OCEAN MASTER STORY

世界のプロが選んだHonda

世界で活躍するHonda船外機の
知られざるストーリー

2017.12.25
名匠一族の新たなる挑戦 16

ため息が漏れる美しい艇体は、
走行ポテンシャルの高さを予感させる

それまでキールを天井に向けて建造が続けられてきたRIGBYの船体が、ひっくり返されたのは2017年11月24日のことだった。
天井から下がる滑車に支えられ、2時間かけてゆっくりと船体が返されていった。それは佐野造船所にとっては慣れた作業だったが慎重に行われた。
「表(オモテ)を少し起こそう」
「艫だ、今度は艫を少し」
龍太郎社長、稔氏、それに龍也氏の3人の張りのある声が造船所に響き続け、船体二カ所に掛けられた滑車から延びるベルトが少しずつ巻かれていった。
ステム周りを削る。指先で感触を確かめながら鉋を使う。
正体(せいたい)となった船体を見て、あらためて凄いボートが造られているのだと実感した。
チーク材で造りこまれた1層目をホンジュラス・マホガニーが包み、この先組まれるデッキ、コックピット、さらにキャビンも、ホンジュラス・マホガニーが主要材として使われるのだから、その贅沢さは筆舌に尽くし難い。
そのマホガニーに関して、面白い話を聴いた。
RIGBYの一部フレームには、同じマホガニーでもアフリカン・マホガニーが使われている。ホンジュラス・マホガニーとアフリカン・マホガニーを比べると、その差は将来的な発色にあるのだそうだ。ホンジュラス・マホガニーは時間が経つにつれて少しずつ艶やかな赤茶色に発色していくのに対し、アフリカン・マホガニーにはそれがない。そのためにアフリカン・マホガニーを外板に使った外国艇の中には、塗装によって色味をホンジュラス・マホガニーに似せ、艶やかさを演出している船もある。遠目に「おっ!」と思っても、近くで見ると塗装がバレバレなのだそうだ。
ボトム(船底)2層目を丁寧にサンディング。
龍也氏はそれを嫌った。
RIGBYの外板はホンジュラス・マホガニーにこだわり、人目につかない部位にだけアフリカン・マホガニーを使った。もっともアフリカン・マホガニーも驚くほど高価な木材なのだが・・・。
このひっくり返し作業を前に、いくつかの作業が行われた。
ひとつが、フィンの取り付けだ。チークから削り出されたフィンが、ステムエンドからキールに沿って取り付けられた。合わせてステムとキールがシャープに削られていった。
さらにもう一つの作業が、ボトム(船底)のサンディング。その後にエポキシ系の下塗り剤とウレタン系下塗り剤を塗布された。特にエポキシ系の下塗り剤は防腐剤が含まれており、常時接水するボトムには塗布した方が良いとされる。
キールにフィンを取り付ける。この作業は11月9日に行われた。
これが削り出されたフィン。
取材協力:(有)佐野造船所(http://www.sano-shipyard.co.jp/index2.htm)
文・写真:大野晴一郎
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