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1995年09月13日ニュースリリース

世界初 小型二輪車用ならびに大型二輪車用の 電子制御式アンチ・ロック・ブレーキと前・後輪連動ブレーキ機能を組み合わせた 画期的な2タイプのブレーキシステムを開発

 本田技研工業(株)は、簡便なブレーキ操作で様々な路面状態において効果的に制動力が得られるブレーキシステムとして、電子制御のアンチ・ロック・ブレーキ機能と、前・後輪連動ブレーキ機能を組み合わせたスクーターを含む小型二輪車用の「M.A.-C.(MotorActuated Combined)ABSと、大型二輪車用のアンチ・ロック・ブレーキと油圧式の前・後輪連動ブレーキシステムを組み合わせて搭載した画期的な「T.R.-C.(TorqueReaction Combined)ABS」の2タイプのブレーキシステムをそれぞれ世界で初めて開発した。

M.A.-C.ABS(小型二輪車用) (Motor Actuated Combined ABS)

M.A.-C.ABS(小型二輪車用) (Motor Actuated Combined ABS)

T.R.-C.ABS(大型二輪車用) (Torque Reaction Combined ABS)

T.R.-C.ABS(大型二輪車用) (Torque Reaction Combined ABS)

 この2タイプのブレーキシステムは、作動原理は各々異なるものの、直進制動時のブレーキのかけすぎによる車輪ロックを自動制御するアンチ・ロック・ブレーキ機能と、適切な制動力配分をより簡便な操作で実現する前・後輪連動ブレーキ機能を高次元で融合させることでライダーのブレーキ操作をより簡便化し、ライディングに集中することを目的に開発したものである。

※ABSとはアンチ・ロック・ブレーキ・システムの略称です。

 M.A.-C.ABSは、左・右のブレーキレバー操作などでケーブルを介して制動装置を作動させるスクーターなどの小型二輪車に搭載が可能で、ブレーキのかけすぎや急な路面 変化による車輪のロックを防止するアンチ・ロック・ブレーキを前・後輪に搭載している。さらに、比較的使用頻度の高い左レバー(後輪ブレーキ)の操作時に前・後輪のブレーキを連動させる機能を持つことで、扱い易く安定した制動力を得やすいブレーキシステムとしている。
 システムは、ブレーキレバーの操作入力を検知し、アンチ・ロック・ブレーキ・システム作動時の操作性を向上させるケーブルダンパーと1個の制御モーター、2組の遊星ギア、電磁ブレーキで構成されたアクチュエータ(作動装置)、及び、前・後の車輪速度センサー、8bitのコンピュータ等からなるECU(Electric Control Unit)とで構成されている。
 アンチ・ロック・ブレーキの作動原理は、前・後輪の車輪速度センサーからスリップ率と加減速度を演算し、前・後輪のスリップ状態によって、アクチュエータのモーターと電磁ブレーキを作動させ、車輪がロックしない適正な制動力となるように、前・後輪を同時に制御している。
 連動ブレーキの作動原理は、左レバー操作入力をケーブルダンパー部が検出するとともに、アクチュエータの角度センサーによってレバー操作量 を検知し、ECUによって後輪ブレーキの制動力として演算し、制御モーターの駆動によって前輪の制動力を発生させている。

 T.R.-C.ABSは、前・後輪ともに、油圧式ディスクブレーキを装着しているスポーツツーリングバイクなどの大型二輪車に搭載が可能で、’92年型の輸出専用モデルのST1100に搭載し好評を得たアンチ・ロック・ブレーキ・システムと、’93年型のCBR1000Fに搭載したホンダ独自の前・後輪連動ブレーキシステム(Dual Combined Brake System)のそれぞれをシンプルな構造にし、融合した理想的なブレーキシステムである。
 従来のアンチ・ロック・ブレーキ・システムは、ポンプとソレノイドバルブから構成される油圧制御回路を内蔵したモジュレータを持っており、その中の油圧を調整することで、ブレーキの油圧制御を間接的に行っていたが、今回のT.R.-C.ABSは、16bitのコンピュータからなるECUと前・後輪の車輪速度センサー及びピストン-クランク機構をもつモーター駆動式のモジュレータでブレーキの油圧制御を直接的に行っている。
 アンチ・ロック・ブレーキの作動原理は、車輪速度センサーからスリップ率と加減速度を検知し、ファジー推論を3次元マップに置き換え、そのマップを基に、モーターに連結されたクランクの回転角度を可変することでブレーキの制御量 を調整している。さらに、ソレノイドバルブを使用していない為に、連続的な油圧制御が可能となっている。
 これらにより、車体挙動が小さく、よりスムーズなアンチ・ロック・ブレーキフィーリングを実現するとともに、従来のアンチ・ロック・ブレーキ・システムに比べてモジュレータのサイズ・部品点数・質量 を大幅に減少させている。
  また、前・後輪連動ブレーキシステムは、制動時の姿勢変化を極力減少させることを目的に開発したもので、レバーブレーキは前輪のみ、ペダルブレーキは後輪のみの制御を行う一般 の二輪車用ブレーキと異なり、レバー、ペダルのいずれの操作を行っても前・後輪の制動力を適切に配分させ、さらにレバー、ペダル双方の併用操作を行い、理想的な前・後制動力配分特性で、制動力を発生させ高い減速度を得やすくするシステムである。
 作動原理は、制動時に前輪ブレーキ・キャリパー上部に設置したメカニカルサーボ機構によって後輪への制動油圧を発生させ、PCV(Proportional Control Valve)で二輪車に適した理想的な制動力を機械的に制御し、後輪のブレーキキャリパーに伝達するものである。
 今回のT.R.-C.ABSは従来型の前・後輪連動ブレーキシステムと同様にペダル操作のみ、もしくはレバー操作のみでの制動効率を向上させながら、アンチ・ロック・ブレーキ・システムと組み合わせることで、ブレーキのかけすぎによる車輪ロックも防止できる。特に、ペダルのみの操作で、後輪のアンチ・ロック・ブレーキ作動時も入力を増加し、前輪の制動力を高めることで、ほぼ最大の減速度を得られる画期的なブレーキシステムである。

このように、2つのブレーキシステムは、二輪車におけるホンダの積極安全思想の一環として独自に開発したもので、従来、高い減速度を得る為に必要な高度なブレーキ操作をより簡便に行うことで、快適なライディングを可能とする次世代の二輪車用のブレーキである。