「ふしぎ」を見に行こう

「ふしぎ」な生き物

君は見やぶることができるかな?
だます虫のナゾ

植物やほかの虫になりきるふしぎな虫たち。
そのスゴい変身技を見てみよう!
山などのあぶない場所に虫をさがしに行くときは、大人といっしょに行こう。
虫を採集・飼育するときは、きずつけないように大切にあつかおう。

探検たんけんメンバー

  • 隊員はると
    ふしぎ探検隊たんけんたいが行くよ!
    隊員りりか
  • 亀澤 洋さん
    この人に聞いたよ
    虫にくわしい
    亀澤 洋かめざわ ひろむさん

「目立たないようにする虫」
と「目立とうとする虫」

  • 亀澤さんは虫が大好きなの?
  • 小さいころから大好きで、小学生のころに南米のペルーに住んでいたんだけど、そこで色とりどりの虫たちに出会って、さらに好きになっちゃったんだ。でも、この年になって、まだ見つけられない虫もいるんだよ。
  • 虫はちっちゃいからね。
  • 種類もとても多いからね。それに、いろいろな形に姿すがたを変えて目立たないようにしている虫も多いんだ。
  • 姿すがたを変える?
  • 擬態ぎたいといって、植物やほかの虫などになりすましている虫がいるんだ。虫はエサを食べるために外に姿すがたをさらす生活をしないといけない。でも小さくて弱いから他の生き物にねらわれやすい。そのため、いろいろな姿すがたになりすまして、他の生き物に食べられないようにしていると考えられているんだ。
  • たとえばどんなものになりすましているの?
  • では、ここでクイズ! 次の写真の中に虫がいるから見つけてごらん。
【クイズ】
虫はどこにいる?
第1問
第2問
第3問
第4問

正解!

黄色の線で囲まれているのが虫だよ!

第1問

ショウリョウバッタ [バッタ科]

第2問

イボバッタ [バッタ科]

第3問

アカエグリバ [ヤガ科]

第4問

シャクガの仲間(幼虫ようちゅう
[シャクガ科]

  • ショウリョウバッタやアカエグリバは葉っぱの葉脈までそっくりだね! イボバッタは地面にとけこみすぎ! シャクガは木の枝にしか見えないよ〜!
  • これらの虫は、体の色や形をまわりの環境かんきょうなどに似せて目立たなくしている(隠蔽的擬態いんぺいてきぎたいんだ。
  • カモフラージュしているんだね!
  • では次のクイズ! これは何の虫かわかるかな?
【クイズ】
これは何の虫?
  • ハチとてんとう虫だよね?
  • そう思うよね? でも、全然ちがう虫なんだよ。
  • えぇ?!
  • Aは「トラフカミキリ」という虫。スズメバチに似ているよね。ハチは集団でおそってくることもあるから、鳥もコワくて食べようとはしないんだ。てんとう虫は一見ねらわれやすそうだけど、実は、鳥が食べたらいてしまうほど苦味や毒があったりする。Bは「キボシマルウンカ」という、てんとう虫になりすました別の虫なんだよ。
  • 鳥がキライなものになりすまして、鳥に食べられないようにしているの?
  • おそらくそういうこと。敵を警戒けいかいさせるための擬態ぎたいなんだ。キケンな生き物の目立つ姿すがたをマネることで(標識的擬態ひょうしきてきぎたい)、「食べたらマズいよ!」「近寄るとキケンだよ!」と敵にアピールしていると考えられている。
  • 目立たないようにする虫もいれば、あえて目立つことで食べられないようにする虫もいるんだね。虫っておもしろ〜い!
  • 他にも化学擬態ぎたいという方法で相手をだます虫や、いろいろとマニアックな擬態ぎたいをする虫もいるんだよ。
  • マニアックな擬態ぎたいをする虫? もっと知りたい!!

【まとめ】虫の擬態ぎたいのパターン

  • 1.目立たないようにする虫
    隠蔽的擬態いんぺいてきぎたい
  • 2.目立とうとする虫
    標識的擬態ひょうしきてきぎたい
  • 3.化学物質を使ってだます虫
    (化学擬態ぎたい

なぜそんなことに?!
マニアックな擬態ぎたいをする虫

虫の擬態ぎたいおくが深く、
その可能性はとどまることを知らない。
中にはこんなマニアックな
芸風の虫もいるらしい……!

CASE1.ラクして生きるために擬態ぎたいする虫

  • アリは見た目ではなく、触角しょっかくを使って化学物質を感じることで、相手を仲間かどうか判断している。それを利用したのが「アリツカコオロギ」という虫。
  • コオロギなの?
  • そう。見た目は全然ちがうのに、アリと同じ化学物質をまとうことで、アリのふりをしているんだ。
  • 何のために?
  • アリの仲間になれば、働かなくてもエサをもらえるから。
  • ずる〜い!
  • ね(笑)。これが化学擬態ぎたいとよばれる擬態ぎたい。アリは意外と凶暴きょうぼうな生き物だから、アリといっしょにいれば他の虫にねらわれにくいというメリットもあるんだ。
  • ずるいけどよく考えたね! それも生き方のひとつなのかも……。

CASE2.暗やみで擬態ぎたいする虫

  • 擬態ぎたいはおもに、目で獲物えものを見つける敵(鳥など)にねらわれないようにするためのもの。だから、地中で生活する虫や夜に活動する虫など、暗やみの世界にいる虫は基本的に擬態ぎたいする必要がない。ところが暗やみの世界でも擬態ぎたいする、めずらしい虫が南米で見つかっている。それが「ホタルに擬態ぎたいする別の種類のホタル」(笑)。
  • どういうこと?!
  • ホタルはおしりを光らせることでオス・メス同士で交信して引き寄せ合っているんだけれど、その別種のホタルは、メスのホタルが出すような光を出して、つられて寄ってきたオスのホタルを食べちゃうんだ。
  • 同じホタルなのにだまして食べちゃうなんて……コワい!
  • ちなみに同じ南米で数年前に、発光するゴキブリが見つかったんだ。「ヒカリコメツキ」という、食べるとまずい光るコメツキムシがいるんだけど、どうもそれに似せているらしいんだ。
  • 「ヒカリコメツキ」はおいしくないってことが、鳥の間では有名なのかな? おもしろいね〜。

CASE3.行動まで擬態ぎたいする虫

  • 姿すがたかたちだけにとどまらず、行動まで似せている虫もいるんだ。たとえば「ツマグロヒョウモン」というチョウは本来はバタバタと飛ぶはずなんだけど、毒のある「カバマダラ」というチョウに擬態ぎたいしている「ツマグロヒョウモン」はフワフワと飛ぶ。「カバマダラ」に姿すがただけでなく飛び方も似せているんだ。
  • そこまでなりきろうとするなんて、いじらしいね……。

CASE4.自分に擬態ぎたいする虫

  • 「シジミチョウ」というチョウは、おしりを自分の頭のように見せるという、変な擬態ぎたいをするんだ。
  • え?! 自分に擬態ぎたい?! 何のために?
  • 鳥がチョウを食べるとき、確実にしとめるために頭から攻撃こうげきするんだ。鳥が頭とまちがえておしりをつついている間ににげちゃえ!ということなんだろうね。
  • トラフシジミ [シジミチョウ科]

  • へ〜! おもしろい!

CASE5.植物の成長をそっくりマネる虫

  • 「カギシロスジアオシャク」はすごいよ。クヌギやコナラなどの植物に擬態ぎたいするんだけど、小さな冬芽のころから姿すがたを似せて、芽がふくらんでいけばその形に似せ、芽がふいて少し緑がかったりピンク色がかったりすれば、その色になり、新葉が出てきたらそれに似た形になり……というように、植物の成長に合わせて、同じような形・色合いに姿すがたを変えていくんだ。よくできているよね(笑)。
  • もう、そこまでするならその植物に生まれ変わったらいいのに!(笑)

CASE6.ウンチやゴミに擬態ぎたいする虫

  • 鳥のフンって見たことある?
  • うん。白っぽいものに黒いものが混ざったような感じだよね。
  • まさにそれに似た虫が結構いるんだよ。たとえばこれは「ナミアゲハ」の幼虫ようちゅう
  • ナミアゲハ(幼虫ようちゅう) [アゲハチョウ科]

  • わ! 鳥のウンチにそっくり! そっか。鳥も自分のウンチは食べたくないもんね……。
  • その他に、擬態ぎたいと言えるのかは微妙びみょうだけれど、自分の姿すがたをゴミでかくしてしまう虫もいる。代表的なのが「ミノムシ」。木片もくへんなどを集めて植物のゴミっぽく見えるミノをつくり、その中にかくれている。
  • ミノムシの仲間 [ミノガ科]

  • ミノムシは公園で見たことある!
  • ミノムシはおもしろいよ。ミノから出したミノムシに、家の中でビーズや折り紙などをあたえると、それでミノをつくるんだよ。
  • え、カラフルで目立っちゃうよ。かくれる意味ないじゃん……。
  • 虫はあまり深く考えていないのかもしれないね(笑)。そもそも虫の擬態ぎたいは、人間が勝手にそう思っているだけかもしれないという問題もあるんだ。

知りたい!聞きたい!
擬態ぎたいする虫のナゾ

知れば知るほどナゾが深まる虫の擬態ぎたい
まだ解明されていないことも多い、
神秘しんぴの世界らしい……。

虫は何のために擬態ぎたいしているの?

擬態ぎたいの目的は「1:敵にねらわれないようにするため」「2:獲物えものをつかまえるため」の2つあるけれど、1の目的がほとんど。虫の天敵である鳥は視覚しかくで獲物を見つけているから、目に見える姿すがたかたちを変えることで、鳥にねらわれないようにしていると考えられている。

虫は「これに似せよう」と思ってその姿すがたに進化したのかな?
それってスゴい能力じゃない? どうしてそんなことができるの?

虫は「これに似せよう」とか「似てるな〜」と思っているわけではないと思う(笑)。進化の過程で淘汰とうたされて、現在の姿すがたをした虫が生き残ったということ。でも、だんだんと似てきたのか、突然変異とつぜんへんいしてそっくりになったのかはむずかしいところ。だって、似せている途中とちゅう姿すがたはそんなに似ていないわけだから(笑)、食べられて絶滅ぜつめつしてしまうよね。
最近の論文ろんぶんによると、葉っぱにそっくりなチョウが、遺伝子いでんしのわずかな変異へんいで現在の姿すがたに進化したことがわかった。つまり、短期間でそっくりな姿すがたに進化した可能性もあるということ。それはそれで不思議な話。虫の世界にはわかっていないことがまだ多いんだ。

擬態ぎたいする虫はいつ、どこに行けば見つかるの?

虫にたくさん出会うなら、夏に緑が多い野山に出かけるのが一番。緑の多い公園や家の庭で出会えることもあるよ。虫を見つけるのは最初はむずかしいけれど、とにかくたくさん見つけることが上達の近道。慣れてくると、木の枝や幹の表面の出っ張りに違和感いわかんをおぼえて、よく見たら虫だった、ということも増えていくはず。

【ミニ図鑑ずかん擬態ぎたいする虫

日本全国の緑の多い場所で生息しているよ。
外見は個体によってバラツキがあることも。

  • ショウリョウバッタ [ バッタ科 ]

    原っぱにいる。羽は草のように見え、とがった頭は葉っぱの先端せんたんのように見える。全体褐色の個体もいる。体長4-8cm程度

  • イボバッタ [ バッタ科 ]

    地面の土がかわいて露出ろしゅつしたところによくいる。体の表面が、土の色や質感にそっくり。体長3cm程度

  • アカエグリバ   [ ヤガ科 ]

    れた葉っぱに似たガの仲間は、昼間は枝に引っかかったれ葉に静止していることも多いので、よけいにまぎらわしい。開長5cm程度

  • シャクガの仲間(幼虫ようちゅう) [ シャクガ科 ]

    木の枝にそっくりだけど、ちゃんと動くよ。葉っぱを食べて生きている。枝に似た虫では他には「ナナフシ」も有名。体長は最大で5cm程度

  • トラフカミキリ [ カミキリムシ科 ]

    くわの木がある田園地帯などにいる。攻撃こうげき力が高いスズメハチになりすますことで、鳥を遠ざけている考えられる。体長2.5cm程度

  • キボシマルウンカ [ マルウンカ科 ]

    てんとう虫は、鳥が食べたらいてしまうほどの苦味や毒があったりする。そのためか、てんとう虫になりすます虫は多い。体長0.5cm程度

  • アリツカコオロギの仲間 [ アリツカコオロギ科 ]

    アリと同じ化学物質を出すことでアリになりすまし、アリからエサをもらって生きているズルがしこい虫。体長0.4cm程度

  • ツマグロヒョウモン [ タテハチョウ科 ]

    毒のある「カバマダラ」という別のチョウに姿すがたも飛び方も似せて、鳥に食べられないようにしていると考えられる。開長7cm程度

  • トラフシジミ [ シジミチョウ科 ]

    自分に擬態ぎたいするめずらしい虫。おしりを自分の頭のように見せることで、頭をねらう鳥の攻撃こうげきから身を守っていると考えられる。開長3cm程度

  • カギシロスジアオシャク [ シャクガ科 ]

    クヌギなどの植物が冬芽〜芽ぶき〜新葉と成長するのに合わせて、それにそっくりな姿すがたに形を変えて成長していく。体長2cm程度

  • ナミアゲハ(幼虫ようちゅう) [ アゲハチョウ科 ]

    チョウのさなぎや幼虫ようちゅうは食べられやすいので、擬態ぎたいがよく見られる。これは鳥のフンに似せていると考えられる。体長2.5cm程度

  • ミノムシの仲間   [ ミノガ科 ]

    れ葉や落ち葉などのゴミを集めてミノをつくり、中にかくれている。家の庭などでもよく見られる。体長は最大で3cm程度

亀澤さんからのメッセージ
  • 虫の種類はすごく多くて、新種が見つかることもまだまだ多い。大人よりも目線が低い子どもたちのほうが、虫を見つけるのは得意なんだよ。たくさん野山へ行ってさがすことで、虫を見つける力をやしなおう。これをきっかけに、虫の擬態ぎたいの深〜い世界にはまってみるとおもしろいかもしれないよ!
まとめ
強い虫になりきったり、自分をゴミに見せたり。虫それぞれの考え方があっておもしろい! いったいどんなことを思って、そんな風に進化したんだろう……なんて考えると夜もねむれなそう! わたしが虫だったら、どんな擬態ぎたいをしたいかなぁ。

Profile

亀澤 洋かめざわ ひろむ

株式会社環境指標生物 環境調査員

幼いころから昆虫が好きで、小学生時代に過ごした南米のペルーで多くの個性的な昆虫に出会ったことで、関心がさらに深まる。出版社や国立博物館での勤務を経て、現在は昆虫専門の環境調査員として、環境保護を目的とした昆虫の生態調査や施策提案を行っている。日本甲虫学会所属。
株式会社環境指標生物
http://www.bioindicator.co.jp/