OCEAN MASTER STORY

世界のプロが選んだHonda

世界で活躍するHonda船外機の
知られざるストーリー

2017.07.21
名匠一族の新たなる挑戦 11

ホンジュラス・マホガニーをサンディング。
下塗り剤に浮かび上がった美しい木目。

下塗りを終えたRIGBY。浮き上がった木目の美しさに、ため息が出る。
船側(チャインとシアーラインの間の船体)2層目のホンジュラス・マホガニーを張り終えたところで行う作業がサンディングだ。ベルトサンダーに80番という粗目のサンディングペーパーが装着され、最初のサンディングが行われる。
具体的にRIGBYの工程順を説明すると、左舷側の船側2層目を張り終えた段階で、右舷側の2層目工程に入る前に、左舷側のホンジュラス・マホガニーに対してサンディングが行われる。
6月、左舷側のサンディングが始まった。
龍也氏が手にするベルトサンダーの重さは約5kg。ダンベルのような重みがあり、サンディングは体力勝負だ。
写真、向かって右側は、すでにサンディングが終わっている。
1回目のサンディングに使われるサンディングペーパーは80番。
張り終わったばかりの船側は美しく見えるのだが、実際には部材同士の継ぎ目や入れ木の出っ張りなどの凹凸が目立つ。それを一気に滑らかにしていく。
1回目のサンディング直後に掌で船側を撫でてみると、実に滑らか。少なくても一般人にはそう感じる。ところが佐野造船所の匠たちにとっては、80番のペーパーで削った段階などというのは、あくまでも美艇建造のための序章に過ぎないのだった。
一度目のサンディングが終わり、船側が滑らかになった。このあと、下塗りが行われる。
なぜ片舷が終わった段階でサンディングするのかというと、理由は明快だ。
張り終えた外板2層目の乾燥を防ぎ、さらには汚れから守るためだ。そのためにウレタン系の下塗り剤を塗布するわけだ。
この説明を龍也氏から受けた時、さらに今後のサンディングと塗装の予定にについて教えられ、驚かされた。
1回目のサンディングに合わせて、舳(みよし=ステム)も削られていった。こちらの写真が削り始め。
そしてこの写真のように船側と面一となった。
塗装の回数は実に15回を予定。その間サンディングは5回行う。つまり塗装を3回繰り返したところでサンディングが行われる計算になる。サンディングが繰り返されるごとに、ペーパーの番手を上げられていくのだが、これは鏡面のような艇体の輝きを得るためには避けて通れない工程だ。
塗装とサンディングを繰り返すことで、木そのものに塗装剤が良く馴染んで染み込み、耐久性にもつながっていくのだそうだ。
1回目のサンディングが終わった段階で、下塗り剤がひと塗りされたところで、思わず感嘆の声を上げてしまった。それまで薄っすらと見えていたホンジュラス・マホガニーの柾目が、見事に浮き上がったからだ。何層もの塗装を繰り返して仕上げられるホンジュラス・マホガニー艇の美しさには、まだまだ遠いのだが、それでも突如現れた赤茶色の華やかな木目にため息が漏れた。
下塗り剤をひと塗りしたところで、見事に木目が浮き上がった。
ローラーと刷毛で、下塗り剤を塗布していく。
下塗りだけで充分美しいが、この後、塗装とサンディングが繰り返され、さらなる美しさが追及される。
一方、着々と建造が進む江戸前和船は、船底材にあたる敷(しき)と艫敷(とも じき)にカジキが組まれた。カジキというのは船底から斜めに立ち上がる船側の 一部で、敷とは銅釘によって密着させられている。カジキから敷へ「くの字」に 曲げられた格好で銅釘が打ち込まれているのだが、そこには和船建造の匠の技が 活かされている。
さらに船体の強度を得るための「船ばり」も設けられた。
「船ばりは、現代風にいえばバルクヘッド」そう佐野龍太郎社長から教えられた。
舳(みよし=水押)から船側の一部であるカジキが戸立(船尾)方向へ続く。
付けられたばかりのカジキを戸立方向から見る。船底材の敷や艫敷(ともじき)に 対して、この角度で銅釘を使って密着させられている。匠の技だ。
船体横方向に入れられた「船ばり」を見る。「現代風に言えばバルクヘッド」と佐野龍太郎社長に教えられた。カジキの横で作業する佐野社長。
船ばりに手を加える佐野社長。
取材協力:(有)佐野造船所(http://www.sano-shipyard.co.jp/index2.htm)
文・写真:大野晴一郎