ゴルフ理論

スコアアップにつながるゴルフ理論原因はコレ!誰も言わなかった
「手打ち」の正体

2017.01.12

「大叩き」「池ポチャ」「OB」など、ゴルファーが嫌いな言葉にはいろいろありますが、「手打ち」という言葉もかなり耳障りなのではないかと思います。通常「手打ち」は悪い意味として使われ、ゴルフスイングにおいて「やってはいけない動作」という認識で一致しています。

しかしながら、手でクラブを持っている以上、手を使うことは明白であり、どれが手打ちでどれが手打ちではないという線引きが難しいところです。人によって手の感覚も違うので、同じ動作でも手を使っていると感じる人がいれば、使っていないと感じる人もいます。そのため「これが手打ち」だと定義するのが難しい部分はありますが、手打ちを続けているといつまで経っても上達できないのは間違いありません。これを読んでくださっているみなさんがそんなことにならないよう、ここではあえて定義してみたいと思います。

結論から言ってしまうと、よく手とクラブヘッドを同調させるように動かす人がいますが、それが手打ちです。バックスイングで手が肩の高さまで上がったときに、ヘッドが右肩の延長線上にあり、そのポジションから手とヘッドを等速に動かしてボールをとらえ、フォロースルーでも手とクラブヘッドは同調して動く…本人は「手打ちにならないように」という意識からノーコック動作を行っているのでしょうが、まったくの誤解。手首を固めてしまうとクラブヘッドは加速することができませんので、この動作は手打ちに他なりません。また切り返しの時点では手首がコッキングされていても、ダウンスイングの直後でほどけてしまったのでは同じことです。

クラブヘッドが加速するのは、インパクト直前でコッキングした手首の角度がリリースされるからです。それにはダウンスイングで手首の角度が保たれたまま下りてくる必要がありますが、もし手首の角度が最初からなかったらリリースしようがありませんので、クラブヘッドは加速できないのです。

ということは、手の移動距離が長いこと、そしてダウンスイングで手とクラブヘッドの速度差がないことが手打ちの条件といっていいと思います。プロのスイングはバックスイングがコンパクトですが、これは手の移動距離が短いからです。ベン・ホーガンのアイアンショットなどは、切り返しの手の位置が肩の高さか、場合によっては肩よりも低い位置にあります。それでもダウンスイングでは大きな手首のタメができるので、手をさほど動かさなくてもクラブヘッドは加速してボールを飛ばすことができるのです。一方手打ちのアマチュアは「手のスピード=クラブヘッドのスピード」という感覚があるため、手を大きく振り上げ、ダウンスイングでは再び手を激しく振り下ろしてボールを打ちます。しかしタメがないのでクラブヘッドは加速せず、なおかつボールに対して鋭角にアタックできないのでダフリやすくなります。飛ばないのでさらに手を大きく振り上げたり、手を加速することで飛ばそうとしますが、これでは飛ばないばかりか、まともにミートできないので、スイングやスコアがどんどん崩れていくという悪循環に陥るのです。アプローチでも手を激しく動かして打つアマチュアがいますが、やはりミスが多くなります。手の動きはなるべく小さく、クラブヘッドは大きく動かして打つのがゴルフの基本。これはドライバーショットであろうがショートゲームであろうが変わりません。

手打ちのインパクトゾーン

リリース動作がないかすでに完了してしまっているので、クラブのシャフトが水平まで下りて来てからボールを打ち抜くまでの手の移動距離が長い。

正しいインパクトゾーン

コッキングのリリースが適正に行われるので、ハーフウェーダウンからボールを打ち抜くまでの手の移動範囲が短い。

「手打ち」の対義語として「ボディターン」があり、この言葉はよいイメージでとらえられていますが、身体のターンと手を同調させるという、多くのゴルファーが「ボディターン」と認識している動きを行ったからといって、「手打ちではない」とは言い切れません。正しいコッキングとそのリリースが行われなければ、そのスイングは手打ちなのです。ただしコッキングとリリースが行われても、身体の動きがなかったり、手や腕が身体の動きと同調していない場合にはボールは飛びませんし、これも手打ちと呼んでいいでしょう。

絵と文
Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

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