ゴルフ理論

スコアアップにつながるゴルフ理論「パット・イズ・マネー」は過去の話です

2014.11.27

昔から「ドライバー・イズ・ショウ、パット・イズ・マネー」と言われてきましたが、どうやら最近はそうでもない、というのが今回の話です。

コロンビア大学ビジネススクールのマーク・ブローディ教授がPGAツアーのショットデータを詳細に分析したところ、選手が放つ1打の価値を評価する指標を見つけました。それが「稼いだ打数」という考え方です。

たとえば、ある選手が平均ストローク4.9打のパー5ホールでティショットを放ち、残り200ヤードのフェアウェイまでボールを運んだとします。仮に、ピンまで200ヤードのフェアウェイからホールアウトするまでのツアーの平均打数が2.8打だったとすると、その1打は4.9から2.8を引いた2.1打ぶんの価値があるということになり、2.1打から1打を引いた1.1打を「稼いだ」ことになるのです。

もしティショットが曲がって、残り280ヤードのラフに行ってしまった場合はどうでしょう。残り280ヤードのラフからの平均打数が4打だとすると、その1打の価値は4.9-4=0.9打となります。1打費やしたにもかかわらず、0.9打の意味しかなかったわけですから、この1打では0.9-1=-0.1打、つまり0.1打「損した」ことになります。

パッティングも同じように1打の価値が評価できます。5メートルのパットの平均打数が1.9打だとしましょう。そのパットが決まれば1打の価値は1.9打で、0.9打稼いだことになります。沈めることができず、平均打数が0.9打の残り1メートルに寄せた場合1打の価値は1.9-0.9=1打。稼ぎもしなかったし、損もしなかったということですね。

選手A,Bがパーをとるために
最も貢献したショットは?

選手A,Bがパーをとるために最も貢献したショットは?

「稼いだ打数」でスコアを見ていくと、どのショットがスコアに貢献したかがわかります。
たとえば、平均ストローク4打のパー4でプレイしたとして、ティショットが300ヤードで残り180ヤードのフェアウェイ(そこからの平均打数2.6打)、第2打がピンまで30ヤードのラフ(そこからの平均打数2.2)、アプローチを50センチ(そこからの平均打数1)に寄せてパーをとったとします。この場合ティショットの価値は4-2.6=1.4打で稼いだ打数は+0.4打(1.4-1)。第2打の価値は2.6-2.2=0.4打で稼いだ打数は-0.6打(0.4-1)、アプローチの価値は2.2-1=1.2打で稼いだ打数は0.2打(1.2-1)、パットの価値は1-0=1打で稼いだ打数は0打(1-1)となるわけです。稼いだ打数を合計すると、(0.4打)+(-0.6打)+(0.2打)+(0打)でプラスマイナスゼロになります。

つまりこのホールのスコアである4に最も貢献したのはティショットであり、その次に貢献したのはアプローチである、ということですね。パットは何も貢献がなく、アイアンショットは逆に足を引っ張っているということです。

ブローディ教授がこのようにして全選手の全ショットを分析していった結果導き出した結論は、パッティングのスコアへの貢献度は15%に過ぎない、ということです。プロの1ラウンドのパット数は30打ぐらいなので、スコアに占める割合は大きく、だからこそ重要なのだと従来は考えられてきましたが、30打のうちの多くはタップインするような短いパットであり、誰でも入れることのできるそれらは1打としての価値しかありません。それよりも、ティショットの飛距離を20ヤード伸ばしたり、200ヤードからグリーンに乗せる確率を上げたりしたほうが、その1打の価値は大きいし、スコアを減らすことに貢献するというのがブローディ教授の考えなのです。

「パット・イズ・マネー」を信じてきた人たちとって、俄かには信じられない結論ですが、PGAツアーの選手およびコーチの間ではブローディ教授の考え方が支持されています。これまでパッティンググリーンで長い時間を費やしてきた選手たちは、その時間をドライバーやロングアイアンの練習に割くようになっているのが現実です。

プロに限らず、アマチュアゴルファーもドライバーの飛距離を伸ばしたり、OBをなくしたり、残り150ヤードからグリーンオンできるようにアイアンを練習することがスコアメークに直結します。もちろん短いパットをポロポロ外しているようではダメですが、そうでない場合は、海外のトップ選手と同じように、ロングゲームを磨くことが上達への道なのです。

絵と文
Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

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