約13%の燃費向上を目指す。

二輪用可変シリンダーシステム(VCM)

大型二輪車向けには、四輪車の可変シリンダー技術を応用し、二輪の特性にあわせ、ハイパーVTECと融合させた二輪車用可変シリンダーシステムを新開発。2シリンダー・2バルブから4シリンダー・4バルブまで4つのステージで自在にバルブの開閉をコントロールし、燃費と走りを高次元で両立させ、05年比約30%の燃費向上を目指す。

こうした新技術を9中末頃には市販車に投入し、その後、機種拡大を図り、二輪車の環境性能を向上させていく。

燃費向上目標

  • 超低フリクションエンジン +13%(2005年比)
  • 二輪車用VCM +30%(2005年比)

四輪

四輪車の燃費向上への取り組みと計画

この数年間に次世代型エンジン、iシリーズへの切り替えを進め、今年の新型シビックでほぼ完了。VTEC技術を柱にVCMなどHondaならではの燃費向上技術を確立してきた。その結果、新エンジンシリーズではおおむね20%の燃費向上をみた。
9次中期では、VTECをさらに進化させ、連続可変バルブによって吸気コントロールを行う新技術とVCMをさらに進化させた新技術を開発し、主要モデルに搭載する。

進化型VTEC

9次中期末に投入予定の進化型VTECは、吸気バルブのリフト量や、バルブ開閉タイミングである位相を自在に連続可変制御することで、吸入エア量をコントロールし、スロットルバルブで発生するポンピングロスを大幅に低減する。

  • 高負荷時にはバルブを大きく、長い時間開き、吸入エア量を最大化させる。
  • 軽負荷時にはバルブのリフト量と開いている時間を抑え、吸入エア量をポンピングロスなしで調節する。
  • アイドリング時にはリフト量を最小に、また、バルブが開く時間もわずかにし、吸入エア量をポンピングロスなしに絞る。

これら革新的バルブコントロールや吸気管長制御により燃焼効率を通常エンジンに比べて約13%向上させる。

進化型VCM

2003年にインスパイアから投入した可変シリンダーシステム(VCM)は、可変動弁系の進化とアクティブコントロールマウント能力向上により、休止気筒数をよりバリアブルに切り替える新システムを投入し、休止領域を拡大することで通常エンジンに対して燃費を約11%向上する。

  • 9中末頃にはこれら進化型VTEC、進化型VCMなどの先進技術を市販車に投入し、その後、四輪車用エンジンの核として展開を図り、大幅な燃費向上を図る。

燃費向上目標

  • 進化型VTEC +13%(05年通常i-VTECエンジン比)
  • 進化型VCM +11%(05年通常V6エンジン比)

汎用

汎用製品の燃費向上への取り組みと計画

これまでに、業界に先駆け、OHV・OHC技術を駆使したGX・GCシリーズや、2ストロークが主流のハンドヘルド市場に、クリーンな4ストロークで360°自在傾斜運転を可能としたM4シリーズを上市するなど、環境性能に優れたエンジンを提供。さらにiGXエンジンでは、電子制御STRガバナをコアとした知能化により業界トップの環境性能と快適操作性を実現。知能化の拡大に向けシリーズ展開して行くとともに、更に画期的な新エンジンを開発中。

  • 現在開発中の次世代型汎用エンジンは、吸気/圧縮工程と膨張/排気工程のストロークを変える機構を持つ高膨張比エンジン。すでに実験室での運転を開始している。燃費20%向上を可能とし、アトキンソンサイクルを理想的に実現した画期的な技術。
  • 以上のように、知能化の適用拡大や、画期的な高膨張比エンジンの投入をこの中期では図り、汎用分野でも環境トップランナーとして業界をリードしていく。

燃費向上目標

  • 知能化/STRガバナ 15%(2005年比)
  • 高膨張比エンジン 20%(2005年比)

ハイブリッドの取り組み

これまで述べたように、Hondaでは内燃機関の効率向上が地球環境にもっとも寄与する最重要課題と考えている。基本である内燃機関の効率向上と合わせ、エンジンと組み合わされるIMAシステムも効率向上を図り、CO2削減に大きく寄与する技術として発展させていく。
ハイブリッドは、先日、次のシビック用3ステージ i-VTEC+IMAをお披露目したが、今後もIMA技術を進化させ、総合効率を高めていく。

FCの取り組み

内燃機関の次にある、究極の環境技術である燃料電池車の開発もさらに加速する。四輪ではFCXを個人のユーザーにもリース販売する段階に達したが、このHonda FC スタックの技術を応用し、さらに二輪のFC車も2009年にはリース販売の開始を目指している。

代替燃料

天然ガス

98年より天然ガスを燃料にするシビックGXを発売。今年は一般家庭でも燃料補充を可能にするPhillシステムをアメリカで販売開始した。さらに普及を促進していく。
また、日本では都市ガスなどをエネルギーに電力と熱を供給する一般家庭用コージェネレーションユニットが累計1万7千台を販売。年間CO2削減効果は樹木100万本、植林面積では東京ドーム200個以上に相当。来年のアメリカでの一般販売に向けて年内にモニター販売を開始。

アルコール

ブラジルで普及の進むアルコール燃料に、Hondaは80年代半ばから二輪で、そして四輪でも対応を図ってきた。10%混入、20%、25%とアルコール混入率が上がってきたが、現在ではE100と呼ばれる100%アルコールも販売されており、Hondaは、どのようなアルコール混合率でも走行可能なFlexFuel車を2006年中には投入する
このように、CO2排出量削減に効果の高い様々なエネルギーソースへの取り組みを、今後も継続していく。

全ての製品で革新的パワートレインの投入とその普及に、引き続きチャレンジを続け、各カテゴリーで燃費No.1を目指す。

ビジネス編

新型シビック

今年は真のグローバルカーであるシビックのFMCがある
今までのシビックの概念を超えたひとクラス上のエモーショナルでスタイリッシュなセダンを国内に、北米向けには北米用の2ドア、4ドア、アジアに4ドア、そして欧州には専用の3ドア、5ドアと、四種類のボディを地域特性に合わせて開発。地域最適のポリシーのもとに作り上げた新世代シビックは、世界160ヵ国で60万台以上を販売する真のグローバルカーであり、来年からは中国も含めた世界全6地域で生産されることになる。パワートレインについても各地域の特性に合わせて、ガソリン、ディーゼル、ハイブリッド、CNG、あるいはアルコールという様々な燃料に対応した先進のラインナップを用意。

地域別

国内

そのシビックに搭載される新ハイブリッドモーターやCVT、クリーンディーゼルなどパワートレインの最新技術をHondaでは内製している。IMA用モーターは現在鈴鹿で内製中。またHondaは自動車メーカーでは世界で唯一CVT用金属ベルトの内製化に成功しており、外部調達分と共に鈴鹿でも生産している。欧州向けi-CTDiディーゼルエンジンには、シリンダーブロックでは珍しいセミソリッド製法を採用しているが、この高度なアルミ鋳造工程も、年内にはHondaエンジニアリングから鈴鹿に移管が終了し、量産体制を強化する。マザー機能強化の一環として、先進内燃機関テクノロジーを自社開発、内製し、高度な技術を自らの手で磨いていく。
また、販売面での源流強化のため、これまで地方に点在していた営業部などを本社に一元化、IT技術をフル活用し、ディーラーと本社をダイレクトに結び、本社の最前線化を図り、販売の現場源流を強化していく。
さらに、販売やサービスの現場・源流の原動力となる人材を生涯に亘り育て、強化するため、人材育成専門会社(株)ホンダコンサルティングを設立した。
国内の生産面、販売面の両輪において現場源流を強化していく。

北米

好調なオデッセイに続き、秋にはパイロットもMMCを迎えることから、アラバマ第二工場は年内にはフル稼働へ。今年のリッジラインに加えて来年はCR-Vの現地生産化でライトトラック基盤の一層の強化を図る。またAcuraへのNew SUVの投入で、ラインナップを充実させブランドを強化していく。
また、燃費性能に優れるフィットをEntryカーとして導入する。この10月からはブラジル製のフィットをメキシコに導入し、来春には日本製のフィットをアメリカとカナダで販売開始する。高まる燃費ニーズに応え、ラインナップの一層の拡充を図る。
5月にジョージアで新AT工場HPPGの建設が開始。オハイオで高精度ギヤを北米で初めて生産、アラバマでコンロッド加工などエンジン部品生産増強するなど計300億円の投資でパワートレイン生産の現地化を加速し拡大する需要に応えていく。

南米

03年に投入したフィットが好調で、ブラジル工場は5万台フル生産。新型シビックと合わせて着実に発展させていく。またブラジルでは初めて大型四気筒二輪モデルのホーネット600Fの現地生産を開始し、パワートレインの現地生産技術を向上させていく。

欧州

欧州でCO2対策の主軸として期待されているディーゼルについて、Honda独自開発のi-CTDiエンジンが、昨年のアコードを皮切りに、今年はCR-V、そしてFR-Vへ搭載され、来年には新型シビックにも搭載が開始される。ディーゼル戦略を軸に四輪事業の強化を図る。

アジア

  • 二輪の需要拡大に応えるため、秋にはインドネシアの第三工場が本格稼動を開始し、またフィリピンでも来年4月に新工場が稼動を開始。商品面でも使い易さを進化させた高付加価値商品を投入していく。
  • ベトナムに年産1万台規模の四輪工場建設を開始、来年7月の稼動を目指す。
  • インドネシアの四輪工場は4万台の能力をこの4月に年産5万台へ拡張した。
  • 今年末に3万台から5万台へ能力拡充させるインドでは、好調のシティ、アコードに加え、来年中にはシビックを現地生産開始2010年までに年産10万台へ拡張する。
  • タイの四輪エンジン工場は今月、日米以外で始めてシリンダースリーブに砂型の不要なスピンキャスト製法を導入。06年春頃に15万→30万台へ能力拡大
    高度なパワートレインの製造技術をアジアにも導入しつつ、世界共通の高品質を実現し、フレキシブルなグローバル補完体制を強化していく。

中国

53万台生産体制への拡大に向け、品質面、コスト面での競争力向上を図り、中国乗用車メーカーとして初めて本格的な輸出を開始。世界の激戦区である欧州市場への輸出で、中国生産拠点の競争力を磨いていく。
また、2006年春には、武漢の東風本田が12万台の量産工場へと一新され、新型エンジンを搭載するシビックが、いよいよ中国でも現地生産されることになる。

NSX後継車

NSXの後継として新しいスポーツモデルを鋭意開発中。V10エンジンを搭載した新時代のスーパースポーツを3、4年後には披露したい。ご期待下さい。

HondaJet

アメリカ ウィスコンシン州Oshkoshで開かれる実験機の祭典Air Ventureで、7月28日に、HondaJetがデモフライトを行う。2003年12月に初飛行して以来、合計150時間の飛行試験を重ね、これまでに最高高度は13,000m、最高速度は728km/hというテスト結果も出ている。優れた空力性能とHF118エンジンの低燃費性能を合わせ、同クラスの既存機との比較で燃費を4割向上させるHondaJetの実験を今後も継続していく。

結び

世界的に高まる燃費ニーズに応える新商品/新技術を投入し、より環境に優しいモビリティの実現により、さらに多くのお客さまに喜んでいただくため、パワートレインの進化に取り組んでいく。開発に要する投資も、新技術の創造に積極的に経営資源を配分していく。設備投資もフレキシブルで効率的なグローバル生産体質の強化に向け、積極的に行っていく。
お客様の満足を最大の指針とし、こうした新技術、新商品によって、より多くのお客様にモビリティの喜びをお届けしていけば、結果として9次中期末頃には二輪が1,600万台、四輪が400万台、汎用が650万台くらいの販売になり、売り上げ規模で10兆円を超えるのでは、とイメージを描いている。
Hondaは“存在を期待される企業”を目指して、モビリティの喜びを追求し、より多くのお客様に喜びを届け、そして次の世代にもその喜びをつないでいく。