ニュースリリース

1996年10月22日ニュースリリース

二輪車用2サイクルエンジンの総合性能を一段と向上させた燃焼改善技術「AR燃焼」の実用化システムを開発

本田技研工業(株)は、二輪車用2サイクルエンジンの大幅な燃費の向上と、排出ガス中の HC(炭化水素)の低減及び、出力特性の向上を図った画期的な燃焼改善技術「AR(Activated Radical)※燃焼」の実用化システムを開発しました。 このAR燃焼は、二輪車用エンジンとして幅広く使用されている2サイクルエンジンの省エネルギーや環境問題に対応する技術として開発したもので、アクセル開度が小さい低負荷域での不整燃焼を克服する事で、2サイクルエンジンの総合性能を一段と高めたものです。このAR燃焼の実用化システムを、近く発売する二輪車へ搭載することを予定しています。

AR燃焼エンジン搭載 実験研究車

AR燃焼エンジン搭載 実験研究車

「AR燃焼」の効果

(当社製品比較値社内テスト値)

  • 燃費性能の大幅な向上
    実用走行テスト値で約27%、60km/h定地走行テスト値で約29%の向上を実現。
  • エミッション性能の向上
    排気ガス中のHC(炭化水素)を約50%低減。
  • ドライバビリティの向上
    主に低・中回転域における出力特性の向上によって、スムーズでレスポンスに優れたドライバビリティを実現。
  • ARとは、活性された遊離基で化学的に非常に反応が起こり易い状態の分子構造
AR燃焼エンジン 実用化モデル(250cc)

AR燃焼エンジン 実用化モデル(250cc)

2サイクルエンジンは、小型・軽量で高出力が得られ少ない部品点数で構成されてい るため、二輪車用のエンジンとして、主に小型二輪車に幅広く搭載されています。
しかしながら、構造的に抵負荷域での不整燃焼と高負荷域で新気の吹き抜けがあり、 この原因による燃費とエミッション性能の改善が課題とされてきました。

AR燃焼の原理

2サイクルエンジンの常用域ともいえる低負荷域(アクセル開度が小さい)での不整燃 焼改善の研究をすすめた結果、シリンダー内の残留ガスと新混合気を積極的に混ぜ、残留 ガス中の遊離基(Radical)を利用して自己着火を発生させることが最も効果的な手法で あるとの結論を得ました。
従来から2サイクルエンジンの自己着火現象(点火プラグによらない着火)は、イグニッ ションスイッチを切ってもエンジンが回り続ける「ラン・オン現象」等として知られて いましたが、これまでは、この自己着火現象を止めるための研究が行われてきました。
AR燃焼は、この自己着火現象を出来るだけ幅広い範囲で発生させ、かつ自己着火の着火 タイミングを制御することで、不整燃焼を克服する革新的な燃焼方法です。
AR燃焼の状態では、燃焼室内の無数の点で自己着火が発生するため、燃焼効率が高く、 又通常不整燃焼が問題となる低負荷域でも失火は発生しなくなります。
自己着火の着火タイミングの制御は、排気ポートに設けた「ARCバルブ」で行われます。 このARCバルブは前のサイクルの残留ガスをシリンダー内にとどめて、開始時のシリンダー内圧力を制御して、着火タイミングを変えています。

AR燃焼の原理

AR燃焼の原理

AR燃焼の領域

AR燃焼の領域

AR燃焼の原理

AR燃焼の原理

AR燃焼制御の実用化システム

システムは、シンプルで軽量な構成としています。

  • AR燃焼コントロールバルブ機構とサーボモーター
  • アイドリングコントロール機構および開度センサー付キャブレター
  • ECUによる制御機構
ECUによる制御機構

ECUによる制御機構