OCEAN MASTER STORY

世界のプロが
選んだHonda

世界で活躍するHonda船外機の
知られざるストーリー

2017.10.10

A Home of Norwegian Salmon
Honda船外機が活躍する
北欧のサーモン養殖場

ノルウェー北部の街・ハーシュタに、クレイヴァ養殖場を訪ねる


ノルウェー取材班:
三井貴行(本田技研工業株式会社)・FINN HOGE(AS KELLOX)・LINDA KARLSEN(AS KELLOX)・大野晴一郎(Foresta)
ハーシュタ(HARSTD)というノルウェー北部の街を訪ねた。
4月にこのOCEAN MASTER STORYで「ノルウェーの大渦巻」で知られるサルトストラウメンをご紹介したが、ハーシュタはそのサルトストラウメンよりもさらに北に位置する街で、ノルウェーの首都のオスロから、空路で1時間40分ほどかかる。
北緯66度33分以北の地域は北極圏と呼ばれるが、ハーシュタも北極圏内に位置し、真夏の白夜※1と真冬の極夜※2を経験できる場所である。
※1 夏至前後に太陽が沈まない現象のこと。
※2 白夜の逆で、冬至前後に太陽が沈んだ状態が続く。
ハーシュタ(HARSTAD)は北極圏に位置する街だ。空路でオスロから1時間40分ほどで到着する。
ハーシュタの街を訪ねた目的は、世界中にファンが多いノルウェーサーモンの養殖場で、Honda船外機が活躍していると聴いたからだ。
訪ねる養殖場はクレイヴァ養殖場といって、設立は1986年。ノルウェーにおけるサーモン養殖の草分け的な存在だ。
クレイヴァ養殖場が管理するイケスは、船速15ノット程度の送迎船(ワークボート)で、ハーシュタの港から1時間ほど走った島沿いに点在する。
イケスの背後の絶壁を眺めれば、それはまさしくフィヨルド地形の一端なのだが、さらにそのフィヨルドらしさを感じたのが、送迎船に付くGPSプロッタを覗き込んだ時だ。
表示されている海底地形図(等深線)によれば、岸ベタなのに水深が100m以上ある。さらにその海は250mほどの深場へと続き、崖沿いの海底地形が、えぐられて造られたことが容易にイメージできる。フィヨルド形成による深場を利用して行われているのが、クレイヴァ社によるサーモン養殖の特徴といえるだろう。
クレイヴァ養殖場には船で向かう。養殖場所有のワークボート(手前から2艇目)が、ハーシュタの港に取材チームを迎えに来てくれた。
ハーシュタの港ではノルウェーらしい船を見ることができる。ステムからシアーラインにかけて続く独特のデザインは、北大西洋航海に使われたクナールや、ロングシップと呼ばれるスカンディナビア発祥のヴァインキング船を彷彿させる。船好きは見学しているだけで楽しい。
送迎船のGPSプロッタがイケスの位置を表示した。画像編集で後付けした矢印の先端付近には×印が重なって表示されている。×は12のイケスが定置されている箇所だ。岸沿いだが、その水深は100mから250mほどある事が画面から読み取れる。
ハーシュタ沖の深場に並ぶイケスの数は12。
それぞれに13万匹ほどのサーモンが養殖されているというから、総数は単純計算で約156万匹。凄い数だ。
聴いた話では、1匹のサーモンが育つまでには18カ月がかかるそうで、育ったものから順次水揚げ。
もっとも気遣うことは何か、管理スタッフに訊いてみた。
すると「品質管理」と即答。そのために必要なことは「充分な栄養を与えること」なのだそうだ。ただし餌のやり過ぎは逆効果。そのためにコンピュータによる管理を徹底している。
12のイケスのど真ん中に、船体が青白2トーンカラーに塗り分けられた「マザーシップ」と呼ばれる管理母船が碇泊しているのだが、そのブリッジに餌やりの管理システムが組み込まれたコンピュータシステムが置かれ、常時イケスをモニターしている。水中カメラでイケス内を撮影した映像も送られてくるから凄い。
イケスの背後は切り立った崖地だった。崖は水中の深場に向かってストンと落ち込んでいる。まさにフィヨルド地形。点在するイケスには、それぞれに約13万匹のサーモンが育てられている。
白い船はマザーシップ。ブリッジにコンピュータを設置し、イケスを管理。手前の赤黒船体のRIB(Rigid-hulled inflatable boat=RIB)風の作業艇は、150馬力のHonda船外機をマウントする。重量物を押したり引いたり大活躍。この写真はマザーシップとイケスをつなぐホースの束をリバースで引っ張っているところ。
マザーシップのブリッジからイケスを見る。
マザーシップのデッキには、餌の貯蔵庫につながる大型ハッチが見られる。
Honda船外機、BF150をマウント作業艇は、船側(せんそく)をチューブに囲われ、一見RIB風だ(Rigid-hulled inflatable boat=RIB)。そのチューブからは、ガンネルに沿って30センチほどのブルワークが立ち上がり、ぐるりとデッキを囲っている。作業性を重視したあまり、殺風景になってしまったデッキを波から守っているのだ。この手の体裁のボートは様々な養殖場で目にしてきた。有名なところでは、イギリスのボートメーカー、フュージョンマリン社が造るホーネット490というのがあり、ずばりFish Farm Tender Craft(フィッシュ・ファーム・テンダー・クラフト)と呼ばれている。
船底はフラットとは言わないまでもV角は非常に浅く、キールと船底に付けられた数本のストレイキ(リフティング・ストレイキ)で保針性を補っている。
Honda船外機、ノルウエーのサーモン養殖場で活躍(5分11秒)。
写真・文:大野晴一郎
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