第6戦 オーストリアGPの見どころ  5月7日(月) レポート:柴田久仁夫





 ハンガリーを入れると、ドイツ文化圏でのGPは全部で4戦を数える(ホッケンハイム、ニュルブルグリング、フンガロリング、A1リンク)。その口火を切るGPである。近年ドイツ人ドライバーが大活躍し、メルセデスやBMWなどのドイツメーカーも参入している。それが開催地の選択にも、如実に反映しているわけである。
 ここでのみどころはまず、前回スペインGPから導入されたトラクション・コントロールをはじめとするハイテク・デバイスが、2戦目のここでどれほど洗練されたものになるかだ。各チームは明らかにしなかったものの、ハイテク装備が原因と思われるトラブルが、スペインの週末でいくつか散見された。またトラブルに至るどころか、システムの実用化が遅れて、採用を見送ったところさえあった。
 先週シルバーストンやバレンシアなどヨーロッパ各地で行なわれたテストで、各チームは当然このシステムをいっそう洗練されたものとすべく、様々な試みにトライした。その成果が、このオーストリアGPから出始めるだろう。

 そしてHonda勢では、やはりなんと言っても連続表彰台への期待だろう。Hondaドライバーのトップを切って、ジャック・ビルヌーブがとうとうスペインで表彰台に上がった。その活躍が、ここでも再現されるだろうか。クレイグ・ポラックは、「よほど運に恵まれないと、2強を破って表彰台に上がるのは難しい」とコメントしている。その認識は間違っていないだろう。しかしここオーストリアはパワーサーキットで、昨年はジャックが4位入賞を果たしたゲンのいいコースでもある。さらにトラクション・コントロールは低速サーキットだけでなく、高速コーナーでのオーバー挙動を修正する働きをすることもわかった。これもA1リンクでの、BARのプラス材料となるだろう。
 もちろん今挙げたプラス要素は、Jordan Hondaにも当てはまる。予選の速さがなかなかレースで発揮できないジョーダンだが、その原因も突き止めつつある。今のところ両チームとも、ハイテクデバイス導入が、プラスに働いていると言えるだろう。

 タイトル争いに目を転じると、マクラーレンのミカ・ハッキネンは、絶対にここは落とせない。今シーズン依然として未勝利。どころか、表彰台にも上がれていない。昨年ポール・トゥ・フィニッシュを飾ったここで、なんとしても反撃ののろしを上げたいところだ。今までのところ、クルサードがハッキネンをしのぐ活躍を見せているが、このGPでの結果如何では、二人のドライバーのチーム内の関係も、微妙なものになる恐れがある。
 トップを走るフェラーリにしても、開幕当時の圧倒的な速さが一段落した感じだ。さらにここ1、2戦トラブルにも悩まされており、このまま独走ということにはならないだろう。


「A1リンク・サーキットのみどころ」
  このサーキットの特徴は、コースの高低差が激しいこと。最大斜度は12%にも及び、エンジンパワーに優るマシンが当然有利となる。さらにここはエンジン全開率が65%強と、モンツァ以上。エンジンを全開にしている時間が、全17戦中もっとも長いサーキットでもある。したがってパワーが必要なだけでなく、信頼性も重要な要素となる。もともとアンダーステアの強いサーキットであり、それをいかに消すかがタイムアップのポイントとなるだろう。
 オーストリアはヨッヘン・リント、ニキ・ラウダという二人の世界チャンピオンを輩出しており、モータースポーツ大国といえる。ただし今年は、同国出身のドライバーはいない。


・開催地;オーストリア・A1リンクサーキット
・全長;4,326km
・周回数;71周
・2000年ポールポジション;ミカ・ハッキネン(マクラーレン)1分10秒410
・2000年優勝;ミカ・ハッキネン(マクラーレン)