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1997年07月02日ニュースリリース

安全性を基本に、操る楽しさを向上するホンダ・新世代シャシーテクノロジー「5リンク・ダブルウィッシュボーン・リアサスペンション」「新EPS(電動パワーステアリング)+VGR(可変ステアリングギアレシオ)」「VSA(車両挙動安定化制御システム)」を開発

本田技研工業(株)は、クルマを操る楽しさと、安全性の両立を高次元で達成させるため、新世代のシャシーテクノロジーを確立し、基本性能である 「走る・曲がる・止まる」 を飛躍的に向上させる新しい3つの技術を開発した。
これは、操縦安定性と乗り心地を高次元に両立する 「5リンク・ダブルウィッシュボーン・リアサスペンション」、操縦性やリニアリティを高める 「新EPS(電動パワーステアリング)+VGR(可変ステアリングギアレシオ)」、従来のABS/TCSに横すべり抑制を加えアクティブセーフティを高める 「VSA(車両挙動安定化制御システム)」 で、FF車の高水準な 走行安定性をベースにそのポテンシャルを大きく進化させた。この新技術は近く発売する新型車への投入を予定している。

新技術項目と主な特徴

1.「5リンク・ダブルウィッシュボーン・リアサスペンション」

  • 5リンク化することで路面から受ける前後・横方向の力を各アームの軸方向にのみ入力させることが可能となり、アームのストレート化とともに軽量・シンプル化を実現。
  • マルチリンク方式としては世界初のワッツリンク配置を採用。タイやを斜め後方に直線的にストロークさせることで路面からの前後入力を大幅に低減し、乗り心地を向上。
  • 直進時にはトー変化を少なくし、旋回時や制動時には適切なトーイン特性を持たせることで、高い操縦安定性を確保。
  • すべてのアームをインホイールに配置し、同時にワッツリンク配置とすることで、居住スペースとトランクスペースの拡大が可能。
リアサスペンション(左側)

リアサスペンション(左側)

2.「新EPS(電動パワーステアリング)+VGR(可変ステアリングギアレシオ)」

  • 高速での安心感を高め、ステアリングホイールへのキックバックを低減するなど、操舵フィールを大幅に向上。
  • 電動モーターによるアシストのため、油圧ポンプやオイルの削減やエンジン負荷損失の大幅な低減によって燃費を3~5%向上(社内テスト値)するなど、省エネ・環境に対応。
  • モード切り換え機能によって、ドライバーの好みや走行状況に応じた操舵力特性を持たせることが可能。
  • VGRを組み合わせることで、高速走行時の滑らかな操舵フィールと、低速時のきびきびとした旋回性や容易な取り回し性を実現。
新EPS

新EPS

3.「VSA(車両挙動安定化制御システム)」

  • アクティブセーフティの向上を目指し、従来のABS+TCSに「横すべり抑制」を加え、全包囲の車両挙動安定化を実現。
  • 旋回中の後輪スリップによる車両の巻き込みに対して、フロント外輪へのブレーキ制御によってオーバーステアを抑制。
  • 旋回加速時の駆動輪(前輪)スリップによる軌跡のはらみに対して、エンジントルクの低減とフロント内輪へのブレーキ制御によって加速アンダーステアを抑制。
  • 左右輪で路面状況が異なる場合、低μ路側の車輪にブレーキをかけ、高μ路側の車輪にエンジントルクを回し込むことで力強い発進・加速力を獲得。
  • 高横G旋回での制動時にABSを4チャンネルに切り換え、後輪外側にも大きな制動力を持たせることで安定した旋回制動性能を確保。
VSA

VSA

ホンダ独自の車両運動性能理論 [ベータ・メソッド:β-Method]

シャシー開発にあたりそれぞれの技術を具現化するうえで、クルマの持つ運動性能を解析するホンダ独自の 制御理論。これは1992年に発表したもので通常走行領域から限界走行領域までの車両運動性能を同一次元で 評価解析できるため、サスペンション・ジオメトリーや[VSA]の制御領域などの最適な設定値を効率よく見 出すことが可能。

操縦安定性と乗り心地を高次元で両立
5リンク・ダブルウイッシュボーン・リアサスペンション

5本のストレートアームを適切に配置することで路面からの入力に対して的確に作用し、操縦安定性と乗り心地を高次元で両立。
コンパクトなインホイールタイプにすることで、居住スペースやトランクスペースの拡大も可能にした。

基本メカニズム

5リンク化することで路面から受ける前後方向と横方向の力をアームの軸方向にのみ入力させることが可能となり、アームのストレート化とともに軽量・シンプル化を実現。
前後入力に対してはトレーリングアームとリーディングアームが、横入力に対してはアッパーアーム、ロアアーム、コントロールアームが剛性を発揮し、上下ストロークのみをダンパーでコントロールさせることで、操縦安定性と乗り心地をより高次元で両立している。

リアサスペンション

リアサスペンション

作用効果

(1)世界初・ワッツリンク配置マルチリンク方式

路面からの入力に対してリアタイヤが斜め後方に直線的にストロークするよう、トレーリングアームとリーディングアームをワッツリンク配置とすることで、路面から受ける前後入力を大幅に低減し、ハーシュネス特性を向上している。

(2)直進時特性

トレーリングアームとロアアームの取付点軸線と、リーディングアームとアッパーアームの取付点軸線を平行にすることによって、タイヤストローク時のトー変化を少なく、かつ直線化。
これにより、直進時の外乱に対して車両の進路変化を抑制している。またロール時の応答性が高く、アンダーステアの低減にも貢献している。

直進時特性

直進時特性

(3)トーイン特性

  • 旋回時
    アッパーアーム、ロアアーム、コントロールアームをタイヤに対して横方向(垂直)に配置することで横剛性を実現。しかもホイールセンターに対して、ロアアームのスパンよりコントロールアームのスパンを長く取ることで、ロアアームの変位を大きくしてトーインを増大。旋回時における追従性の高い操縦安定性を獲得している。 
  • 制動時
    トレーリングアームとリーディングアームを斜めに配置することで、制動時の入力によるトーインを増大。しかもオフセット配置のコントロールアームはほとんど変位しないことから、より的確なトーイン特性が得られ、制動時の操縦安定性を確保している。
トーイン特性

トーイン特性

(4)乗員・トランクスペースの拡大が可能

すべてのアームをインホイール配置にしてコンパクト化を実現。同時にワッツリンク配置によってタイヤを斜め後方にストロークさせることで、キャビンへのタイヤハウスの侵入量を低減。居住スペースとトランクスペースの拡大を可能とした。

居住スペース

居住スペース

操作性やリニアリティを大幅に向上
新EPS(電動パワーステアリング)+VGR(可変ステアリングギアレシオ)

ドライバーのステアリング操作に合わせて電動モーターによる最適なアシストが得られ、快適な操舵フィールを実現。省エネ化も達成した。新EPS+VGRは世界初である。

システムの概要

ドライバーのステアリング操作に対して、車速や走行状態に応じたアシスト量をコンピューターが素早く高精度に制御し、ラック軸と同軸に設置した電動モーターが最適な駆動力を発生。リニアな操舵力が得られ、しかも滑らかで応答性の高い操舵フィールを実現した。
ラックギアにVGR機構を採用することで、より新EPSの特性を発揮する。

構造図

構造図

効果および特長

(1)操舵フィールの大幅進化

  • 高速で安心感を向上。
  • キックバックを大幅に低減。
  • トルクステアを低減。
  • 高速走行時や制動時のステアリング回転振動を低減。
  • 轍路や雪道などで生じるステアリングの取られを抑制。
  • ステアリングホイールの戻り性を最適化し、旋回後の加速時でもスムーズなハンドリングを実現。

(2)省エネ・環境対応/安心機能

  • 油圧ポンプやオイルを削減でき、エンジン負荷損失も大幅に低減できたため、燃費を3~5%向上(社内テスト値)。
  • システムの軽量化を達成。
  • エンジンストール時でもパワーアシストを確保。
  • 低温時のエンジン始動性向上。
  • ワーニング機能、自己診断機能、自己保護機能付。

(3)モード切り換え機能

新EPSは操舵力特性を自由に設定することが可能なため、重めの設定や軽めの設定をあらかじめプログラムし、モード切り換え機能を加えることでドライバーの好みや走行状況に応じた操舵力特性を発揮することができる。

(4)VGR(可変ステアリングギアレシオ)採用

ラックギアのセンター部に通常のレシオを設けてステアリングの切り始めをスムーズにし、大舵角時はクイックなレシオ設定としてロック・トゥ・ロックを減少。高速走行での車線変更などでは滑らかな操舵フィールを、低速時はきびきびとした旋回性や車庫入れ時などの容易な取り回し性を実現。新EPSに組み合わせることで、より高い特性を発揮する。

VGR(可変ステアリングギアレシオ)

VGR(可変ステアリングギアレシオ)

アクティブセーフティーをより高水準化
ホンダVSA(車両挙動安定化制御システム)

VSAとは、従来のABS(4輪アンチロックブレーキシステム)+TCS(トラクションコントロールシステム)に、さらに車両の横すべり抑制を加えた「車両安定化制御システム」で、国産FF車初である。

システムの概要

路面の急変やドライバーのステアリングあるいはブレーキなどの不適切な操作によって起きる急激な車両の挙動変化を抑制し、ドライバーが冷静にコントロールするための余裕を確保する。また、雨天時や雪道などでは、路面からの外乱を安定方向に制御することでドライバーの過度な緊張を低減し、運転にゆとりを与える。
なおこのシステムは、操る楽しさをスポイルしないためにも、ドライバーが車両コントロールを失った時のみ作動するよう、あくまでもドライバーの操縦を重視した制御システムとしている。

VSAシステムの概要

VSAシステムの概要

車両の横すべりとは…旋回中の車両がタイヤの旋回性能を超え、
●後輪が横すべりを起こし、車両が旋回内側に巻き込む(スピン)現象=オーバーステア。
●前輪が横すべりを起こし、車両が外側にはらんでしまう現象=アンダーステア。

  • VSAは、あくまでもドライバーのブレーキ操作やアクセル操作を補助するシステムです。したがってVSAがない車両と同様に、コーナー等の手前では充分な減速が必要であり、ムリな運転までは制御できません。

制御作動

(1)オーバーステア(車体スピン)制御

後輪スリップによる車両の巻き込みに対して、フロント外輪へのブレーキ制御によって外向きのモーメントを発生させ、同時にフロントのコーナリングフォースを低減。スピンモーメントを減少することで車両を安定化させる。

オーバーステア(車体スピン)制御

オーバーステア(車体スピン)制御

(2)加速アンダーステア制御

駆動輪(前輪)スリップによる軌跡のはらみに対して、エンジントルクの低減とフロント内側へのブレーキ制御によって前輪のサイドフォースを確保。内向きモーメントを発生させることで、トレース性を高める。

加速アンダーステア制御

加速アンダーステア制御

(3)発進制御

左右輪で路面状況が異なる場合の発進時などは、低μ路側の車輪にブレーキをかけ、高μ路側の車輪にエンジントルクを回し込むことでより力強い発進・加速力を獲得する。

発進制御

発進制御

(4)旋回制動制御

高横G旋回を横Gセンサーが検出するとABSを4チャンネル制御に切り換え(直進および低横G旋回時は3チャンネル)、後輪外側にも大きな制動力を持たせることで、旋回制動時の性能を向上させている。

旋回制動制御

旋回制動制御

システム構成

システム構成

システム構成