OCEAN MASTER STORY

世界のプロが選んだHonda

世界で活躍するHonda船外機の
知られざるストーリー

2017.08.28
名匠一族の新たなる挑戦 13

船底1層目が完成。
見えてきた船底形状。

左舷側のボトム1層目が完成。
チャインの1層目の取り付けが終わった後、建造工程はボトム1層目の張り付けに入った。ボトムというのは、チャインからキールまでの船底部のことで、ここもまたダブルプランキング(2層構造)で造られていく。
使われるのはチーク材だ。
1層目は4分厚(約1.2cm)。そして2層目は6分厚(約1.8cm)となり、2層を張り終えた船側(せんそく)と同じく1寸(約3cm)の厚さが確保される。
工程的にはボトムの1層目を張り終えた後、チャインの2層目を張り、その次にボトム2層目が張られていく。今回はボトム1層目の作業をご紹介する。
縦通材とフレームにより、RIGBYの船底形状は明らかになってはいるが、面となる板材を張っていくことで、よりその形状がわかりやすく伝わってくる。その意味でボトム1層目の張り付け作業は、非常に楽しみな工程だった。
目の錯覚もあった。縦通材だけで形作られたボトムを見る限り、その形状はコンベックスV船型に見えた。コンベックスVというのはキールとチャインの内側を結んだボトムの断面が外側に膨れている形状である。しかし板面で明らかになった船型は、船首付近からミジップ(船体中央付近)手前までが、コンベックスとは真逆に、断面が内側に膨らむコーンケイプV船型となっていた。その形状はミジップから後方にかけて、フラットな滑走面へと変化していく。
龍也氏は木を相手に、難しいボトム形状を求めた。
一般的に、コーンケイプV船型のボートは波に強い。滑走中、波に突っ込んでもその衝撃は軟らかく、乗員の身体に優しい船型である。
サノブランドの船は波に強いと定評がある。その理由の一端を見た気がした。
ちなみにデッドライズ(船底勾配)は18度である。
チーク材を幅7寸(約21cm)×6.6尺(約2m)に伐り出すことから作業ははじまった。
この写真は、端を斜めに落としたあと、木口に電動鉋(かんな)をかけているところ。
作業はチーク材を幅7寸(約21cm)×6.6尺(約2m)に伐り出すことからはじまった。
張り方としては、ミジップ付近から斜めに張っていく。矢羽貼りだ。ちょうど船側(せんそく)1層目のチークが斜め張りされたのと同じだ(第9話参照)。
チーク材のエッジを斜めに鋸で落とし、そのエッジをキールに合わせて斜め後ろに流すように張っていく。フレアが大きい船なのでバウ付近の船底材の曲げ率は大きくなるが、ミジップから後方はフラットなハル形状を持たされているので、龍也氏いわく「張り付けは楽」とのことだ。
この作業に入る直前、龍也氏から「アカ通し」(アカ=船垢フナアカ=船内にたまった水。ビルジ。船淦とも)を見せてもらった。
フレームとキールとの接合部に、斜めに小さな伐り込みを入れたのがアカ通しである。
船底に溜まったアカを、ビルジポンプの吸込み口のあるトランサム付近へ流すための機能的な仕様である。言うまでもないが船底材を張り終えると、アカ通しは外からは見ることができなくなる。
8月21日、両舷の1層目の張り付け作業が終わった。
次はチャイン2層目の作業に入る。
ミジップ(船体中央部)付近からチークを張っていく。接合にはエポキシ樹脂系接着剤と木ねじが使われる。
ミジップからトランサム方向へと張られていき、船首のステム付近は最後に張られる。
鉋(かんな)で微調整を繰り返しながら、船底材を張っていく。
左舷1層目を張り終わった。キールとチャインを結ぶ断面が、内側に膨れたコーンケイプV船型であることがわかる。ところがフレームと縦通材がむき出しの右舷側を見ると、コーンケイプとは真逆に、断面が外側に膨れたコンベックスV船型に見えてしまう。目の錯覚だ。
こちらは8月21日に撮影。両舷とも船底1層目の張り付けが終わった。
トランサム方向から見る。
キールと接合するフレームに入ったV字の切り込みがアカ通し。この中をビルジが流れる。もちろん左右両舷に造りこまれる。
取材協力:(有)佐野造船所(http://www.sano-shipyard.co.jp/index2.htm)
文・写真:大野晴一郎
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