第11戦 イギリスGPの見どころ  7月9日(月) レポート:柴田久仁夫





第11戦イギリスGPを前に、シーズンのこれまでを振り返る
 6月のカナダ、ヨーロッパ、フランスの3戦で、今シーズンの勢力図はほぼ形が見えてきたと言っていいだろう。まず選手権における、フェラーリとミハエル・シューマッハの優位。一方、ライバルのマクラーレンは、ミカ・ハッキネンに代わってタイトル獲得を目指したデビッド・クルサードが、この3戦で7点しか獲得できなかった。一方シューマッハは2位、1位、1位で26点。両者の点差は、31まで広がってしまった。またフェラーリとマクラーレンの点差も52。よほどのことがない限り、マクラーレンとクルサードが逆転してチャンピオンになることはむずかしい状況だ。

 それどころか、6月にはラルフ・シューマッハとBMW・ウィリアムズの猛追を受け、へたをすると2位の座も危うい。シーズン序盤の出遅れが響いたために、まだ点差は若干開いている。しかしこの3戦、予選でもレースでも、マクラーレンはウィリアムズにまったく太刀打ちできない状態だった。この傾向は、シーズン終盤まで続くのではないだろうか。そう、フェラーリとマクラーレンの2強時代は、ほぼ終わったと言っていいのだ。

 開幕前には、いくつかのサーキットではウィリアムズは速さを発揮するのでは、というような予想だった。それがフタを開けてみると、モナコを除いてどこでもまんべんなく速い。しかもその速さが、ここに来ていっそう拍車がかかっている。そしてその活躍の陰にはミシュランの、予想をはるかに上回るパフォーマンスがあることは言うまでもない。F1復帰1年目。しかも溝付きタイヤの経験は皆無。なのに6月に入ってからは、予選の速さ、レースの安定性で、ブリヂストンと並ぶか、時にはそれをしのぐ成績を上げている。カナダで2勝目を上げられ、フランスではついにポールポジションも許した。そして最近はウィリアムズだけでなく、ジャガーも上位に迫ろうという勢いが見られる。BS勢はこうした状況に、かなりの危機感を感じているようだ。

 危機感ということでは、Honda陣営も同様だ。BARに加えジョーダンへのエンジン供給も開始して、復帰後初優勝の期待は大いに膨らんだ。ところが実際には、スペインGPでジャック・ビルヌーブが3位表彰台に上がったのが最高。カナダ、ヨーロッパGPでは1ポイントも取れなかった。「選手権3位に終わったら、ガッカリだろうね」と豪語していたBAR Hondaは、現在6位。ジョーダン Hondaはそれよりわずか1点多いだけの5位。BMW・ウィリアムズどころかザウバーにも先行を許している。

 そんな不振の原因は、どこにあるのだろうか。BAR Hondaは、調子は確かに上り坂である。チームとしての力は、去年よりはるかに付いている。Hondaとのシャシー開発も進んでいる。しかしBAR Hondaより上のチームは、要するに彼らを上回るペースで進歩しているということだ。
 またジョーダン Hondaは、予選一発の速さはあるものの、レースになると極端にペースが落ちてしまう。複合的な原因によるもので、種々の手当てがされてはいるものの、今のところ目立った効果は出ていない。
 そして両チームとも、Hondaエンジンの開発が思うように進んでいないことの影響も受けていると言える。6月の3戦では、信頼性ではほぼ満点だった。しかしパフォーマンスの点では、依然としてトップのワークスエンジンに比肩するところまで行っていないようだ。

 イギリスGP前のテストで、BAR HondaはHonda開発のリヤサスをテスト。感触次第では、実戦への早期投入も考えられているという。現行エンジンの改良バージョンも、そろそろデビューするのではないか。それで飛躍的に速さが増すということはないのかもしれない。しかしそうした改良の積み重ねで、少しずつ前進して行くしかないのだろう。


「シルバーストンサーキットのみどころ」
 もともと軍の飛行場だった場所をサーキットにしただけあって、かつてはストレートを高速コーナーでつないだだけの、名うてのハイスピードコースだった。しかしその後何度もコースレイアウトが変更され、今では低中速コーナーと高速コーナーがミックスされた、マシンの総合力を試されるサーキットとなっている。2003年までに更に大規模な改修工事が行なわれ、より大きく生まれ変わることになる。
 ロンドンからクルマで、北へ1時間。サーキットすぐ横のジョーダンを始めとして、付近にはF1やラリーのファクトリーが点在する。96年のデーモン・ヒル以来イギリス人の世界チャンピオンは出ていないが、そんなことにはおかまいなくイギリスGPはいつもすごい盛り上がりを見せる。本場のモータースポーツの雰囲気を味わいたいなら、ぜひイギリスGP観戦をお勧めする。


・開催地;イギリス中部・シルバーストンサーキット
・全長;5,141km
・周回数;60周
・2000年ポールポジション;ルーベンス・バリケッロ(フェラーリ) 1分25秒703
・2000年優勝; デビッド・クルサード(マクラーレン)