ゴルフ理論

スコアアップにつながるゴルフ理論「Stats」にはゴルフの本質が隠されている

2012.12.20

みなさんは「Stats」という言葉をご存知でしょうか? ゴルフの世界で「Stats」といえば「Statistics(統計)」の略で、部門別の成績を指します。わかりやすいところでいえば、獲得賞金は「Stats」ですし、平均ストロークも「Stats」、そのほか、ドライビングディスタンスやパーオン率、平均パット数など、順位がつけられるものは何でも「Stats」です。

私は「Stats」を調べるのが大好きなのですが、なぜかというと、それぞれの選手のプレースタイルや強さの理由がよくわかるからなんですね。

アマチュアの世界ではパーオン率、つまりどれだけグリーンに乗せられるかがスコアメークの鍵となってきますが、プロの世界では違います。パーオン率が抜群に良くても賞金を稼げない選手はたくさんいるからです。それよりもパーブレーク率(バーディかそれより良いスコアを獲得する率)や、平均パット数のほうが獲得賞金額に関係してきますし、平均ストロークが良い選手はやっぱり稼げるわけです。

このように「Stats」の数字を細かく見ていくと、この選手はグリーンを外すことが多いけれど、寄せワンしてスコアを作っているんだな、とか、グリーンには乗るけれどパットが苦手なんだな、ということがわかってくるんです。

アメリカのPGAツアーでは驚くほどデータを細かくとっていて、たとえばグリーンを狙うショットでは50ヤードから275ヤードまで、25ヤード刻みでそれぞれの距離からグリーンに乗った確率、ピンまでどれだけ寄せたか、スコアはどうだったか、のデータがランキングされています。同じ状況でラフの場合のデータもありますから、各選手のショットの得手不得手が手に取るようにわかるわけです。

「Stats」を細かく見ていくと、その選手がどういうプレーをしているかが手に取るようにわかる。

「Stats」を細かく見ていくと、その選手がどういうプレーをしているかが手に取るようにわかる。

グリーン周りのアプローチショットやパッティングにも同様の細かいデータがあります。アプローチは10ヤード刻みでどれだけ寄ったか、いくつで上がったか、がわかりますし、パッティングでは距離別のカップインする確率はもちろん、3パットする率、しない率、1パットで沈めた最長の距離などもランキングされているので、見ていて飽きることがありません。ちなみに、5フィート(約1.5メートル)のパッティングだと、トップの選手は96%カップインさせますし、100位の選手でも80%の確率で沈めてきます。そしてこれが10フィート(約3メートル)になると、トップで68%、100位で41%という数字になります。

面白いのは、この10フィートのランキングのトップが世界ランキング1位のローリー・マキロイと順当なのに対し、2位と3位がほぼ無名の稼げていない選手であることです。4位がフィル・ミケルソン、5位がルーク・ドナルドと再びビッグネームが連なり、そして6位にはまた無名の選手が入ってきます。
(※10フィートのカップイン率のランキングおよび、世界ランキングの順位は、2012年12月 20日現在。)

想像するに、これは10フィートがバーディパットかパーパットかの違いでしょう。世界のトップが3メートルのバーディパットをガンガン入れてビッグスコアを作る一方で、3メートルのパーパットを入れてなんとかパーセーブしている選手は稼げないという仮説が立てられるのです。これを裏付けるには、各選手のショットやアプローチの精度を調べればいいわけで、それらを知ることによって、その選手のプレーを見たことがなくても、どういうタイプの選手なのかがだいたいわかります。

時刻表を眺めて仮想旅行を楽しむ「時刻表マニア」という人たちがいますが、「Stats」には似たような楽しみがあるのではないでしょうか。時間があるときにでもぜひ、各ツアーのホームページの「Stats」欄を覗いてみてください。それらを読み解いていけば、ゴルフというスポーツの本質が見えてきますし、自分のプレーにフィードバックすることもできると思いますよ。


Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

Illustration by Yukio Kitta

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